この話題はあまり取り上げたくないのですが、患者さんの増加傾向があるので、余計なことかもしれませんが注意喚起をしたいと思います。

 

私は内科医ですから泌尿器科を専門としていません。しかし、日本人男性で、性感染症をどう治療したらいいか悩んで受診される患者さんを診療する機会がよくあります。しかも年に数人でなく、月に数名のペースです。

 

駐在員のかたで、ハメを外してしまい、当地の危険な風俗店に行ってしまう人はまれではないようです。

 

【梅毒】

性感染症の1つである、梅毒感染が日本では増加傾向にあります。日本では全例届け出の義務がある病気です。

 

下図は日本の各年の梅毒患者数の推移。横軸は月。2015年は青の折れ線で、いままでより上にきていますね。2016年だけは赤の棒グラフで示していますが、2015年を上回るペースです。

グラフはこちらのサイトから引用。

 

下は上海市の各年の梅毒の統計(2014年1月から2016年2月のデータ。横軸は月。全例がきちんと把握されているとか考えにくい)では、2014年よりも2015年の方で、日本と違い、増加傾向はないようです。診療していても実感としてそうです。ただし患者さんの実数では日本の4倍ほどですね。

グラフはこちらの発表データから当方で作成。

 

梅毒は症状が多彩です。初期にできる陰部のできものや潰瘍は自然になくなることがあり、その後に発熱、倦怠感、関節痛が出た場合、かぜなどと区別が難しくなります。また下の写真のような発疹をみることもあります。血液検査が大事です。

 

写真はエルゼビアから。

 

【淋病】

淋菌による感染症。日本では耐性菌が問題になっています。上海ではクラミジアと同じくらいよく遭遇します。排尿時痛や膿がでることで発病することが多いです。しっかりした治療でよくなることが多いです。

 

下のグラフ(横軸は年)のように日本の淋病患者数は現在横ばいからやや減少傾向です。なお定点観測値ですので、全数は把握されていません。

こちらのデータから当方で作成したグラフ。

 

一方、下のグラフは上海市の統計です。全数が把握されているとは思えませんので、傾向を見てください。2014年1月から2016年2月のデータ(横軸は月)。日本と違い、2014年よりも2015年で増加傾向にあります。実際、当院の外来受診も増えている感じがあります。

グラフはこちらの発表データから当方で作成。

 

【クラミジア】

淋病と同じくらいよく患者さんがいます。症状が出にくいことがよくあります。自覚症状は排尿時痛(尿道炎)が多いです。女性では特に症状が出にくく、腹膜炎や不妊の原因になったりしますから、男性はパートナーにうつさないようにするべきです。しっかりした治療で改善することがほとんどです。

 

 

これら3つの病原体は、スピロヘータ(らせん状細菌)、いわゆる細菌、クラミジア(特殊な細胞寄生菌)です。治療薬もそれぞれで異なり、梅毒はペニシリン系、淋病はセフェム系、クラミジアはマクロライド系の治療薬を使います。

 

きちんとした検査を受けて適切な治療を行いましょう。

 

ただし言うまでもなく、感染の危険を避けることが最重要です。

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