いつも自分のブログでは、ライブのセットリスト書いたり、ライブの感想を書いたりしているのですが、今回はとあるアルバムのライナーノーツ的なものを書いてみたいと思います。
ただ自分は音楽をやっている人間でもなければ、どういうものがライナーノーツになるのかよくわからない状態で書いていますので、「自分だったらこんなふうに書いてみた」という視点で見ていただけますと幸いです。
2024年2月14日にリリースされた、TEAM SHACHIの「笑う門には服着る」です。服着る(ふくきる)ではなく「ふくきたる」です。確かに、様々な服(=楽曲)を着るというニュアンスも含んでいるようですが、実は自主レーベルに移行して初めてのフルアルバムとなります。
最初に感想のようなものを書いてしまうと、どれも個性的でお互いが被ることなく、バラエティに富んでいるので、どれかしら自分に刺さる楽曲があるんじゃないかと思っています。以下収録順にご紹介していきます。
M1 Voyage
作詞作曲:沖 聡次郎 編曲:沖 聡次郎
「今回のアルバムは、この11曲でいこうと思います。この中で1曲目はどれにしましょう?」と聞かれたとしたら、間違いなくこの曲が選ばれると思います。
曲の雰囲気もそうだし、歌詞の内容もそう。大海原に出るかのように、このアルバムの、TEAM SHACHIの新たな船出を後押しするような1曲になっていると思います。
現在開催中のツアー(沸かせよ乙女ツアー)で、1曲目に披露されていることからもそれが伺えます。(初披露は2024年1月の宮城公演から)
また、他の曲に比べて癖が少ない分、どんな方でもスッと入っていけるんじゃないかと思います。
ライブ中ではVサインをして腕を掲げる場面を頻繁に見かけると思います。そんな景色をアニメ「ONE PIECE」に例えた人がいました。確かにその辺は意識しているんじゃないかと自分も思います。
M2 おとなりさん
作詞作曲:ヤマモトショウ 編曲:ヤマモトショウ
既出のインタビューでも言われていたように、TEAM SHACHIとしては珍しく、可愛さを前面に出した楽曲になっています。
今までTEAM SHACHIに可愛い楽曲が無かった訳では無いのですが、歌唱方法や振り付け、勿論衣装にも、これだけ可愛さに振り切ったのは珍しいと思います。特に歌唱方法は。
時にソフトに、時にあざとく、ちょっぴり怒ってみたり…まるで彼女と一緒に居るような感覚に陥ることができる…かもしれません。
ちなみにこの曲は、開催中のツアーで必ず撮影タイムになっていることから、一部カメコさんの間ではこの曲のイントロがかかると、カメラのファインダーを覗かずにはいられない状態になっているとかいないとか。
M3 愛のニルバーナ
作詞作曲:浅野尚志 編曲:浅野尚志
「抱きしめアンセム」「乙女受験戦争」等、これまでに数多くTEAM SHACHIの楽曲を手掛けてきた通称「浅野くん」の新曲は、ゴリゴリのアイドルソングでした。
ツアー初日、初披露されて最初のイントロ数秒で既にウリャオイのコールが生まれ、サビでは誰が音頭をとったわけでもなく、アイドルソング特有のコールが発生したことで、メンバーが驚愕するという出来事がありました。
アゲアゲなアイドルソングが好きな人には、きっと刺さると思います。テーマはズバリ「愛」です。意外に今までTEAM SHACHIには無かったジャンルの曲だと思います。アイドルフェスで披露すると、結構刺さってくれるヲタクがいるんじゃないかな。
曲の途中に「シャチって言ったらライブだね」と言い出すのも、斬新で浅野曲らしいと思いました。
M4 沸き曲
作詞作曲:藤田卓也 編曲:藤田卓也
2020年、本格的に世の中がコロナ禍の波に飲まれていく中、TEAM SHACHIの楽曲もその影響を受けて、コールありきから振りコピや魅せるための楽曲へと舵をとっていきました。それと同時に、ライブでの声出しも制限されていきました。
やがてコロナの波も少しずつ落ち着き始めたことで、少しずつライブでも声出しが解禁となりましたが、コロナ禍当初に作られた楽曲にコールを充てることは、並大抵のことではありませんでした。
そんなメンバーもタフ民も悶々とした状況下で、満を持して生まれたのが「沸き曲」でした。
この楽曲の初披露は2023年10月、彼女たちが所属するスターダストプラネットのメンバーが一同に集まるフェスが、横浜アリーナで開催されました。ルールとして「必ず新曲を1曲はやること」が掲げられ、多くのグループがそれぞれの新曲を披露する中、唯一大型スクリーンに歌詞が映し出されたことで、タフ民だけでなくそれ以外のファンもストレートに新曲として披露された沸き曲を楽しむことができました。
