今日は少し空想にふけってみた


世界のどこかに、「喜ばせごっこの国」と呼ばれる場所があった。

その国では、人々は朝起きるとまず、誰かの幸せをひとつ思い浮かべる。
「今日は誰を喜ばせようかな?」
それが一日の始まりの合図だった。


子ども達は学校へ行く前に、家族のために小さなメモを残す。

「おはよう。今日もがんばってね!」
そんな一言が、家の中をふわりと明るくする。

大人たちは仕事へ向かう途中、見知らぬ人にそっと道を譲る。
「どうぞ」
その声は、春の風のように柔らかい。


この国では、誰かの喜びが自分の喜びになる。
だから、人を傷つける理由が見つからない。
怒りや憎しみは、いつの間にか影のように薄れていった。



国の広場には、ひとつの石碑が立っている。
そこには、やなせたかし先生の言葉が刻まれていた。

「人の一生は、喜ばせごっこだ。」


この言葉は、国の人々にとって“法律”よりも大切な指針だった。
誰かを喜ばせることは義務ではなく、
「そのほうが気持ちいいから」という、自然な選択だった。



この国にも警察署はある。
けれど、警察官たちはいつも暇そうにしていた。

「今日も事件ゼロか」
「うん、昨日もゼロだったよ」

彼らは犯罪を取り締まる代わりに、
迷子の子どもを家まで送り届けたり、
お年寄りの荷物を運んだりしていた。

「平和って、こういうことなんだな」
警察官のひとりが、空を見上げてつぶやく。

空はいつも、どこまでも澄んでいた。



この国の秘密は、とても単純だった。

誰かが優しくすると、
その優しさを受け取った人が、また別の誰かに優しくする。
それが連鎖して、国全体が温かくなっていった。


優しさは、火種のように広がる。
けれど、燃やすのに薪はいらない。
必要なのは、ほんの少しの想像力だけ。

「この人は、どんな気持ちだろう!」
「どうしたら笑ってくれるかな?」

その想像が、世界を変えていった。



この物語は、遠い国の話のように聞こえるかもしれない。
けれど、本当は——
あなたの心の中にも、この国の入口はある。

今日、誰かをひとり喜ばせるだけで、
あなたの周りの世界は少し変わる。
その変化は、やがて誰かの心を温め、
さらに別の誰かへと広がっていく。


喜ばせごっこの国は、
どこかにあるのではなく、
あなたの行動から始まる未来なのかもしれない。