ここに私が持っている3種の「聊斎志異」を載せます。


岩波文庫版「聊斎志異・上下」



第三書館版「ザ・聊斎志異」




平凡社版「聊斎志異・上下」


作者は蒲松齢(ほしょうれい)。

中国の清の時代に書かれた怪異小説です。

全部で491篇。

読破するのはなかなか大変でしたが、何とも言えない達成感があったことを今でも記憶しております。

怪異小説ですから、当然現実の話しではありません。

しかし、これが現代まで読み次がれ、今もなお多くの人々を魅了しているのはやはり、不思議な物に対して人間が持つある種の憧れ、怪異と現実の狭間を体験してみたいという願望が誰にでもあるからではないでしょうか?


この「聊斎志異」の中に「白秋練」という一篇があるのですが、これはバイジーが美しい女性に姿を変え、若い男性と恋に落ちるという物語ですが、私はこれを読んで一つの疑問を持ちました。

実は長江流域に棲息するイルカはバイジーだけではなく、ネズミイルカ科のスナメリも棲息しています。(現在、バイジーは絶滅し、スナメリだけになりましたが、年々数が少なくなっています。)


アジア一帯の浅い海に広く分布し、日本近海でも見られます。

このスナメリに関しては、このような物語を私は知りません。

かつてはバイジーとスナメリが仲良く一緒に暮らしていたそうですが、バイジーだけが「長江の女神」とか「平和と幸福の象徴」と崇められ、スナメリの方はそのような言われ方をされていないのはどのような理由からなのでしょうか?

川だけに棲み、大海原にはいないバイジーに対して、昔の人々は何かしら哀愁のような感情を抱いていたのか…


そんなことを考え、何年かぶりに「聊斎志異」を引っ張り出した次第です。