先日、中国内陸方面に出張した駐在員のAさん(42歳、男性)が喘息発作をおこして来院されました。


中国の大気汚染ランキング地図。沿岸だけでなく、内陸にも大気汚染のひどい都市があります。引用元はこちら


Aさんは、上海から湖南省の某都市に飛行機で向かいました。いままで喘息になったことはありません。タバコも吸わない方です。

目的地に到着してすぐに、空気が汚く、いつもよりかなり街が曇ってみえるのに気づきました。

とりあえず昼間は商談をすませましたが、夕方からなんとなく息苦しくなり、夜にホテルについてから呼吸がとても苦しくなりました。

咳も続けて出るようになり、横になると息苦しく、一晩中座っていたそうです。

翌朝はすこし歩いただけでも息切れを感じ、ゆっくりとしか歩けなくなったそうです。

このため、Aさんは出張を切り上げて朝一番の飛行機で上海に戻り、クリニックを受診されました。

受診時、意識はしっかりしていましたが、聴診器がなくても呼吸がぜいぜいしているのがわかる状態でした。聴診器で呼気時の喘鳴(狭くなった気管支から出る音)が明瞭にきかれました。熱はなく、酸素飽和度は91%と低下。喘息発作でした。大気汚染がきっかけでしょう。

Aさんは診察後、気管支拡張剤やステロイド剤の点滴などの処置で呼吸が楽になり、帰宅されました。発作予防の薬も処方されました。

Aさんは、こんなことが起こりえるのだと、とても驚いていらっしゃいました。出張を中断したのは残念でしたが、健康が第一ですね。


PM2.5をはじめとする大気汚染が喘息の急性発作を起こすことは以前からわかっています。

昨年の発表ですが、オーストラリアでは大規模な山火事で大気のPM2.5が増加した状態が続き、その間に喘息で救急外来を受診した人が増加したそうです。論文はこちら

この論文によると、大気のPM2.5濃度が8.6 μg/m3上昇すると、その日の救急外来受診の喘息患者さんが 1.96% 増加したそうです。 


北京がクローズアップされていますが、内陸地方に出張や旅行をする場合も注意が必要ですね。異常を感じた場合、Aさんのように移動を中止して戻ることも重要です。また、以前から喘息を持っている方は吸入薬などの準備をお忘れなく。

にほんブログ村

*上記において個人情報は変更してあります。