>オリジナルフルアルバム

>タイトル:Tradition

>アーティスト:OAU

>リリース日:2023年 4月 12日

>記事作成日:2023年 6月 22日






聴きました!


CDと、DVD付きCDと、LPとでリリース。

…ぼくは人生で初めて、“新譜をLPで最初に聴く”という事をしましたよ。何とも贅沢な時間で、完全に酔いしれてしまいましたよ…ぼくのレコードプレイヤーもスピーカーも安物なので、配信音源を聴いたほうが断然音質は良かったですけどね笑 でも、そういう事じゃないんだよっ!!!笑




『Old Road』

深み?円熟味??…ズシンと来るパーカッションに、マーティンさんの凛とした歌声が映える。冒頭から、「あー、OAUだ!」って感じが凄い。土の匂いがする。大地にへばり付くような音(もちろん褒め言葉)。


『セラヴィ -c'est la vie-』

勇壮な雰囲気だった前曲とは対照的な、しなやかで優しくて柔らかい曲。TOSHI-LOWさんの歌声が、伸びやかに広がる。でも、「前曲とは対照的に」とは言いつつ、やはりこの曲もまた抜群の“OAU感”。


『夢の続きを』

ぼくがこのバンドを知った(そして好きになった)きっかけは、アルバム『FOLLOW THE DREAM』などに収録されている『夢の跡』だったんですが…無くなってしまったものを思い返すような切なさに胸を締め付けられた『夢の跡』に比べ、現在進行形で夢を追う溌剌とした躍動感のようなものを感じるこちらの曲。その2曲の差が、まんまバンドのスタンスのような気がして、面白かった(もう少し詳しく、後述します)。


『Time's a River』

ゴキゲンな曲ですね…といっても、もちろんヤバTのようなゴキゲンさとは違う(笑 もちろん、ヤバTのゴキゲンさも大好きですけどね)。ウッディでパーカッシブルな音に、言葉数多めのボーカルが乗って…イメージ的には、なんかちょっとウェスタンな感じっぽく思いました。


『世界は変わる』

最近の…バンド名が正式に“OAU”に変わった辺りからなのかな?の、あったかくて“静かにアツい”作風が、色濃く出ている曲。旅先で出会う見ず知らずの優しさのような、そんなあったかさ。見知らぬ土地で感じるような寂寞感や感傷みたいなものも曲の中から香って来つつ、でもそんな中で出会った人のほんのさりげない優しさみたいな温かみが、聴き手を包み込んでくれる感じ。漠然とだけど(そして直接的な歌詞の内容とは違うのだけれど)、そういうものを感じるんです。


『Homeward Bound』

動的な曲。ギターのカッティングがキレッキレで、跳ね回っとる。で、マーティンさんのバイオリンも、しなやかさを帯びつつ奔放さもあり。

そしてリズム隊は安定の貫禄。

このバンドの腕白(笑)な一面が、存分に楽しめる曲。


『Blackthorn's Jig』

ぼくが特に好きな感じの曲。ケルト音楽っぽい雰囲気というか、アイリッシュな感じというか…単に音楽のジャンルの話ではなく、アイルランド方面の酒場の光景みたいなものを想起する陽気さがいいんですよね。程々に気分が高くなる、そんなインスト曲。


『月だけが』

前曲の躍動感をそのままに、美しくも奔放なポップチューン。TOSHI-LOWさんの歌声がとても楽しげで、伸びやかで、奔放で…でもやっぱりほのかにセンチメンタルで。


『Whispers』

TOSHI-LOWさんのエモーショナルな歌声の次は、マーティンさんの繊細な歌声。この波状攻撃、なんと贅沢か。

オケ的にも、バイオリンが前に出ていて…このアルバムの中でも特に、マーティンさん要素が強いかもしれないですね。

小刻みなスネアと緩急の差が小気味良いウッドベースとの、リズム隊のアレンジも素敵。


『Family Tree』

OAUには珍しい、ロカビリーっぽい雰囲気の曲ですね。ギターにエレキのシャープさがあるからでしょうか。ツイスト踊りたくなる(踊れないけど 笑)。この感じも、悪くない。

