すぐに怒る(キレやすい)ひとはトキソプラズマという寄生虫感染の影響を受けているかもしれません。

 

写真はこちらのHPから引用。

 

トキソプラズマ感染と激怒しやすさが関連するのではないかという研究結果が先月末に発表されました(Coccaro EF, et al. J Clin Psychiatry. 2016; 77: 334-341[英文].)。

この研究では、成人358人を対象とし、間欠性爆発性障害(爆発的に怒りやすい病気、IEDという[注1])のあるひと、IED以外の精神疾患があるひと、精神疾患のないひとの3群に分けました。トキソプラズマ保有率(抗体陽性率)は、IED群では22%だった一方、対照群ではわずか9%、精神疾患群では約16%でした。

 

キレやすいひとにはトキソプラズマ感染があるかもしれませんね。ただしこの研究だけではまだ確定的なことは言えませんが。

 

ところでトキソプラズマに感染したネズミはネコ(の尿)を怖がらなくなるという研究もあります(Ingram WM, et al. PLoS One. 2013; 8: e75246[英文])。

 

この写真はこちらのHPから引用。

 

感染症と性格との間に、本当に関連があるのか興味深いですね。

 

 

さて、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)は原虫といわれる寄生虫の一種で、ネコの腸の中だけで増殖します。健康な成人の場合、感染してもほとんど症状がありません。せいぜい軽い風邪のような症状が出るくらいです。一度感染すると体内にトキソプラズマが残存(保有)されることがあります。日本人または中国人で保有者は10%程度です。フランス人は高いようです[注2]。

 

しか臓器移植やエイズの患者など、免疫抑制状態にある場合には重症化して死亡することがあります。

 

写真は先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会(トーチの会)のHPから。素晴らしい活動をされています。

 

また母親から胎児が感染すると先天性トキソプラズマ症という、脳の障害や消化器官の異常をもった子供が生まれることがあります。妊婦や妊娠を希望される方にはぜひ知っておいてほしい疾患です。
にほんブログ村 海外生活ブログ 上海情報へ
にほんブログ村

 

 

 

[注1] IEDは、頻回かつ衝動的に、状況に釣り合わないほどの言語的・身体的な攻撃性を爆発させる精神疾患の1つで、この病気と診断される頻度はあまり多くありません。

[注2] 興味のあるかたはToxoplasmosis: a global threat.(トキソプラズマ症:世界の脅威)Furtado JM, et al. J Glob Infect Dis. 2011;3:281.[英文]をみてください。