というわけで、お世話になった田舎の温泉病院を出て、
県庁所在地の前橋の総合病院に行くことを決意します。
そして面接のときに「私は子供が好きなので、小児科に行けたら嬉しい」と伝えます。
そして、そのとき一緒に面接を受けた友達は「自分は外科を学びたいです」と伝えます。
ふたを開けてみると小児科に行きたいと言っていた私が「手術室」
外科を学びたいと言っていた彼女は「小児科」に配属になります。
友達は所属先で「小児科に来たかったんでしょ?」と聞かれたそうです。
それ、私ですけど…ひょんなことから全く想像もしていなかった手術室に配属されます。
それまで年上の人に愛されてきた私でしたが、スタッフとの人間関係を作るのは苦手でした。
というのは、
自分より上の人に喜ばれることは学んだのですが、
自分と同じ一の人と上手にやってくということをしてきてなかったんですね、私。
友達関係を築くことが難しかった私には、
同僚関係をうまく作るの、壁が高かったんです。
なんだかみんなに馬鹿にされてるとか勝手に思っちゃうとこがあったこと、
また、遠くでこそこそ話されると私の悪口を言われているんだと感じてしまう事
周りの目が気になっちゃうこと
などなどが
問題を大きくしていきました。
病棟にいたときは、
スタッフ間で何かあっても患者さんによって癒されたりしてました。
でも手術室は医者と看護師しかいません。
手術を成功させるために、どれだけ良い環境を作れるかが重要でした。
だから術式はもちろん
Drによって異なる手術の手順をおぼえたり、
使う器具たちを覚えたり、
手術がスムーズに進む努力をしていくようになります。
手術室は患者さんの名前より「術式」と「術名」が記憶に残ります。
「○○さんの手術」というより「横行結腸がんのあの人」といった方が伝わりやすいのです。
それだけ手術に集中しているからです。
そこで私は
手術の名前、流れを覚え、
今進行している手術で次は何が必要
医者が何を求めているか
を考え、行動するという訓練を受けました。
病棟は自分の受け持った部屋のケアを自分で管理していきます。
手術室は手術がうまくいくことが一番の目的なので、術者がスムーズに手術を行える事が最優先です。
ですから関与するスタッフは手術がスムーズに進むようにチームで最善を尽くします。
どちらかいうと個人主義でやってきてしまった私が
最高に密なチームワークが必要とされる場所に来てしまったのです。
病棟ももちろんチームを組みますが、
病棟とは違うチームワークが手術室にはありました。
密です。
超密です。
ここでの経験は私にとって貴重なものとなりました。
出来て当たり前、できなければ大問題という世界でした。
周りからの評価や周りの目を気にして
ただ黙々と仕事をこなすのは
私にとって苦痛でした。
仕事ができないというレッテルを人にも自分にも貼られた私は
病棟へ移りたいという思いと
辞めてしまいたいという思いにさいなまれていました。
そんな時にプリセプターという新人教育の役割を頂き、
新卒の新人を育てることになります。
兄弟が多かった私は、下の子の面倒を見るのは割と好きで、
その教え子が従順で純粋で、素直だったので、
その子の成長が楽しく、嬉しく、
その子が育つまではやめまいと手術室にとどまります。
今思うと、私は
長女
いじめられっ子だったので、見下されるのが大嫌い
ということもあってか、
助けを求めたり、人に甘えたりするのがとても苦手でした。
(まぁ、今も苦手ですが)
それゆえ一人でどうにかしようとして
事が大きくなって
迷惑をかけるというパターンが多くありました。
私が「こいつ仕事できない」「任せられない」と思われる原因が
何かあっても言ってくれない というところにあったかもしれないと今は思います。
そんなこと言ったら馬鹿にされる、見下されるという恐怖感がいつもありました。
だれかを信じて頼るということが上手に出来ませんでした。
スタッフの方はそれぞれ個性がありつつも一人ひとりみんないい人ばかりでした。
ただ、私のメンタルが伴っていませんでした。
そしてその子が一通り仕事を覚えた手術室勤務6年目に、
手術室を離れることを決意しました。