今回は、抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ)について
”ワクチン接種者は投与できないと言う医師がいる”
という情報をくださった方がいらしたので
回答も兼ねて記事にしたいと思います。
抗体カクテル療法は、適応が軽症・中等症Iであり
中等症II以上が多い自院で扱うことはなかったので
大変勉強になりました。
情報をくださった方、どうもありがとうございます。
情報は、ロナプリーブを扱っている中外製薬から直接聞いたものとなります。
公式のインタビューフォームはこちらです。
https://chugai-pharm.jp/
抗体療法の大まかな機序としては
SARS-CoV-2 のSタンパクに対する抗体
カシリビマブ and イムデビマブ 2 種類を同時に投与することで
SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害し、ウイルスの増殖を抑制する。
適応:
SARS-CoV-2 による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。
=軽症者ないし中等症I
*高流量酸素又は人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。
(コロナにおいて、抗体はリスクになります。
抗体が沢山あればあるほど、自己組織を傷害する。
重症患者ほど、抗体価が高いことがSARSの時から報告されています。)
① ワクチン接種者の投与について
ワクチン接種者は治験から除外されているが、適応外ではない(=投与はできる)
ということです。
但し、ワクチンとの相互作用に関
接種者に”有効である”、というデータはあるが、
今のところ、少なくとも都内で
115名のワクチン接種後COVID19に感染した事例が
抗体カクテル療法を受けましたが
明らかな重篤な有害事象は報告されていないとのことです。
115名ものブレークスルー感染者が抗体療法を受けていたことには驚きました。
ワクチンが重症化を抑制するのであれば、
抗体療法をする必要はないと判断する医師が多いのかと思っていましたが、、、
現場では、ワクチンを打っていても重症化する人は重症化する
自院と同じ現象を見ている医師が多いのかとも思いました。
また情報あればシェアします。
②未接種者でコロナに感染し、抗体療法を受けた事例について
治験では既感染者は除外されており
米国では抗体療法からワクチン接種は90日空けるという指針が出されている
中外製薬からは以下の理由が推察されるとのことでした。
・最初の感染から90日以内の再感染が稀であるため(既感染者は最強の免疫を誘導する)
・抗体療法の半減期は19~22日
完全消失は約90日と推定されるため
なお、海外においては
抗体療法当日 or 7日後にワクチン接種
という臨床試験が進行中だそうです。
結果はまだ先になります。
さて、抗体というと、抗体依存性感染増強(ADE)のリスクを懸念される方も多いと思います。
(過去記事のADEを読まれていない方は、そちらをまずご覧頂くと、理解しやすいかと思います。)
③ロナプリーブにおけるADEについて
各種実験において、ADEは認められなかったということです。
*但し、武漢株に対してのみ行われており、変異株に対しては行われていない
ADEは変異株に暴露すると生じる可能性がありましたね。
ですので、変異株によっては、ADEを起こす可能性は否定できないということです。
・ウイルス学者によると、ADEはマクロファージのFc受容体を介して生じることから
Fc受容体に何らかの改変を加えてあげるとADEを回避できる可能性が高まるそうです。
しかし、各種実験においてADEが起きないことを確認したため
ロナプリーブの抗体は2種類共に、Fc受容体の改変を加えていないということでした。
今後、ADEを生じる変異株が出てきた場合には、Fc受容体の改変操作は可能であろうとのことです。
・ADEは、スパイク蛋白のN末端(NTD)に対する抗体ができると生じやすいということでした。
ロナプリーブにおいては、スパイク蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)のみに結合する抗体を抽出したということで
ADEが生じないメカニズムになっていると推定されます。
実際、抽出した抗体を、NTDに結合するかどうか確認したところ、NTDには結合しなかったそうです。
第5波でロナプリーブを沢山扱った医師に聞いたところ、
特に重篤な有害事象はなく、安全に投与できているということでした。
まれに、アナフィラキシー、インフュージョンリアクション(急性輸液反応)、皮疹等があるとのこと
ただ、1バイアルで2人分、開封したら48時間以内に2人目を使用しなければならないため、
患者確保の問題があるということでした。
公表はされていませんが、1バイアル20~40万円と言われる高額な抗体療法。
現在のところは、国から全額補助が出ます。
最近、発症抑制(発症前予防投与)にも適応が通りましたが、そちらも全額補助が出ます。
ただ、今後補助なく保険診療になった場合、3割負担でも相当高額なので、
実質運用が難しくなるのではないかと
話していました。
また、抗体療法をしても、結局悪化して入院になる事例もあり
そもそも重症化する事例が少ないため
現場でもどの位効果があるのか評価するのは難しい様でした。
というわけで、よろしければ
薬剤師 北面雅行さんの記事もご参考ください。
絶対リスク減少と相対リスク減少については、
ワクチンの有効率を算出する時にも
問題視されていましたので、このような考え方も知っておいていいかと思います。
*入院しないと投与できないと記述されていますが、
現在では、外来や、有床診療所認定を取った宿泊施設等でも
投与可能になっています。
治療も日進月歩ですね。
コロナのおかげで、日々身体を大切にする方も増えたのではないでしょうか。
2020年は
受診患者さんが激減した年でした。
病院に行ってコロナをもらいたくないから
病院に行かなくて済むよう
早めに自分で何とかしようと
皆さん、自分で治しておられたのですね。
実際、日本は総死亡者が11年ぶりに減少しました。
自分の身体は自分で守ることが十分にできる。
時には医学、他者の力を借りながらも
誰もが自己治癒力を持って生まれていることに
気付くことができますように。
色々なことが起きますが
皆さんとのつながりを大切にしながら
自分達で、健やかな生活を送っていきましょう
本日も、最後まで読んで下さり、どうもありがとうございました。