>オリジナルフルアルバム
>タイトル:PEACE OUT
>アーティスト:竹原ピストル
>リリース日:2017年 4月 5日
>記事作成日:2017年 10月 4日
聴きました!
孤高の歌うたい・竹原ピストルの最新作。
とにかくとにかく、まずは各曲の感想を。
ブルージーな『ドサ回り数え歌』。
アコギ一本でぽろろんと弾きながら歌う曲。編成だけ見れば明らかに「フォーク」とか「アコースティックサウンド」って事になるんだけれども、ことこの曲に関して言えば、まごう事なきブルース。哀愁と郷愁と侘しさと、そして仄かな希望と。
うん、この曲には確固たる希望がある。
続いてはフォーキーな、『虹は待つな 橋をかけろ』。
カントリー調のミドルポップチューン。優しくてあったかくて、それはそれはじんわりと沁みてくる曲。ぼくは基本的に「人情味」だとか「人間味」とか、そういう漠然とした形容はあんまり好きじゃないんだけど…この歌声から滲み出てくるそれは、まさに人の温もり。まだ言葉には出来ないけれど、「人情味」ってのはこの曲を聴いた時に湧いてくるこの感覚の事なんだろうなという理解が出来るようになりました。
飄々とした中に味がある、『一枝拝借 どこに生けるあてもなく』。
どこかユーモラスで、程良く力が抜けていて、あとからじんわりと効いてくる曲でした。この、程良く肩の力が抜けた感じが、このアルバム全体に流れている空気と一緒。
アツい…というか暑苦しい(笑)、『ママさんそう言った 〜Hokkaido days〜』。
ヒップホップ的なアプローチですね…というか、ヒップホップ。「レペゼン」とか言ってるしね。
内容的には、竹原さんの自伝的な曲なのかな。その自伝の「第1章」って感じのイメージ。
これもまたアツい…暑苦しい、『ぐるぐる』。
一応断っておきますが、この人に対する「暑苦しい」という形容は、100%「リスペクト」ですから。ティーンでもないのに、このくらいのキャリアなのに、それなのにこんなにも素直な言葉を率直に歌に出来る人を、ぼくは他に知らない。
いやしかし…「以外と」なんて言ったら失礼だけど、歌上手いですよね。それが堪能出来る曲。
バンジョー?…ユーモラスな音と、それに負けじとユーモラスなメロディラインの『一等賞』。
もう、後半に行くと「ルールにのっとって〜」と口ずさめるくらい、分かりやすくてパンチのあるフレーズの曲。
アグレッシブで奔放なエネルギーに満ち満ちている、『ため息さかさにくわえて風来坊』。
この曲も、ライミングとかは無いけれども言葉の乗せ方的にはヒップホップのよう。ビートをがっちり乗りこなしていて、聴いていると凄く気持ちよくなってくる。これは、完全に「フロウ」の感覚。
再び渋いアコギの音色が炸裂する、『最期の一手〜聖の青春〜』。
存在への、そして生への肯定。しかも、圧倒的な肯定。迷い悩み立ち止まっている人には、これ以上ない応援歌になりましょう。「解決」してくれるような歌詞ではないけれども、もう一歩踏み出す勇気を与えてくれるであろう事は間違いがない。
中盤から重なってくるストリングスも、いい味を出しています。
何とも男臭い、『ただ己が影を真似て』。
豪快さなんてかけらもない、虚勢と勢いと見栄だけを原動力に突き進む男という生き物を結晶化したかのような曲(笑)
でも、だからってネガティブな歌なのかと言われればまったくそうではなくて。むしろその逆。「頑張れって言われる曲」ならごまんとあれど、この曲のような「頑張ろうと思える曲」は滅多にない。そんな、稀少な曲。
「歌」というよりも「語り」に近い、「語り」よりも「弁論」がしっくり来る、『例えばヒロ、お前がそうだったように』。
竹原さんの王道スタイルな曲。熱い熱いメッセージソングでありつつ、随所で言葉遊びも見られ、またユーモアもふんだん。
打ち込みの淡々としたビートとたゆたうように流れるアコギの音とが絶妙に絡み合う『Forever Young』。
しんしんと沁みこんでくる言葉たち。力強いフレーズが並んでいるけれども、それをどう解釈して飲み込むのかは聴き手に委ねられている…そんな感じの、懐の深い曲。
しょっぱさと甘酸っぱさが両方香る『俺たちはまた旅に出た』。
現実が見えている大人が醸し出す「しょっぱさ」の部分と、まだまだ不相応な大きさの夢を追いかけている若者の「甘酸っぱさ」の、そのどちらをも味わえるんだよなぁ。
アコギが主体のシンプルなアレンジも、曲の魅力を最大限に引き出していて素晴らしいと思いました。
ラストは『マスター、ポーグスかけてくれ』。
これを機会に初めてポーグスを(軽くですが)聴いてみたんですが、この曲のトラックはまさにポーグスに対するリスペクトとオマージュなんだなぁと分かりました。
ケルト方面の、賑やかなのにそこはかとなく感傷的な響きが再現された、心地の良いトラックでした。ボーカルは、いつも通り過ぎる程にいつも通りのピストル節でしたが。
そんな、計13曲。
間違いなく「いつもの」作風は踏襲しているんだけれども、一方ではまったく新しい部分も感じられた本作。
例えば『マスター、ポーグスかけてくれ』のケルト音楽っぽいアプローチとか、そういうサウンド面での拡充ももちろんあるのだけれども…一番感じたのは、漠然とした表現になっちゃうんだけど「ポジティブな感じがした」という点。
これまでの竹原さんは、基本的に「ネガティブなものの中から一縷の希望を見出してそれを膨らます」というアプローチが多かったと思う(ぼくにはそう聴こえた)のですが、今回のは、「まずポジティブなものありき」だったように感じて。適切な表現ではないかもしれないけども、「吹っ切れた」とか「突き抜けた」とか、そんな感じ?
なんか、Mr.Childrenの桜井さんもオススメしてたらしいですね。好きなアーティストが好きなアーティストをレコメンドする…ぼく得(笑)
お気に入りは、
#01 『ドサ回り数え歌』
#02 『虹は待つな 橋をかけろ』
#07 『ため息さかさにくわえて風来坊』
#09 『ただ己が影を真似て』
#12 『俺たちはまた旅に出た』
この作品が好きなら、
・『ロックンロール イズ ノット デッド』/サンボマスター
・『光のなかに立っていてね』/銀杏BOYZ
・『ウラシマノウタ』/PhilHarmoUniQue
などもいかがでしょうか。
CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/
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