OAUが鳴らすこの音が新鮮。ライブで聴いてみたいなぁ。


『Linden』

一気に、しっとりとした雰囲気のインストバラードへ。

アコギの音がどこまでも優しく、ベースの音にどこまでも深みがある。

“入り口”はセンチメンタルで物悲しげな印象を受けるんだけど、ある瞬間から凄く柔らかくてあったかくて優しい雰囲気に変わって…その経過が好き。不安で押しつぶされそうな深夜から、陽の光に安堵する明け方に至るまでのような曲。ぼくには、そう感じる。


『This Song -Planxty Irwin-』

あくまでクールなマーティンさんと、エモーショナルなTOSHI-LOWさん…メインボーカルはTOSHI-LOWさんですが、曲全体の雰囲気としてはスタイルの異なる2人のボーカリストの両方のテイストがうまくミックスされたもののように感じました。

3連のどっしりとしたリズムと、ボーカルの伸びやかな雰囲気が、鮮やかな対比。ぼくの思うフォルクローレって、この感じ。“大地と空”みたいな。


『Without You』

マーティンさんがメインボーカルの英詞曲なので、英語が全然なぼくには歌詞の意味は分からないのですが…曲タイトルから受けるイメージと、音を聴いて受けるイメージが今ひとつ一致せず…タイトルだけ見ると、切ない感じがするんだけど、アレンジはとても雄大で力強くて、活力がみなぎる雰囲気。どういうシチュエーションの『Without you』なのか、凄く気になってきた。


『懐かしい未来』

非常に情緒的で、感傷的で、メロウなバラードで〆。東洋的というか…多分バイオリンなんだと思うけど、二胡とか胡弓とかそんな感じの雰囲気に聴こえるストリングスが胸を締め付けます。割とここまで、聴き終えた後に前向きな気持ちになる曲が多かった印象なんですが、この曲には、なんとも切ない気持ちにさせられます。




そんな、計14曲。


『夢の続きを』の感想のところで少し書きましたが…あんまり意識した事が無かったんだけど、バンドの当初(というかまぁざっくり言うと“Overground Acoustic Underground”時代というか)の雰囲気と比較すると、結構テイストが変わってるんだなぁと思いました。

それこそ、ぼくは『夢の跡』が大大大好きで。この曲に代表されるように、この時期の曲って、アコースティックの懐が深い音と相反するようにヒリヒリするような緊張感というか、緊迫感というか、寂寞感というか、無常感というか、焦燥感というか、ある種の悲壮感というか…そういう、どちらかというとネガティブだったりピリついたニュアンスの雰囲気が盛り込まれた曲が多かった気がするんですよね。

一方で、略称ではなく正式名称が“OAU”になった辺りからのこのバンドは、幸福感に満ち満ちたものが多くなった印象。もちろん、非常に重層的で多様性のあるバンドなので、“切ないだけ”とか“楽しいだけ”みたいな曲は皆無な訳ですが。“影の中に一筋の光を見る”ような構成から、“光の中にありながら、影をも見つけそれを正視していこう”みたいなスタンスになったような。

もちろん、どっちが正しいとかどっちが間違いとかの話では全然ないです。

ぼくは、本作もそうだし『帰り道』とかもめっっっちゃ好きですが、そろそろまたもうちょっとヒリヒリしたOAUも聴いてみたいなぁと思う所もまぁ正直無くはないです。


あと…物凄く色んな要素を兼ね備えた重層的なバンドなので………聴くの疲れる(笑)。聴いてると、その曲のルーツを知りたくなったり、歌詞の意図を知りたくなったり、楽器の音の背景を知りたくなったり、音楽のジャンルについて突き詰めてみたくなったり、楽典的な事にも興味が湧いてくるし…色々と検索しながら聴くから、疲れる。なんて幸せな疲労感なのかと思いながら、今日もぼくはスマホを片手に聴いてしまいます。





お気に入りは、

#02 『セラヴィ -c'est la vie-』

#04 『Time's a River』

#05 『世界は変わる』

#07 『Blackthorn's Jig』

#11 『Linden』






この作品が好きなら、

・『曽我部恵一BAND』/曽我部恵一BAND

・『Quarter Note』/山崎まさよし

・『Life Goes On』/平井大

などもいかがでしょうか。






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