咳がおさまらないために受診する方は1年を通してたくさんいらっしゃいます。
咳が長く継続している患者さんで、風邪と勘違いしているため治りが遅くなるひとがいます。
写真はワシントンポストのHPから引用。
長引く咳の原因はたくさんあります。例えば風邪以外ですぐ思いつくもの、15個をあげてみましょう。
1.気管支喘息(咳喘息を含む)
2.アトピー咳嗽
3.胃食道逆流症
4.後鼻漏
5.感染後咳
6.急性肺炎(マイコプラズマ感染を含む)
7.肺結核
8.アレルギー性喉頭炎
9.慢性気管支炎
10.薬剤性咳
11.肺癌
12.うっ血性心不全
13.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
14.間質性肺炎
15.気管支異物(誤吸入)
ここにあげた以外にもまだまだ原因はあります。
それぞれの病気で必要な検査が違いますし、治療薬も違います。患者さんに聞いたところでは、某クリニックでは行くたびにマイコプラズマといわれ、いつも同じ薬を処方されるといった、笑えない状況もあるそうです。
咳止めの薬も、一般的な咳をおさえる内服薬は「中枢性鎮咳剤」といわれますが、効果のある病気は限られています。その病気によって薬を使い分ける必要があります。
時にはパウダーやエアゾルタイプの吸入薬を使うこともあります。吸入薬は種類がいろいろあり、使い方や即効性のあるなしといった違いがありますので、十分な説明を受けてから使いましょう。逆に説明なく渡される医療機関は危ない。
様々な形の吸入薬。写真はAll About AsthmaのHPから引用。
抗生物質も必要な病気と不要な病気があります。上記15疾患のうちで、積極的に抗生物質を使うのは2種類だけです(結核は抗生物質を使うものの、特別な治療法をとります)。ただし同じ診断でも抗生物質を使った方がいい状況、使わない方がいい状況があります。しかも抗生物質は短期間でやめるべき状態と、1週間以上使うべき状態があり、判断が難しい。だからどんな咳に対しても、「とりあえず」抗生物質を漫然と処方する医療機関はまずい。
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では、自分はちゃんと治療されているのか?と不安に思うことがあるでしょう。
すぐに咳が治らなくても、担当医が次の様な診察スタイルなら大丈夫。
1.いつからどういう経過か、ちゃんと聞いてくれる
2.常に同じ診断名ではない。また常に同じ処方ではない(ただしそうせざるを得ない病気もある)
3.聴診をきちんとする
4.必要に応じて検査(採血やレントゲン)をしてくれる
5.つかう薬の説明をしてくれる(薬剤師がしてくれる場合もあります)
とはいえ、すぐに良くならない病気があるのも事実。特に咳をきたす病気は治りにくいものが多いので、すぐに改善しなくてもあせらないでください。
治療は患者さんと医療機関の共同作業です。早く良くなるようお互いに協力していきたいものです。