終演後のSNSでも「シャチの新曲が一番良かった」と称賛する反応を多く見ることができたことからも、それが伝わると思います。
また「沸き曲」に関しては一般的にも、TikTokで自分たちの素性を隠して街中で急に踊り出すというシリーズを展開し、横アリでの沸き曲披露で初めて素性を明かしたことでも話題となりました。
とにかく沸き上がることに特化した曲。終始アップテンポな曲調はもちろんのこと、ダイナミックな振り付け、声を出しやすいコール。それでいてチームの中でリードボーカル的な立ち位置の咲良菜緒のパートが、なんと中盤の3択問題の出題だけという使い方。(そもそも曲中にクイズを出してくるとか聞いたことない)歌詞にもあるように、曲の長さは短いものの、その中にエンターテイメントを凝縮した1曲になっています。
開催中のツアーを通じて「沸き曲」は日々進化を続けており、特にラストのWAWAWAI…の箇所では、タフ民の割れんばかりのコール(というか、もはや叫び)を体感することができると思います。
M5 FANTASTIC MIRAI
作詞:永井葉子(SCRAMBLES)作曲:松隈ケンタ 編曲:SCRAMBLES
今回のアルバムのリリースと収録曲が相次いで発表された中、唯一開催中のツアー(2024年2月16日時点)で披露されていないのがこの曲です。
作曲はBiSHなどの有名グループのプロデュースを手がけた松隈ケンタ氏。実はこの楽曲以前に、彼のプロデュースによるEPもリリースされていたため、タフ民からの期待値も高まっていました。(松隈氏に関しては後述の「勲章」で改めて)
アルバムを手に取り、初めて聞いたタフ民からは、予想通り絶賛の嵐。「絶対にライブに合う」「とんでもない隠し球を持っていた」「ヘドバンがしたい」等々。
出だしからロック臭漂うと思いきや、そこから一気に駆け抜ける疾走感、聴く人の魂を揺さぶる音色が次々に流れると共に、彼女たち一人ひとりの個性が引き立つような歌声に、思わず耳を傾けずにはいられなくなるでしょう。
しかし、なぜここまでタフ民に絶賛されることになったのか、正直私の中では初見で聞いた限りでは疑問もありました。
そんな疑問も、実際繰り返し楽曲を聴くのと同時に、仕事で楽曲を聴かなかった時に脳内で再生された時に気付いたのです。
あれ、これスタダボ(ザ・スターダストボウリング)じゃね?
確かにイントロやアウトロ、更にはサビの箇所までスタダボのメロディラインにとても似通っていました。実際にFANTASTIC MIRAIを聞いた後、スタダボを改めて聞いてみてください。
スタダボは実際に旧体制(チームしゃちほこ)からの人気曲であり、リクエストライブをすれば必ず上位に食い込んでくることもあり、タフ民だけでなく、しゃちほこ時代からのファンにも今回の曲は刺さるのではないでしょうか。
ただ、この2曲には決定的な違いがあります。スタダボがリリースされた時には彼女たちはデビュー間もない学生で「まだまだ未熟な部分があるけど頑張ります!」的な、ちょっとコミカルな要素も含まれていると思います。コールもありますが、これはどちらかといえば、自然発生的に生まれたものでした。
しかしFANTASTIC MIRAIに関しては、歌詞も含めて完全にロックに振り切っています。スタダボにあった語りも無く、ライブで一緒にコールをして欲しいと意図する箇所も含まれています。様々な経験を経て洗練された彼女たちが、タイトルの通りファンタスティックな未来に向けて、叫び・突き進んでいく姿が映し出されています。
つまりFANTASTIC MIRAIは、進化したスタダボであり、これが多くのタフ民に絶賛された理由だと思われます。
松隈氏がこの楽曲にインスパイアされたかどうかは分かりませんが、間違いなくライブでの人気曲となる1曲が生まれたことは確かです。
ちなみに最後の叫びは、おっとりボイスでお馴染みの秋本帆華が担当しています。
M6 舞頂破
作詞作曲:永澤和真 編曲:永澤和真
TEAM SHACHIとして改名後、彼女たちが自主レーベルを立ち上げて最初に披露された楽曲です。歌詞中の「ナンマイダー」に見られるように、非常に宗教的なニュアンスを含めながらも、極めてロックに攻めていくという、当時では珍しい楽曲でした。
正式名称は「舞の頂点を極めし時、私達は如何なる困難をも打ち破る」。同名のタイトルでEPもリリースされました。舞とは紛れもなく彼女たちのライブであり、これを極める(満席で埋める?)時、TEAM SHACHIにとって大きなステージに進む糧になることを願った楽曲といえます。
