熊本地震は時間の経過とともに厳しい現状が明らかになってきました。被災された方には心からお見舞い申しげます。

 

報道では避難中に発生したエコノミー(クラス)症候群で命を落とす方もおられるようです。新聞報道(西日本新聞)はこちら

 

エコノミー症候群は、多くの場合、動かないことから下肢に血栓ができて、それが血流で肺動脈に至り血流を閉塞することで起こります。動き(歩き)始めに突然の呼吸困難、ショックを起こして死亡することがあり、予防=下肢に血栓を作らないことが最重要です。

 

2011年3月の東日本大震災の避難者に対し、岩手県石巻市の避難所を対象に、下肢に血栓ができているかの検査では、震災の起きた3月には調べた人のうち45%で血栓ができているのがわかりました(下記グラフ。論文[Ueda S, et al. Ann Vasc Dis. 2014; 7: 365]のデータから)。その後4月以降も、特に震災から3か月は、非常に高い割合で血栓が見つかっています。

 

グラフは論文に示されたデータから当方で編集。

 

血栓がある人は普通は2%程度しか存在しないと考えられ、避難中の人々での発見率は非常に高いです。

 

また上記の論文によると、コントロールの悪い高血圧を持っているほど血栓ができやすいようです。

 

なお、下肢の血栓は自然に改善することもあり、血栓がある人が全員エコノミー症候群を発症するのではありません。

 

エコノミー症候群の予防には次が大事です。特に避難から3ヶ月間は注意しましょう。

1.定期的に足を動かす。指だけでもいいし、ふくらはぎをもむのもいい。

2.脱水にならない。つまり血をドロドロにしない。水よりもイオンウオーターのほうが予防にいいというデータがあります(Hamada K, et al. JAMA. 2002;287:844)。

3.高血圧のある人はコントロールをよくする。

4.窮屈なところではできるだけ寝ない(これはなかなか車内での避難では難しいですね)。

5.血栓を疑う症状(下肢の痛みやむくみ)があったり、できやすい状態(下肢の外傷、嘔吐による脱水など)が続く場合は医療機関を受診し、超音波検査などを受けましょう。

 

避難されているみなさんのご無事を祈っております。

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