なぜ男は女を求め、女は男を求めるのか?愛の神エロスとは何なのか?悲劇詩人アガトンの優勝を祝う飲み会に集まったソクラテスほか6人の才人たちが、即席でエロスを賛美する演説を披瀝しあう。プラトン哲学の神髄ともいうべきイデア論の思想が論じられる対話篇の最高傑作。
内容「BOOK」データベースより
西洋哲学の源流を築いたプラトン(紀元前427年~紀元前347年)、師ソクラテスや当時の名だたる哲学名士達によるエロス談義を描いた哲学対話物語が「饗宴」、難解至極な哲学考察を会話調で楽しんで読める一冊、今を生きている言葉で再現する光文社新訳文庫で生まれ変わり一層読みやすい一冊。
哲学は難しい、巷には哲学書を解説する書物が溢れかえっている、それを読んでもよく解らない、そんな人にこそ読んで欲しい一冊といえるのではないでしょうか?プラトンという万人が聞いたことのある有名哲学者その人の作品である「饗宴」、哲学書としてではなく一般物語として読んで欲しいとの前書きのコンセプトの通りの一冊で非常に読みやすい仕上がりとなっています。主流は“エロス”に対して各々の哲学者が“エロス”を賛美する事を条件に様々な解釈を披露しあう物語なのですが、まず哲学用語が“エロス”ぐらいしか登場しない点が読者に優しく、また賛美というプラスのイメージで語られる事も好印象を与えていると言えます。ほぼ全編が会話調なのも読者には優しく理解し易くてグッドです。題名通り飲食の一席での哲学談義ですので、まるで哲学者が飲み屋に集まってワイワイ騒いでいる雰囲気って所でしょうか。肩の力を抜いて読める哲学書。さて、“エロス”=愛を語る物語って事で俄然興味の沸くテーマが主軸となっているのですが、注釈や訳者まえがき・あとがきに記された通り、現代の男女価値観や社会通念からはかけ離れている紀元前当時独特の愛を根底に物語が構成されている点だけ注意が必要です、それは“少年愛”と呼ばれる成人男性と未成年少年との親密なる愛♪一瞬聞くと現代でも存在する特殊性癖の一つなんじゃないだろうかと思ってしまいますが、当時のそれは男女の恋愛と同時並行的に行われ互いに尊重し牽制しあう愛情の一つとしてみなされていたものだそうです、詳しくは解説を・・・このように紀元前独特の恋愛観を基にして“エロス”を語り合っているので少しついていけないと感じる点もあるでしょう、しかしながら何かを対象に愛する気持ちを語っているという熱意だけは十二分に感じることが出来る作品なのでマイナス要素とまではいかないでしょう。性のありかたは常日頃話題にのぼり刻一刻とその価値を変遷しているものですが、この書物を読むことで本当に今あるスタンダードな価値観は後世にとってアブノーマルに映る事もあるんだなと感じる事ができます。それだけに、作中で語られる“エロス”=愛のニュアンスだけは今も伝わり少しも損なわれることなく感じることが出来るという神秘に胸を打たれる事でしょう。紀元前の物語が現代に甦り栄える、流石は著名な哲学者の書物。新訳も光る一冊。
光文社 (2013-09-10)
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