ちなみにこの舞頂破は、コロナ禍で声出しが制限されている時期にリリースされていますが、声出し解禁1発目の「dot yell fes」では、見事にコールありきに移行することができた、珍しい楽曲となります。
M7 勲章
作詞:松隈ケンタ・永井葉子(SCRAMBLES) 作曲:松隈ケンタ 編曲:SCRAMBLES
先にも書いたとおり、松隈ケンタ氏といえば、昨年惜しくも解散をした大型グループ「BiSH」のプロデュースをしたことで有名です。実はシャチと同じ事務所である「ばってん少女隊」等にも楽曲を提供していたことがあり、恐らくそこが縁で共に楽曲制作を行うことになったものと思われます。
そんな松隈氏プロデュースによるEPが「AWAiTHiNG BEAR」が2023年6月にリリースされました。勲章はそのEPに収録された1曲となります。
ライブでこの曲を紹介する時に必ず出てくるのが「失敗」という言葉です。彼女たちの中で成功とか失敗の基準は、恐らくライブでの動員数を指しているものと思われます。
ただ個人的には、その動員数を左右する背景にあたるもの、つまり彼女たちの活動そのものが込められている気がしてなりません。
私が本格的に彼女たちの活動を追い始めたのは、2015年頃からです。世間でもまた彼女たちの中でも前身グループのチームしゃちほこ=売れていたグループという印象があり、確かに2015年頃までは早朝もしくは前日から並ばないとお目当てのものが手に入らないという状況ではありました。
しかし既に何度か私のブログで書いておりますが、2016年頃からはメンバーの相次ぐ脱退や結成当初のチーフマネージャー交代を機に、徐々に動員数は減少していきました。
そして2018年には新体制として改名や楽曲の方向性も変えることで心機一転を図りましたが、それでもいわゆる彼女たちの中での「失敗」は続き、更に2020年のコロナ禍が追い打ちをかけたことで、彼女たち自身もその波に呑まれることになります。
それでも彼女たちは自らを「ポジティブグループ」と称することで決して心折れることなく、今そこでできる最大限のことをやり続け、今に至っています。ただそれは、ポジティブという言葉で自分たちの失敗を塗り潰しているだけのようにも、個人的には見えました。
そんな中で松隈氏と出会い、今回の楽曲を与えられ自分たちの失敗ともきちんと向き合うことで、これからのTEAM SHACHIはどうあるべきかを気づかせてくれたのだと思います。ライブ中の撮影タイムを増やしたのは、その一例かと思われます。
更に松隈氏は、この楽曲のラストで帆華ちゃんに今までにない歌唱方法を求めました。元々が独特の声質をしていることもあり、全体的に柔らかな印象を持つ彼女の歌声ですが、それを全て否定し、まるで彼女の中にある魂のようなものを引き出すかの如く、叫びにも近い声で歌う場面があります。
このパートの中に、この曲の全てが込められているといっても過言ではありません。
余談ですが、昨年城島高原で行われた松隈氏主宰のフェスに参加しました。その中で松隈氏が執筆された本を購入すると、松隈氏が本にサインを記入し、更に持参したカメラでの2ショット撮影、握手までしていただけるというイベントがありました。そこで松隈氏本人に「シャチに素晴らしい楽曲を提供してくださり、ありがとうございました!」と直接お礼が言えたことは、今でも私にとっての勲章になっています。
M8 NEO首都移転計画
作詞:Naoki Takada 作曲:Naoki Takada・Shintaro”Growth”Izutsu 編曲:Shintaro”Growth”Izutsu
毎年4月7日はしゃちほこの日と呼ばれる、チームしゃちほこ時代の名古屋城路上デビューを記念する日として、その前後で何かしらのイベントが行われていました。しかし昨年2023年は特段それは無く(厳密には無い訳ではなかったですが)、4月7日当日にサプライズで発表されたのが、この楽曲でした。
作曲者は、この楽曲の旧曲にあたる「首都移転計画」と同様SEAMO氏で、前回同様、歌詞の中に随所に名古屋にまつわるワードが含まれています。ただ前回とは違い、歌詞がもう少し現実味を帯びてきたというか、「名古屋を首都に移転するのは無理なんじゃね?」と嘲笑されつつ「逆に燃えてくる」と、理想と現実の狭間が垣間見えるのが面白いと思いました。
