【途中までのあらすじ】

19年前に、人気絶頂のさなかで事故死したロックバンド「メアリー」の天才ギタリスト・作曲の鈴村竜之介（ベル）。

当時の週刊誌には、ドラッグの使用が死因だったのではないかという記事が掲載されていた。

しかし、コカイン所持で逮捕されたホテルの従業員、比嘉高雄の新たな証言によって、19年ぶりに、その死の真相を二人の刑事、警視庁捜査一課殺人犯捜査七係の伴奏（ばんかなで）巡査部長と沖縄県警の渡真利猛（とまりたけし）警部補が再捜査することとなった。

ベルが沖縄のリゾートホテルで泥酔し、部屋の浴槽で溺死した事故は、実は殺人事件だったのか、それともやっぱり事故死だったのか。

捜査線上で被疑者として浮上してきたのは、同じバンドの元メンバーでベース・ボーカル・作詞を担当していた木宮保（今はソロでブレイクしている）とオフィスメアリーの社長・マネージャーだった藤田治郎（現在は音楽評論家）。

元メアリーのギタリストの味本和弥（味本）とドラマーの辻定彦（サダ坊）、当時の関係者から聞き取りをしていく中で、ベルと保と治郎に関わりの深い寺田優子がキーパーソンとして浮き上がる。

メンバー同士の絆や才能への嫉妬、不仲、軋轢に加え、ドラッグ、酒、たばこ、女が狂騒の旋律とともに絡み合う。

寺田優子の子、寺田彩薫の父親は？

【感想】

音楽に魅せられ、紆余曲折を経て人気ロックバンドに成長したメアリーのメンバーとそれを支えた男たち、ベル死の真相を解き明かそうとする二人の刑事による群像劇であり、音楽ミステリー小説でもあると思いました。

イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』をはじめ、ビートルズ、クイーン、ZZトップ、チェッカーズ、オフコース、YMOなど、80〜90年代の懐かしい洋楽や邦楽のバンドが登場してきます。

音楽をテーマに、タイトルや歌詞に多義や暗喩がで隠されていることが新鮮でした。

男女の恋愛の記憶方法は異なり、男性はフォルダー別に分けて過去の思い出として残すが、女性は上書き保存するというのは一理あると、改めて思いました。

472ページある長編小説で、前半は展開が緩やかなため、読み進めるスピードもゆっくりとなってしまいましたが、後半は真相究明に向けた展開に惹き込まれ、読み応えがありました。

終わりの歌が聴こえる 本城雅人