戯画日誌/昭和後期から平成にかけてのアニメーション映画のスクリーンサイズに思うこと | 戯画日誌

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キネマ旬報でやっていた連載を受け継ぎつつ、アニメーションに限らず映画全般、書きたくなったものを書いていこうと思います。

今月から押井守監督作品『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』がAmazonのPrime Videoで配信されているが、それを見たファンのどなたかが「画角がスタンダードサイズではなくビスタサイズなのはおかしい」といったニュアンスのコメントをSNSに書き込んでいた。


それに対して押井監督と彼の作品群に精通している識者から「あの作品はスタンダードで作画撮影され、劇場公開時は上下にマスクをかけてビスタ上映し、ビデオソフトやテレビ放送時はマスクを外して放送しましたが、劇場公開のビスタサイズは押井監督の意向でもありました」といった返答がなされていた(書き込んだ人も納得してくれたようだ)。


かつてテレビモニターが4対3(即ちスタンダードに近いサイズ)だった時代の昭和後期から平成前期にかけてのアメリカ映画の多くは、上記のような方式でお披露目されることが多かった。


だから、テレビ放送でマスクが外されたスタンダード画面の上下に録音マイクや撮影レールが映っていたりするのを発見することも時折あった(つまり作り手は、マスクをかけたビスタで上映することを想定しながら撮影していたとみて良いと思う)。


などなど、それらは当時の映画ファンにとって常識とずっと思っていたが、実はそうでもなかったらしい。


また日本映画はアニメーション映画でこの方式を用いることが多く、だから劇場ではなくビデオソフトやテレビ放送で初めて『ビューティフル・ドリーマー』など当時のアニメーション映画を見た人たちの脳裏には、スタンダードサイズがオリジナルだとインプットされてしまっているのかもしれない。


ちなみに『劇場版宇宙戦艦ヤマト』や『劇場版あしたのジョー2』などテレビ・アニメ・シリーズの総集編的要素の強い映画は当然大元のサイズはスタンダードだが、劇場はビスタ・トリミング上映。

その上で『ヤマト』映像ソフトはDVDがビスタ、Blu-rayと4KUHDはスタンダード収録。『劇場版あしたのジョー2』4KUHDはビスタだが、Blu-ray画質のスタンダード版が特典収録されている。



個人的には劇場で成されたスクリーンサイズこそがオリジナルだと思いたいのだが(最近はI'MAXの台頭などで、それもあやふやになってきているが)、トリミング・ビスタよりもスタンダードのほうをオリジナルとみなしたいという人も最近は結構見かける(個人的にはどちらも見ることができれば一番良い)。


劇場版『銀河鉄道999』もスタンダードからビスタへトリミングしての上映で(りんたろう監督もビスタがオリジナルサイズと語っている)、ビデオやLDはマスクを外してスタンダード収録。そして現在プレミアがついている4KUHD初回版はどちらも収録という太っ腹であったが、これなら双方の意向に応えたものにはなっている。



ちょっとわからないのが外国映画のアルフレッド・ヒッチコック監督作品『サイコ』で、これはDVD、Blu-ray、4KUHDがトリミングビスタ、ビデオテープとLDはマスクを外したスタンダードで発売されているのだが、双方の構図を見比べてみるとヒッチコックの本来の意向はスタンダードサイズだったのではないか?と唱えるマニアも多く、そこで何とか高画質のスタンダード版4KなりBlu-rayなり出してほしいという声もよく聞くところだ。



果たして真相はいかに?ただ、値段がそれなりにはっていく4KUHDのような高画質映像ソフトならば、せめてそういった措置はしてほしいものである。