#みんなはダメだって言うけど自分は良かった映画『世界崩壊の序曲』 | 戯画日誌

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キネマ旬報でやっていた連載を受け継ぎつつ、アニメーションに限らず映画全般、書きたくなったものを書いていこうと思います。

#みんなはダメだって言うけど自分は良かった映画

『世界崩壊の序曲』

『スウォーム』『ポセイドン・アドベンチャー2』と、映画プロデューサーとしての崩壊の序曲を奏で続けてきた1970年代パニック映画の父アーウィン・アレンが、ついにその壊滅的決定打を放ってしまった忌まわしき超大作。

レジャー島の火山噴火を題材にしつつ、前半はオールスター・キャストにおもねたつまらない人間ドラマに終始し、後半ようやく噴火が始まってからも描写はモタモタ、結局溶岩でできた川の吊り橋を逃げのびるシーンが見せ場となるも、そのシーンすら今では「SASUKEのアトラクション」などと揶揄され、主演のポール・ニューマンは自身のキャリアから消したい映画とコメントするなど、どこをとってもいいとこなし。

『スウォーム』『ポセイドン・アドベンチャー2』と擁護してきた私も、さすがにこれだけはムムム……となり、しかしあの吊り橋シーンを「ドリフのコント」と蔑むのは、あまりにも大好きな『ジェット・ローラー・コースター』のジェームズ・ゴールドストーン監督(ポール・ニューマンとも佳作『レーサー』あり)らに対して悲しすぎる。

吊り橋シーンではバージェス・メルディスがニューマンを越える存在感を発揮しているし、また後に『ベストキッド』シリーズで名を馳せるパット・モリタの姿も。

そしてごく一部のマニアからは、ラロ・シフリンの音楽のサントラCD化が今なお切望されているほど!

時代は既に『スター・ウォーズ』『スーパーマン』『エイリアン』『スター・トレック』、日本でもヤマト、ガンダム、999とSFアニメ映画が大流行していた1980年代初頭、その波に乗りきれずにパニック映画を作り続け、結果として堕ちていったアーウィン・アレンこそは、映画界の栄枯盛衰を私たち映画ファンにまざまざと教えるとともに、それゆえに忘れられない存在となったのも確かなのでした。