以前チベットのラサに旅行した時、高山病で死ぬかと思ったことがありました。自分が中国で勤務を始める前のことです。
ラサは海抜3,700mくらいの高地にあります。わたしは飛行機で成都を経由して一気にそこまで移動しました。
着いてしばらくは何ともなかったので、観光でどんどん歩きまわっていたのですが、これがよくなかった。
半日くらいして、ひどい頭痛と吐き気がおきて、しかも体に力が入らなくなりました。ホテルに戻り休みましたが、もうそれから動けない。
顔にハエが止まっても、脱力のため追い払うことができません。頭はガンガンするし、ちょっと動いただけで二日酔いのように吐きたくなって、ベットから離れられませんでした。このまま死ぬのかと思いました。
幸い安静にしていただけで、自然と歩けるようになり、その後普通の状態まで回復しました。体が低酸素に順応したのでしょう。
客死が現実になるのかと随分心配したのを思い出します。予防薬など全く使っていませんでした。準備不足ですね。体力を過信しました。

現在勤務しているクリニックに、高山病の薬を希望して受診される方が良くみえます。最近多い。行かれる先はラサの他に九寨溝、黄龍、シャングリラなどです。
受診された方には予防薬(ダイアモックス)や、頭痛薬(ロキソニンなど)を処方します。そしていつもついでに自分の体験も説明しています…余計なお世話かしら。
なお予防のための投薬は原則として保険適応外です。基礎疾患のある方や高齢の方には、デキサメソゾンやニフェジピンという薬をお出しすることもあり、処方に工夫のしがいがあります。ダイアモックスは指のチリチリ感が出ることがありますので、この辺も説明します。
薬より大事なのは、急に動かないことと、十分な睡眠・休養です。また、特に問題がなければ糖分と水分は十分摂取した方がいいです。お酒の飲みすぎは危険です。
ラサは海抜3,700mくらいの高地にあります。わたしは飛行機で成都を経由して一気にそこまで移動しました。
着いてしばらくは何ともなかったので、観光でどんどん歩きまわっていたのですが、これがよくなかった。
半日くらいして、ひどい頭痛と吐き気がおきて、しかも体に力が入らなくなりました。ホテルに戻り休みましたが、もうそれから動けない。
顔にハエが止まっても、脱力のため追い払うことができません。頭はガンガンするし、ちょっと動いただけで二日酔いのように吐きたくなって、ベットから離れられませんでした。このまま死ぬのかと思いました。
幸い安静にしていただけで、自然と歩けるようになり、その後普通の状態まで回復しました。体が低酸素に順応したのでしょう。
客死が現実になるのかと随分心配したのを思い出します。予防薬など全く使っていませんでした。準備不足ですね。体力を過信しました。

写真はラサのポタラ宮。Wikipediaから引用。
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現在勤務しているクリニックに、高山病の薬を希望して受診される方が良くみえます。最近多い。行かれる先はラサの他に九寨溝、黄龍、シャングリラなどです。
受診された方には予防薬(ダイアモックス)や、頭痛薬(ロキソニンなど)を処方します。そしていつもついでに自分の体験も説明しています…余計なお世話かしら。
なお予防のための投薬は原則として保険適応外です。基礎疾患のある方や高齢の方には、デキサメソゾンやニフェジピンという薬をお出しすることもあり、処方に工夫のしがいがあります。ダイアモックスは指のチリチリ感が出ることがありますので、この辺も説明します。
薬より大事なのは、急に動かないことと、十分な睡眠・休養です。また、特に問題がなければ糖分と水分は十分摂取した方がいいです。お酒の飲みすぎは危険です。
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北京とラサを結ぶ青海チベット鉄道建設の作業員14,050人についての調査では、初めて高地に到着したときに51%の人で高山病が起きたそうです[文献1]。
さらに、この鉄道(車内の気圧管理装置あり)の乗客の調査では、1時間半で2,808mから4,768mに上る区間で78%の人がなんらかの症状を感じ、24%が高山病の診断基準を満たしたそうです[2]。
2010年に、ラサに滞在する観光客2,385人を対象にした調査では、50.8%に高山病がみられたそうです[3]。
昨年、 中国人(漢族)を対象にした研究で、EPAS1の遺伝子多型が高山病発症と関係があるかもしれないという結果が発表されました[4]。将来は採血検査で、高山病になりやすいかどうかがわかるようになるでしょう。
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*上記文中では、わかりやすくするため、高山病と高地脳浮腫、高地肺水腫を区別せず書いています。
文献
ちなみにラサでわたしのように高山病を起こす人はどのくらいいるのでしょうか?
下記のような報告があり、決してまれな病気ではないようです。
下記のような報告があり、決してまれな病気ではないようです。
北京とラサを結ぶ青海チベット鉄道建設の作業員14,050人についての調査では、初めて高地に到着したときに51%の人で高山病が起きたそうです[文献1]。
さらに、この鉄道(車内の気圧管理装置あり)の乗客の調査では、1時間半で2,808mから4,768mに上る区間で78%の人がなんらかの症状を感じ、24%が高山病の診断基準を満たしたそうです[2]。
2010年に、ラサに滞在する観光客2,385人を対象にした調査では、50.8%に高山病がみられたそうです[3]。
昨年、 中国人(漢族)を対象にした研究で、EPAS1の遺伝子多型が高山病発症と関係があるかもしれないという結果が発表されました[4]。将来は採血検査で、高山病になりやすいかどうかがわかるようになるでしょう。
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*上記文中では、わかりやすくするため、高山病と高地脳浮腫、高地肺水腫を区別せず書いています。
文献
[1] Wu TY,et al. Who should not go high: chronic disease and work at altitude during construction of the Qinghai-Tibet railroad. High Alt Med Biol. 2007;8:88-107. なお、より重症な高地脳浮腫は0.28%、高地肺水腫は0.49%にみられた。
[2] Wu TY, et al. Altitude illness in Qinghai–Tibet railroad passengers. High Alt Med Biol. 2010;11:189.
[2] Wu TY, et al. Altitude illness in Qinghai–Tibet railroad passengers. High Alt Med Biol. 2010;11:189.
[3] Labasangzhu. Acute Mountain Sickness among Tourists in Lhasa, Tibet : A prevalence study. [Master thesis] https://www.duo.uio.no/bitstream/handle/10852/30038/Labasangzhuxfinalxthesis.pdf?sequence=1&isAllowed=y accessed on Feb 2, 2016.
[4] Guo LI, et al. Genetic variants of endothelial PAS domain protein 1 are associated with susceptibility to acute mountain sickness in individuals unaccustomed to high altitude: A nested case-control study. Exp Ther Med. 2015;10;907–914.