『ダイイング・アイ』 東野 圭吾 | ほんとなかよし

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だったらいいな・・・

記憶を一部喪失した雨村慎介は、自分が死亡事故を起こした過去を知らされる。なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう。事故の状況を調べる慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか、思い出せない。しかも、関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める…。


内容 「BOOK」データベースより


東野作品はどうしてこうも読者の感情を弄ぶ事が上手いのだろうか、帯にある“東野圭吾の描く悪い奴等”とはまさに的確表現で、登場人物の多くに不快感を感じさせられる事だろう、それは道徳や良心といった分野における嫌悪感に違いない。年間1万人の死者を生み出す交通事故を題材に被害者の無念と加害者たちの打算を痛烈に描いている、加害者の一人雨村慎介は過去の記憶・自身が引き起こしたとされる死亡交通事故の記憶を喪失する事から物語が開始されるのだが、事故の真相や記憶を追い求める事で複雑に絡み合った加害者の打算や被害者の無念、遺族の想いといったものが解き明かされていく事になる。また、「ダイイング・アイ」の題名通り、死に際の目が引き起こすオカルト的要素はホラー色が強く、ホラーミステリーと捉える事ができそうな作品である。人気作品を多く生み出す東野圭吾さんには珍しく、否定的な意見が多い作品のように思える。読者レビューはあまり読まないで自身の感想を書く私だけども内容検索などで嫌でも目に付いたレビューを見ると意外に酷評だった。本当に意外だ。確かに他の作品に見えるような美しい話ではない、死亡事故といった重い題材に加えて悪人を描くという加害者側の汚さや醜さを描いている作品であるので不愉快極まりない作品である事は当然である。また、途中に挿入される性描写に関する指摘も多く、過激だとか不要ではないかといった意見も多い。読み方は人それぞれ好きに読めば良いと思う。私はとても良い作品だと思った(普段は作品を面白いかどうかで判断するが、今回は良いと表現する)。まず、冒頭部分被害者視点が登場する以外は全て加害者側の視点中心で描かれた作品なのである、交通事故に限らず事件の被害者の無念といった意味でこれ以上の視点は無いだろうと思う。死人に口なし、死者の無念はどうやって晴らせば良いのか?本当にそう感じさせる作品である。私は読書中ずっと被害者の死が置きざりにされているなと感じ続けていた。それだけに少しオカルトめいた展開ではあるが、天罰的な終り方に不思議な爽快感を感じた読者も多かったのではないかと思う。また自身の刑量を他の犯罪刑量と比較して軽いなと本音を漏らす主人公の姿にゾっとしない人は自分の良心を改めてみる必要があるだろう。どこかの大陸から微小化学物質が飛んでくる事で健康被害の可能性があると言われれば戦々恐々するくせに我々は制度化され慣例化された交通事故に対する恐怖心のようなものは一切持ち合わせていない・・・オカルト的な展開は賛否両論分かれる所ではあるが、果たしてこの展開が無ければ物語になっただろうか?そうまでしなければ死亡交通事故を再認識出来ない程に我々には当たり前で意外でもなんでもない事になってしまったのではないか?その影で当事者は苦しみ無念の想いを感じているのではないだろうか?「ダイイング・アイ」が見つめるのは読者の良心のような気がする・・・深読みしすぎだろうか・・・

最後に、性的描写に関して・・・私は被害者の生きたいと願う執念の行動だと読みました。ネタバレになるといけませんが、被害者女性は生前子どもがいなかった既婚女性でした・・・そして性描写で登場する台詞には“妊娠する”“子を宿す”とある・・・これ以上に執念的な台詞はないでしょう?この台詞を読んだ時に背筋に走った寒気は半端ではなかった。たった一つの台詞や文章で読者の心を揺さぶる作品。一級品です。



ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11)
東野 圭吾
光文社 (2011-01-12)
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