起きがけにセロファンをお尻にぺたっ!
昔、こんなやってぎょう虫検査したな~。
夜間に肛門周囲にぎょう虫が卵を産みつけるので、それをセロファンで調べるわけです。
学校保健法の改正によって、日本ではぎょう虫検査義務化が2015年限りで廃止されました。
検査用セロファンも製造中止されたそうです。
わたしの勤めているクリニックでも、日本から取り寄せていたセロファンの在庫がついになくなりました。
この方法で、わたしのいるクリニックでも時々患者さんが発見されています。
親御さんによっては、お尻につけないで、便にセロファンをつけて検査に提出するという笑えない間違いが起こることもありました。
検査でぎょう虫Enterobius vermicularisが見つかる子供は、日本全国では検査をしてもいまや1000人に1人(0.1%)くらいしか見つからないそうです。昭和30年ころは30%もあったそうですが。
ぎょう虫は暖かい地域に多くみられます。
ですから検査をしても東北や関東では0.1%以下しかぎょう虫が見つかりません。一方、福岡県では0.5%、佐賀県0.7%、長崎県0.5%、大分県0.9%などと九州では頻度が多いそうです。
ぎょう虫は、命にかかわるような寄生虫ではありませんが、お尻のかゆみやそれによる集中力の低下、学習障害などが問題になる病気です。子供と感染した子の親に多い病気です。
ところで中国ではぎょう虫の感染率はどうなんだという疑問がわきますね。
とくに小さいお子さんのいる家庭の親御さんは気になるのでは。
ぎょう虫の卵。写真はChina.ogr.cnから。
簡単に調べられるところでは下記の研究がみつかりました。
1.深圳市羅湖区で489人の幼稚園児で検査したところ10.2%の感染率であった(下記論文1)。
2.中国22か所で2006-2010年に3-12歳児17,068人を調べたら、平均の感染率は7.99%であった。 感染率が高いのは福建省で2006年に56.15%、また広東省で2010年では46.1%であった(2)。
3.江蘇省鎮江市の句容で2011-2012年に1,088人の子供を調べたところ1.1%の感染率であった(3)。
あまりに数字が違いすぎますので、実際のところはわかりませんが、論文にも書かれているようですが①地域差がとても大きく、福建省などがある南方で特に多い、②生活習慣や衛生状態(トイレやベットの状態)で感染率が変わる、のは確かでしょう。
上海で、普通の日本人の衛生環境下で生活したらあまり感染の心配はないでしょう。
ただし、肛門周囲のしつこいかゆみがある場合は、一度検査したらいいかもしれません。
わたしの勤めるクリニックでは、以前のようなセロファンの方法でなく、便を容器にとっていただく方法で現在は検査を実施しています。また代替のセロファンがないか探しています。
セロファンがなくなったのは、ちょっと不便。

にほんブログ村
データは下記論文の英文抄録より。すべて本文は中国語。
(1) Kuang CP, Wu XL, Chen WS, Wu FF, Zhuo F. Zhongguo Xue Xi Chong Bing Fang Zhi Za Zhi. 2015 Feb;27(1):76-8.
(2) Zhou CH, Zhu HH, Zang W, Zhang XQ, Chen YD. Zhongguo Xue Xi Chong Bing Fang Zhi Za Zhi. 2014 Aug;26(4):370-5, 386.
(3) Jiang CG, Li SM. Zhongguo Ji Sheng Chong Xue Yu Ji Sheng Chong Bing Za Zhi. 2013
Oct;31(5):355-6.