>オリジナルフルアルバム

>タイトル:gokigen

>アーティスト:chelmico

>リリース日:2022年 6月 1日

>記事作成日:2022年 10月 5日




 


聴きました!


作品を重ねるごとにどんどん好きになってきたアーティストさん。

…でも、6月に新譜が出てたのを、ここまで忘れてた! 子どもが出来るとね、今まで当たり前にやってたような事が出来なくなったりアンテナ張ってキャッチ出来てた情報をキャッチ出来ななくなったりするもんなんですよねぇ…チェルさんのお子さんと我が子、多分月齢含めて殆ど一緒だと思うので、この気持ちは共有出来ると信じてる(笑)




『intro』

なんだなんだ、フツーにカッコいいぞ⁉︎(笑)

このユニットの曲の多くは、クールさの中にもユーモアとユルさが大なり小なり“混入”しているのが当たり前のつもりでいたんだけど…ブランクレスで繋がっている次曲も含めて、“カッコいい”に振り切れてる感じ。


『Roller Coaster』

なんというか、リリックがハードボイルド。無頼というか。女声で無頼なのは、凄く斬新ですね。

尚且つ、凄く「ヒップホップしてる」…こういうと失礼に聞こえるかもしれませんが、もちろん揶揄する意図はないです。このユニットの作風って、がっつりラップするというよりはファッションも含めて「トータルでオシャレ」という認識だったけど、なんか泥臭いくらいにしっかりとヒップホップしてる。


三億円

配信シングルでした。単体で聴いてた時から大好きな曲で、今回アルバムの流れの中で聴いて改めて大好きだと思った曲。

物凄くカラフルで濃い味なトラック。そしてそこに乗るのは、小3が言ってそうな内容(笑) 知りうる限りの大きな事を、よく意味も分からず言ってる感じ。一方で、凄くシニカルでもあって。実際には全然小3ではなさそう。小3を装った大人って感じの、油断出来ない緊張感もまた良い。


『moderation』

なんか、聴いてると焦る(笑) 畳み掛けるように小刻みに(でも野太く)聴こえてくる低音に、焦燥感を掻き立てられる。でもそこに不快感は無くて…なんか心地よいドキドキが。

ふいに聴こえてくるケロロ軍曹口調が好き(笑)


『December』

ディセンバー。12月。凍てつく木枯らし。舞い降りる雪。街ゆく人はみんな急ぎ足。。。的な、非常に日本的な情緒を描く歌詞が世の中にはごまんとあるけど、そういう日本的な感傷とは無縁のクールな音。センチメンタルな雰囲気はありつつ、でもそれは上記のような歌謡曲的テイストではなく、まるで洋画を観るような現代的、西洋文化的なもので。それが新鮮。


『Touhikou』

この辺までは「まだどっちに転ぶかは分かんないぞ」と思いながら聴いてきたんだけど、この曲辺りで、「今回のアルバムはクールでメロウなほうに寄ってるんだな」というのが確信に変わる感じ。今回のアルバム、結構大人っぽくて、クールな側面がフィーチャーされた曲が多いんですよね。それが顕著に感じられる、ミドルチューン。淡々となるリズムトラックに、メロウなピアノとメロディアスなラップが乗っかって、非常にエモーショナル。


『Where you at?』

続くこの曲も、非常にメロウでアダルティ。

この曲には、なんか喪失感みたいなものを強く感じます。今はもう帰れない“あの頃”への喪失感みたいなものもリリックで描かれていますが、もっと根源的なというか…何食べても味がしなくなったり、そういう身体症状が出るレベルの、強烈な喪失感を主人公が抱えている感じ。聴いてると気持ちがざわざわしてくる(笑) コンディションが悪い時に聴いちゃったら、引っ張られてしまうと思う。それくらいの“磁場”を持つ曲。


『interlude』

紛れもなくインタールード(笑)

前曲と、“世界観”が一緒なのかな? そんな感じの、メロウなトラック。ひとりぼっちの部屋の中から、向こうの公園の楽しげなはしゃぎ声を聞く感じ。自分の孤独感が強調される。


『COZY』

同名のミニアルバムからの再録。

ここ何曲か、緊張感というかシリアスな雰囲気が続いたので、この曲の軽さが非常に沁みるというか。

オケは、決してそんなにコテコテではないんですよね。コテコテではないんだけども、曲全体の印象としては非常にポップでカラフル。


『bff』

今回のアルバムの中で、一番中毒性があると思う。80年代のテクノポップみたいに、どこかチープに響くオケ(アレンジなんかの話しをしているのではなく、あくまで“質感”の話です)。そして、サビ(そう、“フック”というよりは“サビ”)の豪快な持って行き方(笑) 最近の音楽はどんどん小難しく、テクニカルな方向に向かっている中で…竹を割ったような分かりやすいメロディ。そんじょそこらの人が歌ったらダサくしかならないような曲が、非常にオシャレに響かすからこの人たちは恐ろしい。

