新年元旦から久しぶりに上海で鳥インフルエンザH7N9の患者さんがでましたね。本シーズン全体では9例目とか。


上記画面は上海市卫生和计划生育委员会のHPから。59歳男性というのはいいとして、患者さんの名字が「」というのは個人情報上問題ないのかしら。しかも情報少なすぎですね。重症なのか軽症なのかくらい書いてよ。


基本的にH7N9は鳥から人にうつりにくく、人から人へうつる確率も低いとされていますので、日本人が普通の生活をする上で神経質になる必要はありません。病原性もH5N1より弱く、ウイルスを持っていても発病しない鳥もいるくらいです。

しかしながらいったん人間で発症した場合、このウイルスは重症化しやすい可能性があります(死亡率が35%程度)。なお
軽症例は診断されにくいため、初期の発表例ほど重症例が目立つ現象は、他のインフルエンザウイルスの流行でも認められますので、実際に病原性が強いかは不明です。


ウイルスは時間ともに変異して性質をかえていくので、今後の広がり方には注意が必要です。

上海における最新情報は上記画面にあるHPからみてもいいですが、上海日本総領事館のHPがわかりやすいですね。

また、もしも鳥に接触、あるいはH7N9に感染したひとと接触した後に発熱や咳がある場合、速やかに医療機関を受診しましょう。

実際に流行が起きてしまえば、受診の方法に制限がある場合があるので、直接病院等には行かずに、まず医療機関や医療アシスタント会社に電話をしましょう。


ご存じの方も多いと思いますが、以下は基礎知識です。

<検査法>
H7N9はA型インフルエンザの一種です。感染した場合、鼻から検体を採る検査キットA型と判定はできます。しかし通常流行しているA型インフルエンザなのか、H7N9なのかはこれではわかりません。したがって、大きな検査機関に医療機関から検体を送付して検査します。ただし感染の疑いが濃い場合、詳しい検査結果を待つ前に早期に治療を開始すべきです。ウイルスの発病までの潜伏期は7日程度です。

<治療>
通常のインフルエンザと基本的に同じ。48時間以内に抗ウイルス薬(タミフルなど)を開始する。H7N9ウイルスは発症すると肺炎を起こすことがあり、吸入するタイプのリレンザはお勧めしません。重症例では薬を倍量使うことがあります。たとえば成人で75mgのカプセルを1日2カプセルのところ4カプセル使用するとかします。このウイルスでもタミフル耐性のものがあるようですが(論文の1例はここ)、タミフル以外の薬もあるので治療ができないのではないかといった過剰な心配はいりません。

<予防>
まず鳥との接触を避ける。
鳥類を扱う市場や農場に行かない。とくに鳥自体やそのフンと接触しない。万が一接触したら手をよく洗う。ただしきちんと加熱調理された鶏肉や卵は食べても問題ない。家畜の鳥以外でもハトなどの野鳥に接触すべきではない。

次に手洗いの習慣。
普段から手をよく洗う。エスカレーターのベルトやエレベーターのパネル、ドアの取っ手など多数の人が触れるところに接触した時もあとで手を洗う。

最後にマスクの使用。
咳や鼻水があればマスクをする。咳が出るが、マスクがない時はティッシュで口を覆い、そのテイッシュは可能ならふたのあるゴミ箱に捨てる。

ワクチンはない。
H7N9ウイルスに対するワクチンはまだありません。現在開発中です。論文はここ。しかし季節性インフルエンザにかからないことが重要ですので、インフルエンザワクチンは受けた方がいいです。

<隔離>
おそらく上海で発症したら下記に隔離されると思います。
公共卫生临床中心(水电路分院)、公共卫生临床中心(金山总院)、 复旦大学附属儿科医院


人類の知恵がまだ追いついていない新しい病気です。予防が第一です。
にほんブログ村