戯画日誌/2023年度勝手にアニメーション映画ベスト・テン邦画編 | 戯画日誌

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キネマ旬報でやっていた連載を受け継ぎつつ、アニメーションに限らず映画全般、書きたくなったものを書いていこうと思います。

現在(2024年2月半ば)、映画雑誌「キネマ旬報」にて2023年度の邦画・洋画ベスト・テンが発表されている。

 


私も選考委員として投票に参加しているのだが、自分自身のテンと集計された結果のテンとでは毎年大きな隔たりがあるマイノリティぶりで、今回の邦画に至っては1本もかぶってない!

 

まあ、どんなにマイノリティでも自分のテンには誇りと責任をもって選んでいるという自負があるので、どちらかといえば「ざまあみやがれ!」といった開き直り感もないわけではなく、いずれにしてもいろいろな人たちが選んださまざまなベスト・テン、それぞれの映画ファンに面白がっていただければ幸いに思う。

 

さて、実は私、昨年の初夏までおよそ13年「映画という名のアニメーション」「戯画日誌」というアニメーション映画を中心とした連載を同誌に書かせていただいていたのだがmそれまで長きにわたって月2回の発売から月刊誌になることを機に連載を終了することになった。

 

少し寂しさもありつつ(本当はそのベストテン発表号でちょうど還暦を迎えるので、その時に連載終了にしたかったのだが、まあそれは致し方ない)、実は毎年ベストテン発表号での連載では「勝手にアニメ映画ベスト・テン」なるものをやっていた。

 

キネマ旬報ベストテンは邦画と洋画、そして文化映画と3つのジャンルに分けられているが、いまだにアニメーション映画に特化したベスト・テンはない。

 

しかし現在、国産アニメーション映画だけでも毎年100本以上は作られているし、洋画も年々公開本数が増加している。

 

私は文化映画の選考委員ではないが、邦画と洋画で20本は好きな映画を選べるわけで、そこにアニメーション映画が10本加わればさらに多くの作品をアピールできる。

 

昨今、日本のアニメーション映画は本当に面白いものが多いし、ジャンルも多彩になってきた。興行としてもアニメーション映画がなければ映画館は成り立たないといっても過言ではないほどの昨今。しかし、映画マスコミのお偉いさん方の多くはその事実に興味の目を向けることもせずに今に至っている。

 

一方でアニメーション映画は今の若い映画ファンなどにごく普通に浸透しており、彼らの柔らかい感性と認識に、多くのマスコミは太刀打ちできなくなっているのが実情なのだ。

 

話が長くなったが、その「勝手にアニメ映画ベスト・テン」、連載が終了しているので今回は地震の邦画と洋画のベスト・テン選考理由の中に勝手に書かせてもらった。ただ、表記文字数のあまりにもの少なさゆえ、タイトルを挙げるだけで精一杯。

 

そこで今回はその1本1本の選考理由をざっと記させていいただくことにした。

 

●勝手にアニメ映画ベスト・テン」邦画編

 

⓵北極百貨店のコンシェルジュさん 



安定したすがすがしいクオリティ。正直2023年は突出した1本というものをほとんど見いだせなかったのだが、その分この作品の小品佳作としての味わいを大事にしたいと思った。

 

②鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 



2023年、実は突出した1本があるとしたら、この作品ではないかと思えるほどにエキサイトした。昭和30年代を舞台にした横溝正史シリーズさながらの日本の土着的闇の世界を、よくぞここまで描出できたもの! それでも2位にしてしまったのは、選んでいるときの気分の問題だけで、その日によってこれが1位になるときもある。

 

③BLUE GIANT



ジャズというものをここまで躍動的に描き得たアニメーション映画があっただろうか!顔出し俳優陣を声優に起用しているが、そこにも違和感なかったのはとにかく劇中の音という音にとことんこだわった結果の賜物だろう。

 

④アリスとテレスのまぼろし工場 

岡田磨里の監督第2作だが、前作より確実に演出の腕が上がっており、変化させてはいけない異世界の日常の中で淡々かつ悶々と生きる少年少女たちの思春期が見事に描出されている。結末なども此方の予想を大いに裏切るものだった。タイトルの意味だけ、劇中からうまく汲み取れなかったのは残念。

 

⑤グリッドマン ユニバース 

実写特撮シリーズを原作とするテレビアニメ『GRIDMAN』『DYNAZETION』のクロスオーバー作品だが、双方の世界観の融合が巧みになされており、各キャラのバランスも良好。さらには映画的ダイナミズムも大いに満喫できるという、もはや言うことなしのファン・サービス映画であった。

 

⑥映画「窓ぎわのトットちゃん」 

正直、見る前は斜に構えていたのだが、いざ鑑賞してみると、弱き者たちや少数派などマイノリティに対する眼差しの優しさ、一方では戦争も含む強権力に対する意見具申がエンタテインメントとして見事に語られていたことに驚いた。まさに世代の別を超えて見てもらいたい作品であった。

 

⑦金の国 水の国

一見良き感じの少女漫画チックな雰囲気の中、二国間の諍いといった現代的なテーマが巧みにまぶされた良作。ぽっちゃり王女と三白眼王子のバランスも楽しく、浜辺美波と賀来賢人の声も堅調であった。

 

⑧ガールズ&パンツァー 最終章 第4話

もっとスピードを上げて製作してくれないと、完結前に死んじゃうかもしれないガルパンおじさんがいっぱいいるぞ!(私のことだ。『スター・ウォーズ』だって完結を楽しみにしつつ死んでいった友人が数名いるのだ)正直今回は第3話より盛り上がりに欠けたというのが偽らざるところでもあったが、それでも早く次を見たい!という願いを込めてベスト・テン入り。

 

⑨推しの子Mother and Children 

テレビ・アニメーション・シリ-ズの第1話を映画館でかけたものだが、きちんと長編映画としての体裁が整っていたことに驚いた。この作品のみで十分に1本の映画として成立しているし、もちろんその後も見たくなる。現在『鬼滅の刃』などテレビアニメを映画館でかける風潮が増加しているが、こういう中身だったら大歓迎である。

 

⑩君たちはどう生きるか

作画などに関していうことはないが、宮崎駿監督作品はストーリーより作画を重視する傾向が強く、今回も初見では意味がよくわからないまま(結局3回見たが、2回目でようやくある程度理解できた)、しかしながら画の力はものすごいのでアレヨアレヨと見入ってしまった。毎度ラストが弱い宮崎映画の欠点も、今回はまあまあ回避できていたと思う。

 

ちょっと疲れてきたので、洋画編はまた次回に。