前回のコーヒーブレイクでは、近江商人は複式簿記を前提とした優れた経営管理手法を導入していたということを述べました。今日は、近江商人の持つもう一つの優れた能力である「営業力」について述べます。
「てんびんの詩」(1~3巻)というビデオ(CD)があります。昔偶然このビデオを見かけ
感激したので、部下にも参考になるかと思い常会などで見てもらいました。その後、お付き合いしている他社の人にもこの話をしましたら、意外なことに多くの会社でも見られていることを知りました。営業マン教育や新人教育の教材として活用されているようです。このビデオは、大手ではなくローカル会社の制作ですし、宣伝もされていないものなので意外な反応でした。
このビデオ(1巻)の内容は、近江商人の家に生まれた少年が修業に出されて、鍋蓋の売りに行きますが、なかなか売れないというストーリです。しかし、別の人が売った洗い場に浮かんでいる鍋蓋を洗うことで、顧客の気持ちを掴んで売れるという話です。鍋蓋という何の変哲もないものなので、簡単に売れると思いがちですが、それでも顧客の気持ちを掴まないと売れないのです。この例のように近江商人は、商品そのものにまつわるものではないことでも、顧客志向を重視していたのです。また修業という実践教育の場で顧客志向を会得させていたのです。
また近江商人は、滋賀で製造された呉服・麻布など多くの商品を他国に運び、他国での商品を滋賀などに送り京都周辺で販売していました。その中で、北海道では海産物をニシン・棒だら・昆布などに加工し近江や京都周辺で売ったということです。この例のように、現在のように冷凍技術が発展していない中でも、新たに干し物に加工して商売としていたわけです。単に商品の横流しではなく「売れる商品」を開発して販売していたのです。
このように、近江商人には「開発力」があったのです。「開発力」は「ソリューション力」と呼んでもよいと思います。この力が現在の大手商社に引き継がれているのです。
話が戻りますが、「てんびんの詩」の冒頭に映っている駅は、私の実家の近くの近江鉄道の愛知川駅です。私の祖母・母も若いころ近江商人の家で働いていたようです。しかし私は近江商人のように優れた商人にはなれませんでした。