今年の3月23日に、温州みかんの効用の研究発表(プレスリリース)が農業・食品産業技術総合研究機構から出されました。内容はこちらのHPをみてください。
これによると、普段からみかんをよく食べる人は、糖尿病・脂質異常症・非アルコール性の肝機能障害になりにくいそうです。
この研究は浜松市の三ケ日地域で行われました。
はじめに病気のない住民910名を対象に、血中のβ-クリプトキサンチン(カロチンの一種、温州ミカンに特に多く含まれる)濃度を測定して、もともと高い(=みかんを毎日3,4個食べる)、中程度高い(=毎日1,2個食べる)、低い(=毎日は食べない)の3グループのどれにあてはまるか調べます。そしてその人たちを10年追跡し、糖尿病などを発症するかどうか調べました。
その結果、β-クリプトキサンチン濃度が高い(=普段からみかんをよく食べる)程、その後の糖尿病などの発症が少なかったそうです。
下のグラフのように、糖尿病に関しては57%の発病リスク低下があったそうです[文献2}。
こちらは脂質代謝異常(論文ではメタボリック症候群としている)、発病リスクは34%減[文献3]
こちらは非アルコール性肝機能異常症(論文ではALTが上昇したかをみる)で、49%のリスク減[文献1]。
以上3図は上記プレスリリースから引用。
みかんのカロチン(特にβークリプトキサンチン)はすごい威力ですね。
各種のカロチンは抗酸化物質ですが、それらが酸化ストレスを軽減することでこのような結果になったと思われます。
みかんは甘いので糖尿病を悪化させると思っていましたが、そうでもないようですね。
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上海の南に温州市 Wenzhouがあって、そこからうちのクリニックを定期的に受診している日本人駐在員の方がいらっしゃいます。また同市に住む中国人にも当院を受診する方がいらっしゃいます。ですので温州市にはなんとなく親しみがあります。
温州市は商人の町として発達した比較的裕福な都市らしいです。また柑橘の名産地としても有名です。温州みかんは温州市原産だと最近まで思ってましたが…
調べると日本の温州みかん(冬みかん)は中国の温州にちなんでウンシュウミカンと命名されたらしいですが、温州原産ではなく、日本の不知火海沿岸が原産と推定されるそうです(wikipedia参照)。
まぎらわしいわ
[文献1] Sugiura M, et al. Brit J Nutr 2016; Feb 26:1. [Epub ahead of print]
[文献2] Sugiura M, et al. BMJ Open Diab Res Care 2015; 3:e000147.
[文献3] Sugiura M, et al. Brit J Nutr 2015; 114(10):1674.