これはタミフルの写真。

 

前回のインフルエンザのお話の続きです。

 

◆インフルエンザの治療薬にはどんなものがある?

飲み薬のタミフル、吸入薬のリレンザとイナビル、点滴薬のラピアクタがあります。

新薬でアビガンというものがありますが、特殊な条件でしか使えません。

 これらの抗ウイルス薬はウイルスの増殖をおさえる作用があります。症状をなくす魔法の薬ではなく、発熱などの症状がみられる期間を短縮する目的で使用します。抗ウイルス薬がインフルエンザ治療に必須というわけではありませんのでご注意を。

 

◆薬は何がいいの?

上記の薬で効力は大きく変わりませんので、正しく使えば通常の場合どの薬剤を使ってもいいと考えます。なお点滴薬(ラピアクタ)は入院が必要な重症の方に使用することが多いです。

 

個人的にはタミフル1種類があれば通常は治療が可能と考えています。通常の成人では175mgのものを1回1カプセルで12回、5日間服用します。治療はできるだけ早期に開始するべきで、症状がでてから 48 時間以内が望ましいです。

 

上海で驚いたのは45mgと30mgといった小さいサイズのタミフルが入手できることです。日本では75mgのカプセルと粉末剤(シロップ)しかありません。粉末は苦くて飲みにくい薬ですので、少量を処方したいとき小さいカプセルがあると便利です。

 

タミフルは腎臓が悪い場合など使えないことがありますので、患者さんに処方するときは全身状態にも注意をします。

 

最近タミフルに対する「耐性ウイルス」が報告されていますが、治療で困ることは実際上あまりありません。試験管の中で耐性が認められることと、人体における臨床効果は分けて考える必要があります。

 

吸入薬であるリレンザがB型インフルエンザでタミフルより効果がありそうだという学会発表もありますが、内容をよく見ると大差はありません。またリレンザは乳製品のアレルギーがあったり、喘息があったりする患者さんでは使いにくい薬です。医師にもこのあたりをよく理解していない人がいます。

 

◆小児でタミフルは使った方がいいかどうか

インフルエンザにかかってタミフルを飲んでいる子供さんで、窓から飛び降りたり、車道に走っていったりする異常(危険)行動をとることがたまにあるようです。タミフルが悪いのか、インフルエンザウイルスが悪いのか、原因はいまだに明確ではありません。

 私の意見ですが、10代のお子さんではタミフルは積極的には使わない方がいいと思っています。親御さんの目が常に届くのなら内服してもかまわないですが。この年代の患者さんは抵抗力があり、タミフルの力を借りる必要はないことがほとんどです。ワクチンをしておくことも重要です。 

なお歳未満の小児(特に 2 歳以下の乳幼児)は悪化リスクが高いため、タミフルを使用することがしばしばあります。

 ◆妊婦さん、授乳中のお母さんは?

妊婦さんは積極的にタミフルなどを使ったほうがいいようです(日本産婦人科学会の見解)。胎盤へ薬が移行することはわかっているものの、胎児への影響で明らかなものは報告されていないようです。

一方、安全性がはっきりしていませんので、私個人としては、授乳中の方は内服しないほうが望ましいと思います。タミフルの能書でも禁止ではないが、使用回避がいいと書かれています。

 ◆さいごにおまけ。鳥インフルエンザは大丈夫?

上海市内や近郊で散発例がありますが、日本人コミュニティでの一般的な生活では神経質になる必要はありません(2015年現在)


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