- 監督:レニー・アブラハムソン 原作;エマ・ドナヒュー(脚本) 撮影:ダニー・コーエン 音楽:スティーブン・レニックス
- 出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、ウィリアム・H・メイシー、ショーン・ブリジャース、トム・マッカムス
ジャックが”世界”を見つめる
”世界”がジャックを見つめる
”世界”はジャックを受け入れる
ジャックは”世界”を受け入れるのか?
きわめて特殊な状況の物語なのに
あらゆる人々に当てはまる普遍の物語
凄まじいまでの瑞々しい感性の演技と映像
映画詩とも呼べる構成と語り口の見事さ
何度も胸が熱くなり震える、、涙がこぼれそうになる
長い髪をした男の子か女の子か判らない可愛い顔をしたジャックと呼ばれる子供
この性差が判らないというのはこの作品のテーマと密接な関係がある
それは無邪気さを伴った強さと同時に未熟さをあらわしているから
生まれてこの方、小さくてみすぼらしい”ルーム”といわれる小部屋の世界しか知らないジャックと母親の生活の丁寧な映像描写と
底に流れる不安な成り行き(サスペンス)に心が奪われ見入ってしまう
そしてついに
。。。。ちょっとネタばれ
初めてルームの天窓以外から青空を見つめたジャック、その感動がこちらにも伝わってきて心が震えた
警官との会話ではじめて母親以外の人間と話すジャック、その健気な姿に心が熱くなってしまう
ジャックの”ルーム”での無邪気な溌剌さと外界でのオズオズ感がシニカルで対照的だが、両方とも心を惹きつけてしまうほど繊細に描かれている
ルームには階段などないので、階段の上り下りさえおぼつかないジャック、だがそのおぼつかない足取りで、おずおずと一歩一歩現実に足を踏み出そうとする姿は不安でありながら健気で愛おしい
ジャックに対する家族のさりげない優しさにも温かみを覚える
ジャックは罪が生み出したイノセントな子供だ
癒しと痛みを併せ持ったジャック
だがジャックは、恐れながらも前へ進む
ジャックは髪を切る、母の心を救う為に
そのとき、ジャックの性別がはっきりする
無菌状態でイノセントである強さから人を守る強さへ
苦くも愛おしい”もの”達との別れは、やがて来る辛い時をも乗り越える強さを持つことになる
。。。。ネタばれ」ここまで
別れと成長のテーマをジャックを中心とした視点で丁寧に瑞々しく繊細に描き、しかも優しげでありながらドラマチックな音楽とともにサスペンスフルで目が離せない!
ジャックが初めて直接青空を見たときの驚きで見開かれた瞳
眩しいほどにキラキラと輝く外の世界の美しさ!
その映像は美しい世界に生まれた幸せを感じずにはいられない
ジャックのその瞳はずっと忘れられない、忘れたくない
では!