みたこともないような大量の黄砂が中国の西端にあるカシュガルで16日に発生している状況が、一昨日(17日)報道されました。
> 16日午後、中国の新疆ウイグル自治区南部のカシュガルなどで、一時、視界が真っ暗になるほどの大量の黄砂が発生しました。砂漠地帯が多い新疆南部ではここのところ最高気温が30度近くまで上がっていて、そこに冷たい空気が流れ込み、砂が大量に巻き上げられるということです。
> 気象庁によりますと、日本への影響はほとんどないということです。(17日20:33)
上の写真はTBSのニュースサイトから(元サイトに動画あり)。
この日も、翌17日も、風は北東に流れ、日本にも上海にも黄砂の影響はありませんでした。
今後の予報ではカシュガル付近で5月20日にまた黄砂が増加するようですが、やはり風は北東に吹くようで、上海や日本にはあまり飛来しなそうですね。安心しました。
5月20日における地表0から1000mでの黄砂量予測図。色が濃いほど多い。この予想図は九州大学/国立環境研究所の化学天気予報システム CFORSから引用。地図上の地名は当方で追加しました。
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大気中の黄砂やPM2.5が増加すると、クリニックを受診する患者さんが増えますので、普段からそれらの動向には注意しています。
上海に黄砂が降ることはそう多くないのですが、時にまとまって飛来することがあります。過去の事例では2011年4月28日から5月5日は特に飛来がひどかったようです。
黄砂はただの砂ではありません。いろいろな化学物質や細菌が付着しています。したがって黄砂を吸い込むことで症状が出る人がいます。黄砂そのものの成分も体に影響を与えます。
黄砂では健康被害が起きないというのは古い考え方です。ただし症状の出方(つまり感受性)には個人差があるので、誰もが同じ反応を呈するわけではありません。
紅白にも出演したモンゴルの歌手、オユンナのアルバム「オユンナ Ⅱ 黄砂」(1992)。1曲目に「黄砂」という曲が収録されて、”黄砂、空を流れ、広い大地”という歌詞ではじまる。実際のところ黄砂はあまり空を流れてほしくないですね。ちなみにこの曲は昔TV放映された「ムツゴロウ少年記」の主題歌でもあるそうで、アルバム内でこの曲だけは畑正憲氏の作詞です。写真はこちらから引用。
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今月、日本から発表された論文によると、黄砂が急性結膜炎の悪化に関係している可能性があります(Ko R, et al. J Toxicol Environ Health A. 2016;4:1.)。
この研究は福岡でなされ、45人の急性結膜炎の患者さんの目の表面を洗浄し、電子顕微鏡でそこに存在する微粒子を検索しました。その結果、44人でシリカ、アルミニウムといった黄砂の成分がみつかりました。また黄砂由来と思われる成分が多いほど、結膜炎の症状も強かったそうです。
この研究では結膜炎が起きるメカニズムは説明されていませんが、黄砂の成分が体に悪い(この場合は結膜炎を悪化させる)ことはかなり確かなようですね。
黄砂にしろPM2.5、PM10にしろ、完全には接触しないようにできませんが、できるだけ避けた方がいいですね。
よければ以前の黄砂に関する記事こちら★とこちら☆をご参照ください。また大気汚染と結膜炎についてはこちら※をご覧ください。