あと…特に1A(ど頭)なんかがそうなんだけど…ぼくくらいの年齢になると、聴いててむず痒くなるくらいに青春まっしぐらなリリック。なんかこう、日陰でじめじめしているぼくの心に、サーチライトの光を当てられるような刺激(笑)


『ISOGA♡PEACH』

前曲がハイテンションのピークかと思っていたら、もっと凄い曲が続くというね。

これ、言われなきゃチェルミコだって気付かない気がする。それくらいに可愛らしい歌声。なんか、10代のアイドルみたいな歌声。

でも、言ってる事は、大人こそわかりみが凄いものばかり(笑) そらぁもう、大団円間違いなしですわ。


『O・La』

キャッチーではあるんだけど、どこか斜に構えたようなヒネクレたオケ。オケの情報量の多さよ。このユニットの元気いっぱいなイメージとも、今回のアルバムのトータルなイメージのクールで落ち着いた感じとも違う、独立した世界観を見せる曲だと感じました…と思ったら、この曲はRIP SLYMEのDJ FUMIYAさんとの共作だそうで。そりゃあ、通常テイストとは違ってきますよね。でも、かと言って「リップっぽい」かと問われるとそれともまたちょっと違くて。大ベテランのDJ FUMIYAさんと組んでも、飲み込まれる事なくちゃんと対等に渡り合って“化学変化”を起こしオリジナルを作り上げてるのが凄いなと思いました。


『Meidaimae』

なんというんでしょうねぇ…「懐かしい」なのかな? 凄く、若々しい。好きだの嫌いだのというのが頭の12割を占めていた、あの頃。それを、具体的なシチュエーションを例示されながら思い出させられる感じ(笑) 自分の好意はがっつり自覚していて、でも相手の真意を掴めずに、あーでもないこーでもないとぐるぐるぐるぐるぐる…という、アレね。

いやぁ、あの頃の気持ちを、無理矢理ほじくり返される感じ。この甘酸っぱい気持ちが凄く懐かしいけれども、奥さんとの日々は楽しいし、息子は愛おしいのでまぁ良しとしよう。


『Miterudake』

〆の曲は、“らしさ”いっぱい。小洒落ていて、力みが無くて、ユルいんだけどキメるとこキメてて。アレコレ色んなタイプの曲を披露した後に、適度にあっさり〆る…シメのお茶漬けみたいな感じが良い(笑)




そんな、計14曲。


別に、シリアスな曲ばっかりとかメロウな曲ばっかりとかそういう事ではないんですよ。いつもの、言わば“元気印”の曲も沢山ある。でも、アルバム全体の印象としては、これまでに無い感じのシックな雰囲気があった。サウンドの話で言うと、“対象年齢”が普段よりも高めな感じ。一方で、リリック的には、引き続き若者感がもの凄いなぁと。大学生くらいで聴いたら、もう、「なんで自分の事歌ってんの⁉︎」って思っちゃうんじゃないかなぁ。

デビュー作からキャッチーさはずっと一貫してあるけれども、振り返ると初期の作品はデコボコな部分とか荒削りな部分もあって、魚の小骨みたいに僅かに引っかかる要素もあったんですよね(それがダメというのではなく、初期にしか出せない“味”だと思います)。それが、作品を重ねるごとにどんどん整理されていって、それに合わせてキャッチーさも格段に上がって。このままメインストリームのど真ん中をひた走るのかと思ってたんだけど…本作は、そのラインから少し外れた印象。引き続きキャッチーではあるんだけど、ちょっとビターな要素が増えたというか。このままなんちゃらフラペチーノが続くのかと思ったらスターバックスラテが出てきた感じ。その変化、好きでした。そういう変化がある事で、「この次はどんな作品を繰り出してくるのかな」っていう楽しみにもなるし。






お気に入りは、

#02 『Roller Coaster』

#03 『三億円』

#10 『bff』

#11 『ISOGA♡PEACH』






この作品が好きなら、

・『ハルカリノオカワリ』/HALCALI

・『YAVAY』/hy4_4yh

・『マグマⅠ』/あっこゴリラ

などもいかがでしょうか。






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