日本で23年ぶりにダニが関係するウイルス性脳炎の発症があり、その患者さんは死亡されたそうです。昨日の朝日新聞のニュースサイトから。

 

ダニ媒介脳炎で死亡、国内で初 北海道の40代男性(2016年8月15日22時42分)
> 北海道は15日、野外で
マダニにかまれた道内の40代男性が「ダニ媒介脳炎」を発症し、死亡したと明らかにした。この病気の国内での確認は1993年に北海道で見つかって以来2例目で、死亡は初めてという。

> 厚生労働省によると、ダニ媒介脳炎はフラビウイルスが原因で、このウイルスを持ったマダニがいない地域では感染は起きない。北海道の一部地域でウイルスが見つかっている。人から人に直接感染することはないとされる。潜伏期間は7~14日で、発熱や筋肉痛などのインフルエンザに似た症状の後、髄膜炎や脳炎を起こす。海外では多数の死亡例が報告されている。(以下略)

お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りします。またこれ以上感染者が増えないことを願いたいですね。

 

 

このダニ媒介脳炎は中国にも存在します。

 

ダニによって感染するウイルス疾患はいろいろあって、中国で存在する(みつかっている)ものは以下です。

 

① ダニ媒介性脳炎 ←今回報道された病気

② クリミア・コンゴ出血熱(別名は新疆出血熱)

③ コロラド熱

④ 重症熱性血小板減少症候群 ←日本にも存在

 

①のダニ媒介性脳炎が見つかっている地域は遼寧省、吉林省、黒竜江省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、チベット自治区、雲南省、四川省、河北省で、山岳地帯でいうと大興安嶺山脈、長白山脈、アルタイ山脈、天山山脈でみられやすいそうです。

 

上記地域に旅行に行くときは注意ですね。

 

また、ウイルスだけでなくダニがもつ細菌リケッチア(これらはウイルスよりサイズが大きいです)などでもライム病とかQ熱とかといった病気の感染がおこりえます。

 

どこに行くにしても、草むらに入るときなどはダニに刺されないように常に注意すべきです。

 

 

ところで、上海はダニ媒介の感染症がない地域らしいです。下の図は色が濃いほどダニ媒介の感染症の種類(図ではtypeと書かれている)が多い地域を示しています[論文1から引用]。

 

本当かどうかわかりませんが、下の図で上海(面積は小さいですね)は空白で示されていて、ダニによる感染症がない地域だそうです。なお、中国北部や雲南省ではダニの病気の種類が多いのがわかりますね。

 

 

繰り返しますが、上海で単にダニ媒介の感染症が見つかっていないだけなのか、本当に存在しない地域なのかはわかりません。ただ上海のクリニックで仕事をしていて、上海はダニによる感染症が多い地域ではないというのは実感します。

 

念のため確認ですが、ダニに刺されてかゆいとか赤くなるとかいうのと、刺された結果感染症にかかる(体にウイルスなどが入る)というのは別の現象ですから混同しないでください。ダニに刺され、かゆみなどでクリニックを受診する患者さんは珍しくありません。

 

いずれにしても不要な病気にならないためにはダニでも蚊でも刺されないのが基本です。この時期、まだまだ刺されないようにする注意が必要ですね。

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[論文1]Distribution of tick-borne diseases in China. Xian-Bo Wu, et al. Parasites & Vectors 20136:119