熱中症(中国語で中暑)の季節ですね。
図はこちらのHPから引用。
下記は朝日新聞の7月12日の報道から。日本のことです。
> 総務省消防庁は12日、7月4日から10日までの1週間で4659人が熱中症で搬送されたと発表した。搬送者数は今年最多を更新し、昨年同時期の4倍近くに上った。梅雨の時期は湿度が高く、汗をかいても体温が下がりにくかったことが要因とみている。7月に入り、高気圧が張り出した影響で35度以上の猛暑日や30度以上の真夏日を記録した所が増えた。消防庁は、こまめな水分補給や避暑対策を呼びかけている。
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熱中症は重症度によりⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類されます(日本救急医学会2015)。
Ⅰ度は発汗多量、筋肉痛、こむら返り、あくびが主体です(日射病ともよばれます。またこの状態のめまいのことを熱失神ともいいます)。塩分が体から失われることで筋肉のけいれん(熱けいれんといいます)が起きることもあります。入院は通常不要です。多くは経口的な水分と塩分補給、安静と冷却で改善します。
Ⅱ度は頭痛や嘔吐、全身倦怠感、ふらつきが起きるものです。以前は熱疲労といわれました。体温管理、安静、十分な水分と塩分補給で治療します。
Ⅲ度は以前熱射病ともいわれていたもので、意識がなくなったり、腎臓や肝臓、中枢神経の働きが落ちるものです。血液の凝固異常も起きえる状況で、死亡することがあります。特に高齢者は室内でも高温にさらされると発汗は少なくても発症することがあります(古典的熱射病ともいいます)。若い人は炎天下で大量の発汗をしながら激しい運動をするようなときに起きます(こちらは運動性熱射病ともいいます)。これらは入院治療の適応です。
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以下は7月14日の毎日新聞の報道です。
熱中症診断:実は脳梗塞 高1、部活中倒れ後遺症 家族「すぐに分かれば」
> 夏に倒れて熱中症と診断されたものの、実は脳梗塞(こうそく)で、治療が遅れて後遺症に苦しむケースがある。茨城県古河市の県立高1年、柳澤拓実さん(16)は昨年夏、ソフトテニス部の練習中に倒れた。3度の手術を経て奇跡的に一命を取り留めたが、失語症と右半身まひの重い障害が残った。家族は「すぐに脳梗塞と分かっていれば……」と悔やみ切れない思いを抱えている。(以下略)
非常に残念な経過でした。少しでも機能回復が進みますことをお祈りします。
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わたしの勤務先でも熱中症のかたがときどき受診されます。
多くは軽症ですが、時に上記報道のように熱中症とまぎらわしい病気が紛れ込むことがあります。不安のある場合は相談してください。
このポスターはこちらから引用。
また、発症予防のために、体温管理や高温下での活動時間の調節、十分な水分補給を忘れずに。
[追記] 水分補給には0.1-0.2%の食塩水が望ましいです(自分で作るのはちと面倒)。市販されているOS-1(大塚製薬)、アクアライト ORS(和光堂)といった経口補水液は熱中症予防に理想的ですが、手に入れるのは簡単でないこともあります。通常の健康状態の人なら、市販のスポーツドリンクの飲用でかまいません。ただスポーツドリンクは塩分少なめで糖分が多めですので、あまり多量に飲むのはお勧めできません。