第二十三章 2人だけの時間
静奈との初めての会話は、教科書を忘れた
ときだった。
俺 「あの時さぁ、たまたま席替えして
すぐで、小学校も違ってたから
ホント初めてしゃべったんだよね」
静奈「そう、席くっつけて、恥ずかしかった
の覚えてるもん。中学になってから
隣の子と離れる並びだったから、
周りの子の目が気になって、余計に」
俺 「そうそう、小学校までは、隣同し
くっついてたもんね。学校ちがった
けどそこはやっぱ一緒なんやな」
静奈「でも、あれからほとんど、喋った
記憶無いんだけど」
俺 「俺はさぁ、あの時から気になってたん
だと思うわ。だから意識しちゃってた んだろねw」
静奈「ホント!私は、まだその時は、まだ
だったかなーw。でも、覚えてない
だろうけど、それから、しばらくして
だったかな私、違うクラスの友達と
些細なことからケンカしちゃって
昼休み泣いてたことがあったの
その時さぁ、山部君気付いて、声かけ
てくれたの。その時は、何も言えなくて
無視したみたいになっちゃってたのに
帰り間際に、大丈夫?って心配して
くれたことがあったんだよ」
俺 「うそ!それ覚えてないわ。大西との
ことは、全部記憶にある自信あったん
だけどなぁー」
静奈「全部は、話さなかったけど、事情を
説明したら、どっちも悪くないんだから
お互いの気持ち伝えた方がいいよって
言ってくれて。それは、私も同じだった
んだけど、どうしていいか分からなくて
泣いちゃったんだよね」
俺 「そんなこと言ったっけ? 思いだせん
なー。めっちゃ、恥ずかしいわぁ」
静奈「そしたら、山部君、その子のクラスに
行って彼女を呼んで来てくれたの。
エッ!ってビックリしたんだけど
彼女の方が、先に謝ってくれて
私も、すぐ謝って仲直りすることが
出来たの。後から聞いたら、彼女の
クラスに急に山部君が来て、ちょっと
話があるみたいな感じで、外連れて
かれて、彼女に事情を説明して
一緒に私のとこに来たって言ってたよ」
俺 「その子って、誰だっけ?」
静奈「愛ちゃん。佐藤の愛ちゃん」
俺 「あー、彼女さぁ、小学校一緒で、
家が近所やったから、仲良かったん
だよね。彼女のことよく知ってたから
多分、行ったんやろな。性格もめっちゃ
いいやん、だからお互い勘違いで、
喧嘩別れするのもったいなかったんやと
思うけどなー」
静奈「彼女も言うてたw。でも、あの時、
仲直り出来たから、今でも友達で
居れるから、感謝してるって」
俺 「そんなこと、あったんかなーw
お節介な奴やなw、俺」
静奈「でも、それから私、山部くんのこと
気になり出した気がする。でも、
中々、話しかけたりも出来なかったし
2年でクラス離れてしまったから」
俺 「そう、クラス離れてショックやったんわ 覚えてるわー。休み時間とか、
覗きに行ってた気がするもんなw」
静奈「私も、その時チラチラ見てたかもw」
俺 「俺、そんなん知らんかったわー。
テニス部の練習とかも俺、のぞきに
行ってたの知ってる?」
静奈「うそー!それはわからなかったかも。
冷やかしの男子がよく来てたから、
気付かなかったのかも」
俺 「そん中の1人やったんやろなw。
最悪の印象やなw。でさぁ、
俺ら、三年の時決勝まで残って
大西らテニス部で応援来てくれてた
やんな」
静奈「そう、あの時必死に応援したもん。
こんなん言うの恥ずかしいけど
山部くんのだけ観てた気がする」
俺 「俺、大西が来てるの知って、嬉しくて
さあ、張り切ったもんなぁ。でも、
試合負けて、パッてスタンド見たら
姿無かったから、ショックやったわ」
静奈「最後笛なった時、山部君膝から崩れ
落ちたの見たら、泣きそうなって
飛び出しちゃったから」
俺 「マジで!俺あの時、何も出来なかった から悔し過ぎてもうて。大西も、俺の
こと観に来てくれたんや無かったん
だろーなって勝手に思い込んでたし」
静奈「部活のメンバーに気付かれるのが
恥ずかしくて」
俺 「そやったんや。カッコええたとこ
見せたかったんやけどなーw」
静奈「カッコ良かったよ。あれがホントに
サッカーを初めて観た試合だったけど
ドキドキしたもん。1点取られて
皆んなうつむいたとき、山部君皆んなの
背中叩いて、励ましてる姿、最高に
カッコ良かったよ」
俺 「もしさぁ、もしも俺が告白の仕方が
電話やなくて、2人で面と向かって
してたら、あの時、OKしてた?」
静奈「・・・。間違い無く、してた」
俺 「そっかー。恥ずかしくて、電話でしか 出来なかったのが悪かったんやなー。
最悪やなw」
静奈「そんなことないよ。私が、すぐに
折り返してでも、電話してたら
もっと違ってだと思う。親が側に いて慌てちゃったから。ホント、
最悪やね。ごめんなさい」
俺 「長谷川の言う通りやったなw。
アイツさぁ、クラスの女子の相談役
みたいで、いっつも恋愛相談乗ってる
らしいのよ、俺が、ポロッと、話したら
今すぐ電話しろって言うわけ、
電話じゃぁ、気持ちは、伝わらへんから、
会ってもう一回、告白してみろって
アドバイス受けて、こうなっちゃったん
だよね。感謝せなあかんな」
静奈「でも、ホントよね。長谷川君のおかげ
かも。今度あったら、お礼言わないとね すっごい山部君のこと褒めてたよ、
ええ奴やから、宜しくって」
俺 「そんなん言うてた?アイツが?
信じられんけどwww」
静奈「もう、だいぶ時間たっちゃったね」
俺 「ほんまやな。暗くなってきてもうてる
やん。そろそろ帰ろか」
周りのカップルも、ほとんど居なくなってた
俺たちだけになった公園は、俺に、少しだけの
勇気をくれた気がした
先に立ち上がった俺は、静奈にそっと手を
差し出した。静奈の細い冷たい手が触れた
瞬間にギュッと握り締めた。細い指に
女性らしさを感じた。お互いの指を絡み
合わせる様に繋いだ。彼女の手のひらに
小さいなマメがあるのが分かった。
少しだけど、距離が縮まった気がした