霧雨と氷雨 

 

 主人公は、病室の窓から眺める景色に心を奪われていました。彼はずっと病気で、外の世界を知る手段として窓が重要な存在となっていました。特に彼が愛したのは、霧雨や氷雨の日の景色でした。

 

 霧雨の日には、軽やかな霧が林や庭を包み込み、空気中に微かな光を散りばめていました。枝に付いた霧のしずくがきらきらと輝き、静かな美しさを漂わせていました。主人公はこの景色を見ると、心が穏やかになり、病気や入院生活の辛さを忘れることができました。

 

 一方、氷雨の日は少し違っていました。枝や葉に氷が張り付き、まるで銀世界のように輝いていました。景色は冷たく、硬い印象を与えましたが、それでも主人公には美しさがありました。彼は氷の美しさを感じ取り、雨が降る度に自然の神秘を垣間見ることができました。

 

 主人公は窓から見る景色を通じて、自然の美しさや命の尊さを感じ取りました。病気に負けずに生きる勇気を与えられ、いつか窓の外に出て、その美しい景色を自分の足で歩きたいと強く願うようになりました。

 

 ある日、主人公の病状が急変しました。医師たちは手立てがなく、主人公の命が危ないと告げました。主人公は窓からの景色を最後に見ることを決意しました。

 ある霧雨の日、主人公は窓辺に座り、外の景色を見つめました。霧が立ち込め、やわらかな光が病院の庭を照らしていました。主人公はその美しさに感動し、涙がこぼれました。窓越しに見る景色がこれほどまでに美しいとは、彼は初めて気づいたのです。

 氷雨の日も同様でした。枝や葉に張り付いた氷が、まるでダイヤモンドのように輝いていました。主人公はその美しさに心を奪われ、生きることの尊さを再確認しました。彼は窓越しに見る景色が、自分の心に深い感動と勇気を与えてくれたことを知りました。

 そして、主人公は静かに息を引き取りました。しかし、彼の心は窓からの景色と共に永遠に生き続けるでしょう。主人公は自然の美しさを通じて、生命の尊さや美しさを知り、最期までその美しい景色を心に刻み続けました。

 

霧雨

 

         氷雨