本日(2月17日)のグーグルのトップロゴが聴診器になってます。
右の医師は現代の聴診器、左の人は筒のようなものを肺に当てていますね。
今日のグーグルのトップロゴ(設定によって表示されないことがあります)。
もしかしたらと思ったら、今日はフランス人医師で世界で初めて聴診器を発明した
ルネ・ラエンネック[1781-1826年]の誕生日で、生誕235 周年でした。
こちらはいまわたしが使っている聴診器(色は違います)。
リットマン ステソスコープ クラシックⅡS.E
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聴診器が発明されるまでは、
医師は自分の耳を患者さんに直接当てて
(あるいはハンカチを当ててその上から)胸の音を聴いていました。
いまならセクハラで訴えられる話です。また当時の衛生状態を考えると、患者さんの皮膚は決してきれいな状態ではないでしょうから、聴く方も気持ちのいいことではなかったでしょう。
これはこちらから引用。
ラエンネックが開発した聴診器は、下記写真のような中空の木の筒で、片側を患者さんの胸に当て、もう片側を自分の耳に当てて胸の音をきく道具でした。1816年のことです。
写真はこちらから引用。
こんな風に使っていたようです。
イラストはこちらから引用。
今のように両耳で聴くスタイルの聴診器が発明されたのは、その35年後の1851年です。ラエンネックは1826年に肺結核で亡くなっていますので、それを使うことはできませんでした。また、日本に聴診器がもたらされたのは1848年で、長崎のオランダ人医師が持ち込みました。
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Wikipediaのラエンネックの項では聴診器を発明した業績が記載されています。彼は聴診される異常音を分類し、それらに名前をつけました。
しかし、実際彼がすごかったのは、聴診器を発明しただけでなく、聴診で聴こえる異常な音がどんな病変から発生するかを、多数の剖検(患者さんが死亡後の解剖)で調べたことです。
ラエンネックはちょうど分析的医学が始まった時期の医師です。それまでのギリシャ・ローマ時代は医療は限られた人々のもので、医師と患者さんと1対1の対話が主体でした。病気の知識も乏しい時代で、主治医の経験・勘と言い伝えに頼る伝記的医学でした。
ラエンネックの時代は、ちょうどフランス革命があり社会の仕組みが変わった時代です。医学においても病気の分類命名、統計の使用、解剖で得られた病理学的変化の分析といった、今では当たり前のことが導入されはじめた時代でした。病院という施設にたくさんの患者さんを集めて治療をする時代になったのです。
その後、医学は実験室での研究が主体に変容し(狂犬病ワクチンを開発したパスツールに代表される実験的医学の時代ですね)、現在は様々なハイテク医療が導入されています。
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医学が進歩した現代になっても、病気の診断において聴診はとても重要です。今日は改めてラエンネックに感謝しなければなりませんね。
ところで、病状がすでに分かっているなどの理由がある場合を除いて、診察室で聴診をしない内科医は信用してはいけません。ちゃんと内科研修を受けていない可能性が高いので(真面目な話)。