O社のシェアードサービスの導入は、会社の方針として導入しました。しかし、O社の関係会社業務のシェアードサービス化は親会社であるO社の指示命令によるものではありませんでした。これは、独立採算制にもとづき関係会社には一定の自主自律的な経営が認められていたからです。したがって、シェアードサービスの導入に関しても、シェアードサービスセンターから関係会社への提案に基づいて対応をすることが求められたのです。つまり、関係会社にとってメリットがあるかどうかによってシェアードサービスを導入するか否かがされることになったのです。



関係会社へ導入する過程で、抵抗感が強かったのは経理部門が中心でした。今では考えられないと思いますが、関係会社の社長の中には「他人に裸の姿を見せられない。」と口汚く言った人もいました。反面、比較的シェアードサービスの考え方に賛同していただいたのは新設の会社や、経理体制が十分でなくシェアードサービスの持つ専門性に期待された会社です。


一方、人事部門は、システムの2000年問題がシェアードサービス導入の大きなきっかけになりました。2000年を控えて各社で人事システムのリニュ-アルが課題になっていました。各社で個別にシステム投資をすれば、無駄になることも課題でした。そこで、シェアードサービスセンターが一括的に投資を行い、同時に給与業務を中心にした業務処理まで引き受けることになったのです。システムのシェアが引き金になったといえます。また、関係会社はコスト意識が強く、スタートしてから外部の給与計算のアウトソーサーとの価格比較を求められたこともありました。関係会社は非常に意識の高い顧客だったのです。



繰り返しの話になりますが、シェアードサービスの基本は、社内でサービスメニューを決め、顧客を特定して売上を行い顧客の評価を得てサービスを向上させることにあります。顧客が評価の能力がなければシェアードサービスそのものが機能しないことになるのです。言い換えれば、シェアードサービスが成功するか否かの要因として、社内の顧客がサービスの仕様・価格などを厳しく・建設的に評価できることがあげられると思います。


その観点でみると、関係会社は良い面でも悪い面でもサービスの評価ができる賢い顧客でした。これは、ひとえに関係会社は独立採算制が浸透してコスト意識が強いことが背景にあります。


したがって、シェアードサービスの成功は社内管理の考え方として、顧客側にも独立採算制度が浸透していることが不可欠なのです。シェアードサービスの導入に関して案外見落とされている重要な観点なのです。