おはようございますニコニコ前回投稿した、鈴木砂羽氏演出の舞台における一連の騒動について、ネットやマスコミではいろんな意見が出されていますね。その事について思ったことを述べたいと思います。

なんといっても目立っていたのは、舞台を途中降板になったふたりの女優について、ドタキャンなんてあり得ない、最後まで仕事を全うするべきだ、という意見。梅沢富美男氏もこの意見だったわけですが、
一方で、二人の女優の事務所側は、鈴木氏の意向で代役を立てられて降板させられた、と主張していますよね。

どちらが真実なのか分からないのですが、もし降板させられたのが事実なら、全うもなにもないわけで、この意見は全く意味をなさなくなりますね。

仕事を入れた以上最後まで全うしないのはお客さんに失礼極まりない、と言うのであれば、今は亡き落語家の立川談志氏はどうなるのでしょうか。
気に入らない客がいる、という自分勝手な理由で、喋っている途中でもほかのお客さんのことを顧みることもなく退席した、というエピソードは有名ですが、これが職場放棄でないなら一体何なんでしょうか。
例えどんなに芸が優れていたとしても、これはハッキリ言ってプロとして失格でしょう。大御所だから許されることにはならないはずです。

ほかには、俳優の高橋克実氏が、「演劇界ではまず人格を否定されることから始まるものなんです。パワハラなんてあろうはずがない」という旨の発言をしていましたね。
ぼくは、この記事を見た瞬間「ああ、いかにも芸能界の絶対の上下関係に毒された、権力に魂を売り渡した人間の言いそうなことだな」と思いました。
そして「裏を返せば、演劇の世界で監督や演出家になるのは、良い作品を作ると言うより、支配欲を満たしたいだけではないのか」と邪推したのはぼくだけでしょうか。
絶対の上下関係を楯に支配欲求を満たしてそれがお金になるなんて、梅沢氏よろしく、それこそ「ふざけた話」だと思いませんか?

カンニング竹山氏は「芸能界は自分からやりたい人が集まる世界で、一般の企業とは事情が違う」という旨の発言でしたが、これはいかがなものだろうと思います。
例えばファッションであるとか、芸能人を模範にしたりあやかったり、という一般の人はたくさんいます。

だからこそ模範にされる側である芸能人は、何をすべきで何をすべきでないかについて、一般社会とズレがないかどうか、一般の人に対して恥ずかしいことをしていないか常に検討する必要があるのではないでしょうか。
「芸能界は特殊な世界」というのは単なる詭弁にすぎないと思います。

ぼくは、芸能界というものに対して、夢を売る商売だとずっと思っていました。
だからこそ今回の騒動のような、醜い現実が浮き彫りになったことに深い失望を覚えます。

そういえば、茂木健一郎氏が「お笑い芸人はもはや終わった」とか言ってたのが記憶に新しいですが、ぼくも、そのような発言をした茂木氏の心中は何となく察します。
ただ、ぼくが茂木氏だったら「芸能界の上下関係やら事務所とかの力関係やらいろんなしがらみにがんじがらめにされてお笑い芸人が気の毒だ。このままでは小さくまとまった芸人しか出てこなくなるだろう。芸能人は大きく育てないといずれ芸能界そのものがダメになってしまいますよ」と言うでしょうね。
もちろん社会人としてのルール、つまり、例えば法律を守るとか、自らの行動には責任を持つとか、他者を尊重するとかは教える必要はあるでしょう。
ただ、自分より立場が上だから従順になる、というのは「礼儀正しい」のとは違うのではないか、と思います。
確かに世渡りのために長いものに巻かれる、ということはあるでしょう。
しかし、だからと言って立場が上だから正しいとは限らないんです。
ぼく自身も仕事をしているなかで、まともでなければ正しくもない上の立場の人間を何人も見てきているので、これは間違いありませんよ。

上下関係の問題ではなく、お互いに相手を尊重し合うことこそが本当の意味での「礼儀」ではないかとぼくは思います。
そう考えると、権力を振りかざして、自分より弱い立場の人間相手に傲慢に振る舞うのは礼儀正しくないですね。

そうではなく、立場が上の者は、自分より立場が下の者に対して、尊敬される人間であるべく自ら模範を示す、その上で「君たちも後輩や
部下ができたときのために模範にされる人間になる努力を怠ってはいけないよ」と諭すことこそが人の上に立つ者の礼儀なのではないでしょうか。

日本の縦社会は、立場が上の者が下の者を、絶対の上下関係を楯に無理矢理服従させる、された側は、今度は新しく入ってきた、自分より立場が下の者に対して同じことをする(これは単なる八つ当たりですよね)、という「暴力の連鎖」が問題として挙げられて久しいですが、未だ改善の兆しすら見られません。

芸能界に限らず、これから日本社会には「尊敬の連鎖」こそが必要なんです。

そのためにぼく自身がまずすべきことは、弱いものいじめをしない、地位や立場を悪用して好き勝手に振る舞う者に対して徹底して反対を表明する、という、これまでもぼく自身がぶれずに発信していたことを継続して発信していくことだと思っています。
確かにぼくは世渡り下手だと思います。実際、中学生時代からこういう考えを持った人間だから、立場が上の人間とは何度衝突したことか。さぞやぼくは縦社会においては浮いた存在でしょうね。
でも、立場が上だからというだけで無条件で敬うことを要求するような人間よりはずっとましだと思っています。これは自信と責任を持って言わせていただきます。