>オリジナルフルアルバム

>タイトル:サンバースト

>アーティスト:The Birthday

>リリース日:2021年 7月 28日

>記事作成日:2023年 12月 8日






聴きました。


チバユウスケさん、逝去。

昨日はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『ギヤ・ブルーズ』の感想を書いて、そのサウンドのかっこよさに(今更ながら)シビレましたが…これまでのぼくは、TMGEよりもThe Birthdayのほうに親近感を持っていたんですよね。『ギヤ・ブルーズ』のほうに書いたとおり、少年時代のぼくはTMGEに、校舎裏のヤンキーに対するみたいなビビり感を持っていて(苦笑)。その点、イイ大人になってから聴いたThe Birthdayには、そういった類いの感情が無くなっていて。しかも、それこそ少年時代に大好きだったMy Little Loverの元メンバーであるフジイさんが加入したなんていうぼく好みのトピックもあったりして、バースデイはちょくちょく聴いていた。

でも、結果的に(アルバムとしては)遺作になってしまった本作は聴いていなかったので、この機会に“最新”“最終”のチバユウスケを確認しておこうと思った次第です。




『12月2日』

ラウド感はありつつも、大人の落ち着きも兼ね備えたオトナのロックサウンド。重厚感は、TMGEよりも数段強い(どっちが良いとか悪いとかいう話ではないです)。TMGEがスト缶のようなパンチを感じさせるとしたら、この曲(及びこのアルバム)はウィスキーのようなパンチ。


『息もできない』

なんとも言えない哀愁と感傷。これは本当に、年齢を重ねたからこそ醸し出せるものだと思う。年代物のワインのような、重厚感と芳醇さ。

サビで爆発する感情に、何だか胸が締め付けられる。


『月光』

兎にも角にも、リズム隊がいぶし銀。まろみのあるドラムスに、“落ち着いた奔放さ”のベース。白状しますが、ぼくはこれまで「メンバーが変わっても、チバさんがボーカルである限り“大枠”は一緒」くらいに思っている節が若干あったのですが…こうやって聴くと全然別物だよなぁ。どっちのバンドにも、全然異なる魅力がある。

薔薇の香りが似合う大人の雰囲気が魅力のバンドの、薔薇の香りが似合う大人の雰囲気が魅力のアルバムの中でも、最も薔薇の香りが似合う印象の曲。


『ラウドロックのキャデラックさ』

タイトルにもあるフレーズがリフレインして、なんだか頭から離れなくなる曲。

サビのメロディが物凄くセンチメンタルで、なんかしんみりしてしまう。


『レボルバー』

疾走感のあるロックチューン(いや、この人たちの曲はどれもが全部“ロックチューン”なんだけど)。

(多分フジイさん)のリードギターも勿論カッコいいんだけど、リズムギターの快感が凄い。これ、コピーしたら気持ちいいんだろうなぁ。もう何年も、触っても手入れしてもいないエレキを、久しぶりに引っ張り出してみたくすらなる。


『アンチェイン』

続いても、アップテンポに。ここまでの重厚感ある音&アレンジからは離れて、軽快でキャッチーなオケが新鮮。人懐っこいオケにメロディアスなボーカルライン…例えばちょっぴりハイロウズ辺りを想起する感じの、若々しさのある曲。


『晴れた午後』

メロウなスロウチューン…と思っていたら、急激に加速度を増していく。面白いな。

タイトルもそうだし、歌詞についても、なんとなく感傷的。文言の一つ一つを辞儀通りに解釈しようとすると「ん?」と思うんだけど、空気感とか気配みたいなところに注目すると、物凄いセンチメンタル。


『スイセンカ』

これはもう、まごう事なきメロウなミドルチューンだし、前曲以上にセンチメンタル。最新のチバさんは、こんなに哀愁に溢れるボーカリストに進化しておられたんですね。

(サウンドというよりも佇まい的に)硬質なロックンロールなんだけれども、ヒットチャート的なキャッチーさも併せ持っているバラード。


『ショートカットのあの娘』

やっぱり、ベースがカッコいい。この曲は、ベースをたっぷりと堪能出来る。もちろん、チバさんのボーカルもフジイさんのギターもキュウちゃんさんのドラムスも超絶カッコ良くはあるんだけど、でもこの曲はベースラインに耳が行っちゃいます。

ライブでは、さぞかし映えるんだろうなぁ。そんな、アッパーチューン。


『ギムレット』

語り。とにかく語りが印象的。「こういうスタイルの曲をやるんだなぁ」ってのが率直なところ。青い蝶のブローチのくだりをはじめ、歌詞のストーリーを追おうとすると意味がわかんなくなっちゃう部分はあるけど(笑)、そのあとの張り上げる「小さな愛だ!」をもって何故か猛烈に腑に落ちてしまい、続く「支離滅裂なのは百も承知さ」にて絶対的な肯定と同意を抱く。


『バタフライ』

メロディアス、かつメロウなロックバラード。

ラストチューン(つまり〆 =印象に残りやすい)の位置にあるから特にそう感じたのかもしれないけど…「これが今のこのバンドの“ど真ん中”なんだろうな」という感じがしました。“盛る”よりはシンプルに、“刺す”よりは“染み込ませる”ように。エモーショナルなメロディラインに、武骨だけど懐の深い言葉が乗って、演奏陣はここぞという所で魅せる。スルメのように、聴けば聴くほど味が出てくる曲。




そんな、計11曲。


メロディアスな曲が多いですね。派手さはないんだけど、印象深いフレーズが多い。TMGEは日常をぶっ飛ばすようなエネルギーに満ちていたけれども、The Birthdayには日常に寄り添うような優しさがある。ハードボイルドはハードボイルドなんだけど、違う世界のお話ではない。

どっちのバンドにも、それぞれの良さがあると思います。


改めて、R.I.P. チバユウスケ






お気に入りは、

#02 『息もできない』

#05 『レボルバー』

#06 『アンチェイン』

#08 『スイセンカ』

#09 『ショートカットのあの娘』

#10 『ギムレット』