そよ風が僕の頬をなでる。



初夏の風が微かな涼しさを僕にもたらす。




そうだ。今日はこんなにも天気が良い。






だから僕は外に出歩いたのだ。





そう、ちょうど3年前の彼と同じように。













ダイヤモンドダストのようにきらめく木漏れ日。



霞み一つない画用紙のような空。



今日は寂れた中華料理店に置かれたいつも無表情な招き猫も、あくびをしながら客招きの仕事をするだろう。





それほどまでにのんびりとした日なのだ。















──さて、今日はどこに向かおうか。





川辺へ行こうか。

懐かしい母校へ出向こうか。








そうだ、太陽に聞いてみよう。


太陽の言うとおりに進んでみよう。








きっと素敵な場所へ辿り着ける。そんな気がする。











──さあ、上をむいてごらん。



そう、太陽を見てごらん。






ほら、燦々と輝く太陽が僕に明日への道しるべを……




































ってピギャアアアアァァアアアアァァァ!!!!!!!

目がァァァ、目がァァァァ!!!!!

目が眩むゥゥゥウウ!!!!

ギヤアアアア…………!!!!





《ナレーション:裸眼で太陽を直視するのは非常に危険です。太陽を見るときは、当社の新製品「スーパーサングラス(29800円)」をかけましょう。》

※この映像はコマーシャルです。































そんなおとついの夢。





どうも、第4回AKB総選挙で惜しくも神7入りを逃してしまった僕です。




悔しい。


でも大丈夫。



僕に入った、たくさんの投票数の分だけ、僕を応援してくれる人がいるのですから。















































僕に入った投票数は2票でした。






誰にも言えませんが、ここだけの話、1票は自分で入れました。



ということは実質僕に入れてくれたのはたった1人だけということです。






その晩、お母さんに泣きながらそのことを報告しました。


するとお母さんは、





「そうかい、そんなに少なかったのかい………
でもねえ、たとえ少なくったって、アンタを応援してくれる人がいるって事実が、すごくありがたいことなんだよ!
アンタはまだまだこれからなんだから、その少ないファンの人たちのために頑張りなさい!
それでいつか有名になったら入れなかった人たちを見返してやる、くらいの気持ちを持ちなさい!
アタシと父さんの子なんだから!しっかりね!」










そう言ってくれた。




俺は泣きじゃくりすぎて言葉が出なかったが、心の中で思った。



──お母さん、ありがとう。
俺がんばるよ。

たとえファンが1人しかいなくたって、そのファンのために俺はがんばる。

お母さん、俺に大切なことを教えてくれて、本当にありがとう──と。






そんな鼻水たらして泣いていた俺を見た母さんは






「あらあら、そんなにグシャグシャな顔して。大の男がみっともないわよ。
ほら、顔を洗ってらっしゃい。」







と促した。

うん。と僕は頷いた。













「それにしても、そうかい……そんなに少なかったのかい……。母さんも一票入れたんだけどねえ。」













俺「 」

































~fin~