>オリジナルフルアルバム
>タイトル:プロム
>アーティスト:Cocco
>リリース日:2022年 3月 23日
>記事作成日:2022年 5月 16日
聴きました!
こっこさんの、25周年を記念する作品だそうな。
ボーカリストとしてスガシカオさん、プレイヤーとしてハマ・オカモトさんやCurly Giraffeの高桑さんなど、アレンジャーとして亀田誠治師匠やBEGINやトオミヨウさんら等々、豪華メンツが参加なさっているとの事。さすが“周年”作品。
『光溢れ』
根岸孝旨さんアレンジ。この布陣は鉄壁。でも守りに入ってる様子もなく、どの過去曲とも“カブる”感じのない仕上がりに。男性的な武骨なサウンドなんだけど、女性的な艶かしさもある、不思議な曲(“男性的” “女性的”という表現に性差別的なニュアンスは一切含んでおりませんよ。念のため)。雄々しいのに艶かしく、繊細なのにパワフル。
いちばん最初に一曲目のこの曲を聴いた時点で、このアルバムが素敵なものになっていると確信しました。
『コバルト』
刺激的なサウンドとこっこさんのラップ的バースがどちらもカッコいい曲。ベースラインがカッコいいなぁと思ったら、ハマ・オカモトさんてした。ハマさんとSANABAGUN.の澤村さんがアレンジャーの曲。そりゃあこんなに“肉体的”な曲になりますよねぇ。
最先端のロックサウンドと沖縄音階って、意外と違和感がない。
『てぃんさぐぬ花』
ガッツリと沖縄的な曲だなぁ…と思ったら、元々これって沖縄民謡なんですね! ピアノ一本で歌われる、何とも優しくて、柔らかくて、そしてそこはかとなく感傷的な曲。
『True Lies』
なんというか…豪快な曲(笑) ピアノの音色が艶かしいジャジーなアレンジではあるんだけど、なんというか、ボーカルやギター辺りの雰囲気は“ロックンロール”という感じ。
「ぬるちゅる」って、なんか…なんかアレですね(笑)
『ラブレター』
音数が少ない分、言葉と歌声が凄くダイレクトに刺さってくる感じがする。可愛らしいんだけれども、深みや円熟味みたいなものも同じくらいある。
アレンジャーはCurly Giraffeさん。高桑さんアレンジという事で、大陸的なスケールのサーフミュージックとかそんなアレンジになるのかなーとか思ったんだけど、もうちょっと(いい意味で)小ぢんまりとした可愛らしいアレンジだった。いや、この曲に関しては、それが良いんだ。
『PROM』
何となく思い浮かんだのは、“悲壮”とかそんなイメージ。歌詞的にも切迫感があったりはするけど、どちらかというとアレンジからそのような空気を感じた。もちろん、歌詞とメロディがあってこそのこのアレンジなんだろうけど。
何とも儚く、何とも厭世的で、だけど圧倒的な激情がみなぎる曲。
ちなみにアレンジは、飛ぶ鳥を落とす勢いのトオミヨウさん。
『ままいろ』
一転して、もはや牧歌的とすら言えそうな程に柔らかいサウンドのこの曲。三線ですかね?沖縄の音がするこの曲は、BEGINさんと。
やはり、この方が沖縄の匂いがする曲を作ると、物凄くあったかいんだけどそれ以上に圧倒的に切なさが勝る。あったかいのに切ないのは、感情が揺さぶられるんだよなぁ。
『恋い焦がれて』
スパニッシュな感じというか、アモーレな感じというか(笑) ここまでには無かったタイプの激情がほとばしっております。個人的には、クリエイターとしてのこっこさんの遊び心が本作中で最も炸裂しているように感じました。
『結い』
今回の“お目当て”の1つ、スガシカオさんとのツインボーカル曲。
取り敢えず、ストリングスとかが効いてるような壮大なバラードじゃなくてよかった。ボーカル同士のコラボ曲ってそういうのが多い気がするんだけど、このお二人には、そんなベタな事はしてほしくなかったから。バラードではあるんだけれども、甘ったるさは一切ないビターでソリッドな曲。
スガさんが、いい具合に“一歩引いてる”なぁと思いました。こんなにも個性的で特徴的な歌声が、あくまでこっこさんの歌声が響くための“サポート”に徹している感じ。その匙加減が、凄く好きでした。
あと、ラップパートでユニゾンしてるのが面白かった。ラップパートでユニゾンしてるの、あんまり聴いた事がない気がするけども。
『星の子ら』
美しい曲。美しくて、力強くて、しなやかで、そしてやっぱり美しい。そして、メロディもサウンドも凄く優しいんだよなぁ。使い古した(=馴染みに馴染んだ)毛布みたいな。
『嵐ヶ丘』
モニターからの返りをそのまま聴いてるかのような、臨場感あるノイジーロックチューン。サウンド自体は乾いてるんだけど、重量感がハンパない。思えばそれは、Coccoさんの歌声の佇まいとも似てるかもしれない。しなやかで伸びやかなクセの少ない歌声なのに、なんとも言えないズッシリとした存在感がありますからね。
そして、なんと言ってもシャウト。こんなに本気のシャウトが出来るのは、この方か鳥居みゆきくらいな気がする(笑)
そんな、計11曲。
おぉおぉ、今回も好き勝手やってんな〜、面白いな〜〜…と、そんな気持ちで好意的に聴いてました。作品を重ねるごとに、この方の音楽はどんどん自由になって来てる印象。
…そんな風に思いながら繰り返し聴いていたちょうどその時期に、例の、『強く儚い者たち』に関する直筆文章をご本人がTwitterに上げられたんですよね。
ぼくは、正直、すごく残念でした。今でも大好きな曲だし、テレビで歌ってくれたら嬉しい曲。でも、「あぁ、ご本人はイヤイヤ歌ってたんだぁ」と。「歌いたくもないのに歌わされている歌を聴いて、ぼくは感動していたんだぁ」と。
メジャーレーベルからリリースして、対価を受け取りながら創作活動をしている以上、市場(というとドライな感じがしますが、要はその音楽を聴いている人たちですよね)のニーズにはある程度応える必要があるんじゃないかな?と、ぼくはそう思います。トンカツが名物の定食屋でトンカツ頼んだら、「他のも美味いのになんでトンカツ頼むかねぇ!」って言われる心境。
もちろん、クリエイターとして、「他にもいい曲沢山あるのに!」「他の曲にも目を向けてほしい!」という気持ちがあるのであろう事は解ります。だから、ぼくが言いたいのは、別に「言われるがままにやってりゃいいのに」という事ではなく、「その文章、表に出す必要あった?」という事ですね。ご本人は、内面の葛藤が他者との交流で解消したというプロセスを外に出す事で“めでたしめでたし”とした部分があるんでしょうけど(そして直近のMステは本当に前向きな気持ちで歌われたんでしょうけど)、その文章を読んだ自分が思ったのは、前述の通り「あぁ、イヤイヤ歌ってるのを見させられてたんだな」というガッカリ感でしかなくて。
ここで「あっちゃんが前向きな気持ちでこの曲と向き合えるようになったみたいで良かった良かった」と思えない自分は、あまりCoccoさんの作品を聴くべきではないのかもしれない(苦笑)
お気に入りは、
#01 『光溢れ』
#02 『コバルト』
#05 『ラブレター』
#06 『PROM』
#09 『結い』
この作品が好きなら、
•『愛はヘッドフォンから』/藤川千愛
•『標本箱』/黒木渚
などもいかがでしょうか。
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