※こっからが超重要

④『花束』が意味する所。歪み。


先程も申し上げたが『花束』の歌詞における男女の比率は、ハッキリ言っておかしい。

デュエットソングなら、こうはならなかったはずである。仮に『花束』の女性歌詞を女性が歌い、男性歌詞を男性が歌うという形で、無理やりデュエットしてみたらどうなるだろう。

どう考えても不平等である。
これでギャラが同じなら男性側から文句の一つも出そうなものだし、女性側も仕事した気にならないのではないか。

より不平等をわかりやすくする為、文字数を出してみた。

男性歌詞…445文字
女性歌詞…94文字

記号とかも含めたのでアレだが、ざっとこんなもん。
男性側の台詞が、女性側に比べて「約5倍」である。
よくもまぁこれで「男女掛け合いソング」だなどと言えたものだ(勝手に言ってるだけ)。

実を言うとここが、最初に述べた『得も言われぬ違和感』の正体……もしくはそれに近いものである。


要するに『花束』は歪んでいるのだ。
女性に対する認知が。


でもこれは別に、清水が歪んでいるとかいう話ではない。むしろ逆で、清水は、社会や世間に確かに存在する、目には見えにくいその『歪み』を極めて正確にキャッチし、わかる人にだけわかるように、自らの楽曲の歌詞へと織り交ぜているのだ。

『男女の掛け合い』のように見えて、その実、男性目線の一方的な押し付けだったりする。

「許してよ」と言えば許してもらえると思い込んでいる。

女性がうんうんと話を聞いてくれるのを良いことに、べらべらと自分勝手な思いの丈を押し付けていませんか?

不安がっている彼女に対し「んんどうかなぁ」とか「でもとりあえずは」とか、曖昧な言葉で済ませていませんか?

『花束』における「彼女の言葉」に対する「彼氏の返答」を見ていきましょう。

〜〜〜

彼女「どう思う?これから二人でやっていけると思う?(二人でやっていけるか不安)」

彼氏「んんどうかなぁ、でもとりあえずは一緒にいたいと思ってるけど(鼻ホジ)」

〜〜〜

アホか!!!

「んんどうかなぁ」って、なに??

「とりあえず」って、えっ、そんな軽い感じなん??

「思ってるけど」って、「けど」って、なに!!??

〜〜〜

彼女「そうだね(悲哀)。だけどさ、最後は私がフラれると思うな(頼む!否定してくれ!頼む!)」

彼氏「んんどうかなぁ、でもとりあえずは一緒にいてみようよ(耳ホジ)」

〜〜〜

ぶん殴りたくなった貴方は正しい。

彼女は不安なんです。二人でやっていけるか不安だし、最後はフラれちゃうんだろうなぁって心のどっかで思ってるんです。そう思わせているのは彼氏です。

彼氏が「んんどうかなぁ」しか言わないから……。

〜〜〜

彼女「浮気しても(するんだろうなぁ)言わないでよね。知らなければ悲しくはならないでしょ(諦観)」

彼氏「信用ないなぁ。僕は僕なりに真っ直ぐに君と向かい合いたいと思ってるよ」

〜〜〜

なんだろう……彼氏も悪い人ではないと思うんです。
むしろ、すごく正直な人なんです。
正直過ぎる人。馬鹿正直。正直なら罪は無いかというと、そんなことはない。

たぶん彼氏と彼女は付き合いたてですよね。もしくは同棲したてかな。
そんな、いちばん楽しいであろう時期にも関わらず、彼女はずっと「フラれる」ことや「浮気」されることを心配しているんです。彼女が心配症なだけでしょうか?

彼氏にこう言って欲しいのでは。
「僕は絶対に君をフッたりしないし、浮気なんか死んでもしないよ。二人でずっと幸せに生きていけるよ」と。

本心ではないかも知れない。それでも。

彼氏の「んんどうかなぁ」「でもとりあえずは」「思ってるけど」。これらは皆、純然たる本心なんです。
「真っ直ぐに君と向かい合いたいと思ってる」のも本心。だから悪い人ではない。

彼氏自身も『正直であること』を美徳と捉えているようです。

〜〜〜

今までの僕は
曲がったことばっかだった気がするんだよ
だからせめて君のとこには
真っ直ぐに真っ直ぐに走ってくよ

〜〜〜

うーん、ここだけ切り取ると完璧なラブソングですね。
どうやら彼は「真っ直ぐ」を美徳と考え、心から愛する彼女に対しても、常に「真っ直ぐ」であることを心掛けているようです。立派な姿勢ではありませんか。

でも、悲しいかな。必ずしも「真っ直ぐ」であることが幸せな日々をもたらしてくれるとは限りません。
「真っ直ぐ」であるが故に起きる悲劇もあれば、「真っ直ぐ」の上にあぐらをかき、何でも思ったことをそのまんま口に出す人もいます。貴方のことですよ彼氏さん。

彼女に対し「真っ直ぐ」であることと、自分の思ってることをそのまんまぶつけることは、イコールではないと思うんですよ。わかんないかな。

彼氏は本心から彼女のことが大好きで、甘い思い出を沢山作って、笑い合って生きていきたいと思っている。一方で、彼女をフることや、浮気をしてしまうことを「100%あり得ない」と否定することもできない。それが本心だから。彼女もそれを理解していて……。

彼氏は、彼女のことを「受容してくれる存在」だと、心のどこかで思っている。
自分の言うことを黙って聴いてくれる存在。謝れば許してくれるし、甘い気持ちを忘れなければ何も問題はない。本人が自覚していないのでハッキリと発言されることはないものの、言葉の端々からそういう、舐め腐った態度が感じ取れます。彼女はお前のママではない。



…………んで、『花束』というタイトルの意味である。ここまでの展開を踏まえれば、自ずと答えは見えてくる。

この『花束』という楽曲は、その歌詞は、

「初々しいカップルの掛け合いに見せかけた、馬鹿正直甘ったれ彼氏の一方的な美学と理想の押し付け」

である。
私がタイトルをつけるなら『滅びへの序曲』とか『斜陽』とか、そんな感じになりそうだが……。

『花束』というのは、美しいものである。
色とりどりに咲き誇る花々は、見る者の心を豊かにしてくれる。
愛しの彼女に、美しい『花束』をプレゼントする彼氏。その光景を想像してみよう。


わぁーすごーい、綺麗ねー、ありがとー。


……で?


花瓶に入れて、写真を撮って、インスタに載っけて、部屋に飾って……で?

その後は?

そう、『花束』というものは、あげる側はすごくロマンチックな気分に浸れて楽しいものだが、もらった側は意外と困るのである。処理に。

『花束』とは、男性から女性への、一方的な美学と理想の押し付けの『象徴』なのだ。

まして、この甘ったれ彼氏が自分で花の世話をするとも思えない。そう遠くない未来に枯れてしまうのだろう。花束も、二人の恋も。


⑤最後に。


私は清水依与吏が恐ろしくて仕方がない。
上記の全てを計算に入れて、5分足らずの楽曲に仕上げてみせて、ギター弾きながら歌いつつ、ちゃっかり売れている。
『高嶺の花子さん』もすごいし『そのドレスちょっと待った』とかは、もう、モロである。

天才だと思う。お前の前世、紀貫之だろ。

長々とお付き合い頂きありがとうございました。