人間は白昼夢を見ることがあるという。子供のころ、小学校で授業を受けながら、顔は先生や黒板を見ていたが、頭の中では自由に自分の世界観で、全然違うことを考えていたということはなかっただろうか?。ある心理学者はこれを「子供の宇宙」と言っていた。成長するにつれ白昼夢を見ることは少なるなるというが・・・。
朝日が窓から差し込む中、男は目を覚ました。しかし、目の前にいるのは見知らぬ女性だった。彼は慌てて周囲を見回したが、どこにいるのか全く分からない場所だった。
「ここはどこですか?」男は戸惑いながら女性に尋ねた。
女性は微笑みながら答えた。「ここはあなたの住んでいた家ですよ。」
男は混乱していた。自分はどうしてこんな場所にいるのか、なぜその女性が自分のことを知っているのか。頭の中はまるでパズルのように散らかっていた。彼は必死に思い出そうとしたが、思い出せない。
「自分は会社に行くために家を出て、電車に乗った…はずだ。でも、それからの記憶がないんです。」
男の言葉を聞いて、女性は同情的な表情で彼を見つめた。「大丈夫、ゆっくり思い出すことができると思います。」
男は自分の頭の中をひたすら探し続けたが、どうしても記憶の断片すら浮かび上がらなかった。自分が誰で、どこに住んでいて、どんな生活をしていたのかすべてが闇の中に消えてしまった。
「なぜこんなことになったんだろう?」男はつぶやいた。
女性はそっと男の手を取り、「少しずつ思い出すことができるかもしれませんよ。焦らないでください。」
時間が経つにつれて、男は自分がどんな人間だったのか、何をしていたのかについての些細な記憶が戻ってきた。それでもまだ全体像は不完全だったが、少しずつ自分の人生のパズルが組み上がっていくのを感じた。
数日後、男は自分が疲れからか長時間眠ってしまったことを知った。医者の診断によれば、特別な異常はなく、疲れが原因だったようだ。男は安心したが、自分の消えた記憶についてはまだ謎が残っていた。
やがて男は、日常生活に戻りつつあった。新聞を読んだり、食事を楽しんだりしながら、少しずつ自分の過去を思い出していった。そしてある日、自分が働いていた会社のデスクに座っている自分を見つけた。
隣にいた女性が微笑みながら言った。「ずいぶんぐっすり眠っていましたね。」
男は笑顔で頷いた。会社での仕事や同僚たちの顔が、だんだんと親しみ深く感じられるようになっていた。失われていた記憶が戻った喜びと、新しい人間関係が育まれていく幸福感が彼の心を満たしていた。
彼は自分の過去には謎が残ることもあるかもしれないが、今を大切にすることを決意した。過去の一片一片が、未来の一歩へと繋がっていくことを感じながら。
