日本での肉フェスで、東京(お台場)についで福岡でも食中毒が起きているようですね。以下は朝日新聞から引用。

 

福岡「肉フェス」でも108人食中毒 お台場と同じ業者(2016年5月18日10時01分)
> 福岡市中央区保健福祉センターは16日、同区の舞鶴公園で開かれたイベント「肉フェス」(4月29日~5月8日)で腹痛や下痢などを訴える人が相次いだのは、会場で提供された食品が原因の食中毒と断定したと発表した。客や従業員の一部から食中毒菌のカンピロバクターが検出された。

> センターによると、主催者や保健所に連絡があった175人のうち、108人に腹痛や下痢などの症状があり、うち69人が医療機関を受診。客24人と、イベント企画会社「AATJ」(東京都港区)の店舗従業員3人の便からカンピロバクターが検出された。全員快方に向かっている。

> 症状を訴えた108人はAATJが運営する店舗の「鶏のささみ寿司」か「鶏むね肉のたたき寿司」を食べていた。食材はゆでたり、あぶったりしていたが、センターの担当者は「加熱不足が原因と考えられる」と話す。(以下略)

肉フェスのハーブチキンささみ寿司。ただしこれは【肉フェス】TOKYO 2016 春 《お台場》のメニューページから引用。肉フェスっていつからやってんでしょうね?

 

 

上海の外来でも、カンピロバクター(キャンピロバクターとも書く)による食中毒を疑う患者さんが結構受診されます。発症の前に生っぽい鶏肉を食べたという経過がポイントです。

 

カンピロバクターは動物の腸内に普段から存在しています。不適切な肉のさばき方、保存の仕方で肉の危険度が大きく変わります。またこの菌は感染力が強いので、ほんのわずかな混入でも発症します。

 

日本の研究では、生の鶏肉を高感度の方法で検査すると60%以上の肉でこの菌が見つかるそうです[追記]。牛肉や豚肉ではそれほど見つからないそうです。

 

生の鶏肉には基本的にカンピロバクターがついていると思って扱ったほうがいいですね。

 

この菌による感染症は、食肉(生肉、特に鶏肉)の他は飲料水、汚染されたサラダなどが原因でおこります。便の検査で原因菌が確定しますが、便の検査まで実施する必要は通常ありません。

 

カンピロバクターの電子顕微鏡写真。菌は長く、よくみるとねじれた形をしていて、はじにひも状の鞭毛をもつ。こちらのHPから引用。

 

潜伏時間は、2から7日(平均2から3日)でやや長いようです。発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などの前駆症状があり、次いで吐き気、腹痛が見られます。下痢は1日10回以上おこることがよくあり、1から3日ほど続きます。発熱は38℃以下が普通です。

 

通常は重症化することもなく、時間とともに回復します。しかし、感染後1~3週間でギラン・バレー症候群(四肢の脱力などをきたす)を発症することがまれにあります。また関節痛をきたすこともあります。

 

治療では脱水に対し点滴する場合もあります。また抗生物質を使用することもあります。

 

 

感染を予防するために、生の肉、特に鶏肉は十分加熱しましょう。60 ℃、1分程度で十分ですが、表面の温度が高くても内側の方が温度が低いままの場合は危険です。

 

日本でも中国でも、生の鶏肉がメニューに出されることもありますが避けるのが賢明です。焼肉屋さんでは野菜は鳥に限らず生肉から離し、もしも生肉と同じ皿の野菜を食べる場合は両者をよく焼きましょう。肉を焼くトングなどの扱い(生肉を触るものは他の食材や食器に触れさせない)も注意ですね。

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[追記]中国の市販の鶏肉を全国20か所以上で調べたところ、その2~3%にカンピロバクターを検出したという2013年発表の研究結果(Wang J, et al. Biomed Environ Sci, 2013; 26:243)がありますが、数値が低すぎて信用できませんゲロー。検査の方法が悪いのかもしれませんが。ちなみに日本の小売店における国産及び輸入鶏肉の汚染率の調査では、国産鶏肉に32~96%(平均65.8%)に汚染を認めています滝汗食品安全委員会資料から)。イギリスの調査でも検査された鶏肉の73%に菌を認めていますポーン(同資料)。