前回の過眠症(記事はこちら☆)の逆の症状、不眠を訴える方はとても多いです。

 

鬼束ちひろのアルバム「インソムニア」(2001年)。インソムニアは不眠症という意味ですね。ちなみにこのアルバムの中にインソムニアという曲はありません。写真はこちらから引用。

 

統計を取っているわけではありませんが、上海では不眠を訴える方で一番多いのが、仕事上のストレスを感じる駐在員の場合だと思います。次に多いのは、子供の学校のことに関係する悩みをもつお母さんの場合だと思います。自分は内科なので、別の科のドクターはまた違う印象があるかもしれません。

 

不眠でしっかりした休息がとれない状態は辛いものです。昼の眠気で仕事や家事に集中できないのは困ります。

 

無理に眠ろうとするとかえってよくありません。睡眠妨害連想(また今晩も眠れないのではないかという心配の想起)といって安眠できなくなります。


また、不眠のあるかたの一部では筋肉の緊張(布団のなかでの筋のこわばり)が安眠を妨害するといわれます。

 

 

ストレスや悩みが原因の場合、解決できない場合も珍しくありませんが、可能なかぎり原因をなくす工夫をしてみましょう。


また、寝る前にリラックスできる方法があれば取り入れてみてください。人によってはを変えるだけでもいい効果があります。寝室の照明やエアコンの使い方も変えるといいことがあります。またハーブティーホットミルクが効果的な人もいます。アルコールに頼るのは基本的によくありません。寝る直前の激しい運動も良くないことが多いです。

 

2002年の映画、インソムニア(不眠症)の1シーン。アル・パチーノ、ロビン・ウイリアムス出演のサスペンスもの。刑事役のアル・パチーノが不眠症でした。ロビンはもうこの世にはいませんね。写真はこちらから引用。

 

 

生活の工夫や寝室の環境改善でも睡眠改善がおもわしくない場合、睡眠薬を使うことがあります。

 

睡眠薬は作用時間が短いもの、長いものがあります。またベンゾジアゼピンという薬の種類に属するもの、そうでないものがあり、使い分ける必要があります。最近はメラトニン受容体に作用するタイプの薬もでています。

 

このため、寝つきが悪いのか(入眠障害)、途中で目が覚めるのか(中途覚醒)、必要以上に早い時間に起きてしまう(早朝覚醒)、時間的には寝ているがすっきりしない(熟眠障害)のいずれがあるのかをはっきりさせる必要があります。

 

薬も習慣性の出やすいもの、それほどでないものがあります。将来的な減量ないし使用中止も念頭に置いた処方が望ましいです。

 

 

不眠が他の病気で起こっている場合もあります。

 

睡眠時無呼吸症候群は多くの場合、昼間の眠気をきたしますが、夜間は不眠となることもあります。この場合の不眠に睡眠薬を使うと、無呼吸症状がかえって悪化します。

 

むずむず脚症候群は脚の違和感、ほてり感で眠れなくなります。軽度の場合、本人が気づいていないこともあります。いわゆる不眠症とは別の病気です。

 

うつ病は不眠をきたす大きな原因です。精神科の先生にコンサルトが必要です。

 

甲状腺機能亢進症、心不全、腎疾患も不眠をきたします。また一部の薬剤(例えば高血圧の薬など)も本人が気付かない不眠の原因になることがあります。

 

高齢者に多いのですが、睡眠相前進症候群といって、脳内の睡眠リズムのずれによる不眠(早期入眠と早期覚醒がおこる)もあります。こちらは光線療法が有効なことがあります。

 

上のような原因がある場合はその治療(対策)が優先です。安易な睡眠薬投与はよくありません。

 

不眠は治療が難しい場合が珍しくありません。医療機関を選ぶポイントは以下です。

 

①受診時にどこまで詳しく症状を確認してもらえるか(特に初診時)
②隠れた他の原因(病気)がないか考えてくれるか
③治療薬を適切に選んでもらえるか(睡眠薬を使わない選択も考えてくれるか)、また無効時に変更してもらえるか

 

不眠は大変に辛く、そして周囲の人はなかなか理解してくれない病気です。悩んでいる方は医療機関でご相談ください。

 

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