熊本地震はまだ収束の様子がなく、いまだに多くの方が避難されています。改めてお見舞い申し上げます。

 

避難所ではノロウイルス(中国語で诺如病毒)の感染者が出ています。毎日新聞から。

 

> 熊本県南阿蘇村は23日、熊本地震の避難所になっている村立南阿蘇中学校で、ノロウイルスが原因とみられる症状を訴えた避難者の男女が28人いると発表した。うち17人が病院に搬送され、一部は入院中。

> 村によると、21日から下痢や吐き気などを訴える避難者が出た。村は消毒などトイレの衛生状態の管理を強化する。

 

ノロウイルスは非常に感染力が強い。驚くことに感染者の便1gは100万人の感染を起こすことができる量です。

写真はノロウイルスの粒子。透過電子顕微鏡写真に着色したもの。アメリカ疾病管理局のHPから。

 

 

大勢の人が集まる避難所ではノロウイルス集団感染がおきやすいですが、上海で普通に生活しても感染はおきます。感染は集団でも単独でもおきます。

 

下のグラフは23か所の上海の病院を下痢で受診した患者から見つかったノロウイルス感染者の月ごとの比率(%で実数ではありません)の推移。赤の実線がノロウイルス比率です。9月から4月に比率が増えている。ただし感染者は年中います。

 

RV(+)はロタウイルス感染者の比率、bacteriaは細菌感染が確認された患者さんの比率です。Xue Y, et al. BMC Infect Dis. 2015;15:183から引用。

 

日本国内でも冬に感染が起きやすく、11月から2月に発生が集中しています。

 

 

ノロウイルスは患者さんの便や吐物に含まれますので、トイレの後の手洗い吐物の処理が重要です。トイレの便座・蓋やドアノブなども汚染され感染源になりやすい。清掃も大事ですね。

 

写真はTOTOのHPから引用。

 

また、調理をする人がウイルスを持っていると、その人が触った料理や食器などから感染することもあります。またウイルスは乾燥すると空中に漂い、これを吸い込んで発病することもあるそうです。

 

潜伏期間は1~2日。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化することがあります。急な吐き気(夜中に目覚める)おなかの張った感じ、水のような下痢発熱(あまり高くない)があればノロウイルス感染かもしれません。

 

予防の基本は手洗い。避難所ではきれいな水が不足していると思います。アルコールはノロウイルスの消毒には向いていませんが、手の消毒用アルコールがあれば使いましょう。他の病原菌を減少させ、汚れ(脂肪成分)を落とすのにいいからです。

 

手洗い後のタオルの共有は危険で、理想は紙タオルの使用です。

 

消毒が必要な場合は専用の消毒液、または家庭用の塩素系漂白剤を薄めて使います(次亜塩素酸が5-6%になるように調製。なお人間の皮膚にこれを使ってはいけない)。

 

感染者がいる場合、環境の換気も心がけましょう。

 

 

[付記] 排便後、トイレの蓋を閉めないで水洗トイレを流すと、ウイルスが水流で空気中にも漂い、それを吸い込んで感染するという説があります。確かめたわけではありませんが、理論的にも可能性はあるので水を流すときは蓋を閉めた方がいいでしょう。なお、よく見かけるエアタオル(温風で手を乾かすもの)も、使い方や清掃管理が悪いと手についた菌やウイルスをまき散らす可能性があります(上海でよく見るけど大丈夫か?!)。

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