目がかゆいといって来院される患者さんが最近増えています。

写真はアレルギー性結膜炎。今日の臨床サポート(エルゼヴィア、2015)から。

もっとも、わたしは内科医なので風邪や高血圧で受診される方が、「なんだか最近目がかゆい」といっているのを聴くことが多いわけです。症状によって点眼薬を処方することもあります。

多くは、冬季に増えるアレルギー性結膜炎と思われます。

日本でも今の時期、乾燥した空気でハウスダストなどが巻き上げられてアレルギー性の結膜炎を起こすことは珍しくありません。ハウスダストにはほこりやダニの死がい、人間のフケなどといった様々な細かい汚れが含まれます。

部屋の掃除は大事ですね。


上海の場合、大気汚染の影響はあるのかどうか、気になるところです。

汚染された空気中には、オゾンや窒素酸化物、硫黄化合物などが含まれていますので、目に刺激性があるのは間違いありません。ただし、大気汚染がどのように目の疾患を起こすのかは良く調べられていません。

したがって目のかゆみが大気汚染のせいだと断定するのは実際は難しいです。特に大人は。

ただし、明らかに大気汚染のレベルと症状が比例するような場合は、原因は大気汚染と考えてもいいでしょう。



大気汚染と目の症状についての研究は、思ったより多くありません。疫学的研究は非常に少ないです。

2014年に台湾から、子供の結膜炎と大気汚染について研究した論文が発表されています。

そちらによると、大気汚染が悪化している期間中、6歳以上の学童が結膜炎悪化で救急外来を受診する率が9.48%増加したそうです(95%信頼区間は9.03から9.93)。また明確に記載はされていませんが、増加した汚染物質のうちではオゾンや窒素酸化物の影響が強そうでした。[注]

大気汚染と結膜炎悪化には、そこそこ関連性がありますね。子供だからこうなったのかもしれませんし、台湾の状況が中国本土でも同様のことがいえるかはわかりません。

空気が汚い時には子供の外遊びは避けた方がいいでしょう。危ないものは避けるのが一番ですね。

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[注]この研究では大気汚染をasian dust stormと表現していて、黄砂の影響を一番に考えているようです。またこの研究ではPM10は測定していますが、PM2.5は測定していません。しかしながら黄砂はPM2.5増加の一因ですので、PM10の濃度上昇時には当然PM2.5も増えていたと考えられます。