『舟を編む』 三浦 しをん | ほんとなかよし

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玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。


内容紹介


第九回本屋大賞作品2013年4月13日映画化「舟を編む」。一冊の本で世相を語るのはやぶさかではないでしょうが、現代日本の不況下で職業に対する情熱や希望が失われつつあると言われているにも関わらず「舟を編む」が評価されるという事は素敵な事だし未来が明るくなる気分になる。職業と言う表現は適切ではないかもしれないが、主人公馬締は自らの職業・辞書編集を人生の目的以上の天命として文字通り人生を賭して手掛ける、馬締の周囲には自然と人が集まり、知らず知らずの内に皆が同じ方向へと歩みだすのである。特殊で奇怪な集団の物語ではあるが、無性に仲間になりたくなる一冊です。

まずキャラが立っています、主人公馬締はその名の通り“マジメ”、実生活でこの人がいれば正直馴染めないだろうな・・・それだけに作中に登場する様々な馬締と出会う人々が味を引き立たせている!人間は、自分だけじゃなく第三者の評価によって磨かれるものなのだなと感じさせるぐらい周囲の空気を描くのが上手いと感じました。また辞書が題材なのも面白いポイント、読書をする上で辞書ほど大切でもあり不要なものは無い、辞書に書かれていない言葉の裏を読み解く必要がある作品なんかでは辞書は足枷にすらなりかねない・・・なんて思っていました。ですが「舟を編む」はまさに時代や思想で変わる言葉という海を渡ってゆく舟を彷彿とさせる辞書の存在がとっても愛おしくなってくるし、それを手掛ける人々の想いを知ってしまうと辞書ってなんて素晴らしい存在なんだと思い知らされる事になりました。きっと本書を読み自分に合った辞書を探してみようと考えた人は多いのではないでしょうか。それほど影響力のある作品。作品は各章毎に異なる人物の視点で描かれている作品ですが、一つだけ僕が意見を述べるならば最後の最後で主人公馬締の視点が入ったのが少し残念でした。馬締は独特の一風変わった存在として登場しており、元来のポテンシャルが高い事もさることながら才能を見出され次第に周囲に認められ指導者(船頭)的な存在になってゆく物語である。バトンを受け取り見事ゴールした姿に涙する物語であるのだが読者はあくまで観客の視点で物語を見たかった、そして奇人変人の馬締が何を想い何を考えていたのかはあくまで第三者の視点で語られる事で閉じてほしかったような気がする。といっても最初から馬締の心理や思考はつぶさに描かれていたので完全に第三者視点って訳でもないのだけれど・・・

最後に、時代の作品でしょうか、時の流れの中で変遷する言葉を強調する意味合いで男女の価値観に関する記述が登場し現代社会では一般的な価値観、例えば性同一性による男女の境界が変化しているなどといった話題が登場する一方で馬締の家庭環境がちょっぴり特殊にも拘らず意外にサクっと流して書かれている等の面もあり、深いんだか軽いんだか掴み様の無い印象を受けました。僕の感性が鈍いせいでしょうか・・・本当に不器用なんだけど一つの事に一生懸命な姿が良い!そんな直球勝負な作品であると思います。我武者羅や夢中と言った心を失ったと感じる人にこそオススメしたい一冊。


舟を編む
舟を編む
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三浦 しをん
光文社
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