ただ前回の楽曲とは雰囲気がまるで違い、特にサビの部分では平成を飛び越え、昭和歌謡のようなノスタルジックな雰囲気に浸れるため、個人的にはこちらの方が好みだったりします。サビの振り付けも好みです。
ちなみに、発表当初はまだYouTubeでの配信のみでしたが、ライブでは頻繁にこの楽曲が披露されていたため、結構耳馴染のタフ民は多いと思われます。それもあり、今回は待望の音源収録となりました。
M9 江戸女
作詞作曲:川谷絵音 編曲:川谷絵音
川谷絵音といえば「ゲスの極み乙女。」「ジェニーハイ」など、必ず大型音楽フェスには顔を並べることで有名ですが、TEAM SHACHIにとっても「シャンプーハット」というタフ民だけでなく、チームしゃちほこ時代に推していた人でも、知らない人はいない超有名曲を提供したのが、他でもない川谷氏です。
川谷氏のインタビューによれば、実は江戸女の原曲にあたる曲は随分前に完成していたのですが、歌い手がなかなか見つからなかったそうで、今回TEAM SHACHIに白羽の矢が立ったと言われています。
この楽曲自体は前述した無頂破と同様、自主レーベル移行後に発表されたもので、当時は川谷氏のプロデュースということもあり、USENで頻繁にかかったことで、外出先の何気ない場所でこの曲を聞くことも多かったのではないでしょうか。
歌詞の中に「下着は付けない」というフレーズもあり、一瞬ドキッとさせるところも川谷節なのかと思いつつ、巧みなピアノの使い方などはシャチを知らない川谷ファンでもきっと共感してくれると思います。
M10 縁爛
作詞:MIMiNARI 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
開催中のツアー当初、この曲名が発表された時にどんな字を書くのかが全く分からず、大黒柚姫にライブ終演後のお見送り会で聞いても「難しい2文字」としか答えてくれなかったため、暫く謎のままになっていました。
しかし、ある時この楽曲を振り付けしたという方から不意にSNSに曲名が公表されたことから、正式な文字を把握することができました。
クレジットに関してはアルバムの詳細が出てからの発表となりましたが、「Rocket Queen feat.MCU」を作曲した本間昭光氏が今回も作曲をしています。個人的には「水曜どうでしょう」が好きだったりするので、そこでも楽曲提供をしている本間氏の楽曲は、自分に合っているのかと思います。実際にライブで何曲か新曲が披露された際、一番自分に刺さったのは縁爛でしたから。
縁爛に関しては歌詞自体もかなり和製というか、平安時代辺りに使われたであろうフレーズが込められているため、歌詞を見るとかなり難しいのですが、それを普通に歌い上げてしまうシャチのメンバーは、本当に歌唱の質が高いんだなあと思います。
https://x.com/shachi_staff/status/1757653854173475212?s=20
M11 だれかのために生きる今日を
作詞作曲:浦小雪 編曲:浦小雪・清水哲平
今回のアルバムを締めるのは「だれかのために生きる今日を」です。このアルバム、本当にどれも個性的というか濃厚すぎますよ。だから最後はデザートのようなお口直し的な楽曲で締めたいじゃないですか?
確かに他の楽曲に比べてゴリゴリでなければしっとりでもないですが、聞いて思わずほっこりするものって、人間にとって必要だと思うのです。この楽曲を聞いた後、きっとそんな気持ちにさせてくれると思います。
この楽曲についても前述の「愛のニルバーナ」同様、愛について歌っていますが、前者はどちらかといえば自己欲求の愛に対して、今回は人類愛かと思います。
今自分が存在していることが、誰かのためになっている。一見孤独だと感じていても、誰かがきっと見ているし、そこに実は愛が存在している…そんなメッセージ性の強い曲になっています。
開催中のツアーではスタンドマイクを前に、まるで手話のように身振り手振りをし、サビの締めではメンバーとタフ民お互いがハートを作るという演出?があります。ファンが居ないとTEAM SHACHIは成り立たないし、逆もまた同じで…お互いの存在=愛を確かめ合っているのだと思います。
いかがでしたでしょうか。このアルバムに関しては、聞きこめばまだまだ見えなかった発見があると思いますし、今回のライナーノーツを機に、少しでもTEAM SHACHIの魅力に触れていただけると、いちファンとして嬉しく思います。
各配信サイトで楽曲を聞くことができますので、是非あなたにとってのお気に入りの1曲を見つけてください。
ここまでご覧いただきまして、ありがとうございました。