はぁ…なんて良い音。。とても1952年の録音とは思えない。そしてこの雰囲気。まさにjazz。

Gerry Mulligan Quartet feat. Chet Baker。


このバンドは、LAのハリウッドにあった「Haig」という小さな店にレギュラー出演しており、ステージが狭い為ピアノが置けず、ピアノレスだったとか。それ故、コード感を出す為にマリガンが完璧なアレンジを施し、2本の管楽器(トランペットとバリトンサックス)が複雑に絡み合う見事なアンサンブルとタイトで自由なアドリブが聴きどころだったバンド。今聴いても新鮮。


このバンドのファンには、あのマリリン・モンローも居て(彼女はかなりのジャズファンで、色んなミュージシャンとの写真も残っている。)、普通に狭いHaigに観客の一人として訪れてたそうな。


ハリウッド・スターにはクリント・イーストウッドやスティーブ・マックイーンなどジャズファンは多い。でも、彼らが果たしてオルタード・テンションなど、理論を理解した上でジャズを愛していたのだろうか。そうではないと思う。いや、決めつけてはいけないか。イーストウッドはピアノ上手いし(笑)


でも、結局はそんな事どーでも良いのだ。そんな事よりジャズには雰囲気が必要だ。西海岸のこのパシフィック・レーベルやコンテンポラリー・レーベルのサウンド、東海岸のブルーノートやプレスティッジなどのサウンド、方向性は異なれどそれぞれにたっぷりとその時代の雰囲気が有る。


僕自身は若い頃から親の影響でジャズに親しんで来たものの、「ジャズは進化するもの」との想いが強かった。だから常に最先端のジャズを聴いてきた。ただ、それと同時に親が持っていた古いレコードも聴いていた。若い自分にとっては新しいジャズは斬新で新鮮な未知の世界であり、古いジャズは雰囲気を味わう歴史探訪の様な感覚だった。


最近のNYのジャズをYouTubeなどで聴いても、昔の様に「斬新だ」とか感じなくなってしまった。ある程度まで進化しきって、もはや「ジャズは進化するもの」ではなくなってしまったのだと思う。それは決して悲しい事ではなく、それぞれがそれぞれのジャズを演ってれば良いし、リスナーは自由にチョイスしてそれを聴いてれば良いのだ。


でも、肝心なのは僕が求めるあの「雰囲気」を持ったジャズが現代では少なくなって来ている事だ。ロックと混ざった様なジャズもどき(自分もかつてそういう音楽を演ってたから存在を否定する事は決してない。今後またやるかもだし笑)は置いといてだ。だから、どうしても古いレコードに手が伸びてしまう。


今のジャズ(に限らずだけど)って、凄くクリアで、健康的で、元気一杯で、外連味がなく超絶で、ネガティブさが無くて、まぁ、一言で言うとつまらないのだ。(ここまで書くと、毎度のごとく例のクソつまらない某ジャズ漫画を思い出してしまう。) 結局は人間のクズみたいなのが本能の赴くまま演奏しているものに惹かれている自分がいる。あくまで自論だが、はちゃめちゃやって来た人間が演る音楽には、一般的で常識的な社会生活を送って来た者には経験出来ない未知の世界を魅せてくれる力が有る。僕はそういうのに惹かれるのだ。


まぁ、そういう健全な音楽が受け入れられるのは、現代社会が極めて健全(な振りをしている)で異物を完全に排除したがる傾向にあるのだから仕方ないと思う。異物が大手を振ってた70年安保の時代とは大きく異なるのだ。そういう健全な音楽が有っても勿論良いと思うし、僕がそれをつまらないと思うのは極めて個人的な意見であり、自分の意見など無視して貰って結構なのだが、なんか現代にももっと面白い音楽が増えて欲しいなとは思う。


現代の若者と共演する事も多いけど、素晴らしいミュージシャンは勿論多いし、今後ジャズが消滅する事など無いと安心はしている(まぁ、生活苦と隣り合わせなのはどう足掻いても変わらないけど笑)。ただ、学習や練習では補えない人生経験は沢山積んで欲しい。狭い世界観の音楽はやはりつまらない。また、我々ベテラン勢も、もっと面白い事やんなきゃね…って思う。リスナーとしても唯の「再現音楽」など聴きたくないもの。自分の演奏を後で聴いて面白い!って思えるのは、練習したフレーズが出来た時じゃなくて、やった事の無い、自分でも理解し難い演奏をした時だから。


でも、結局ジャズらしい「雰囲気」が無ければ、何をやっても魅力は半減するのだと思う。逆に雰囲気さえ有れば、多くに受け入れられ、その分演奏に自由度を増す事が出来る。そこには音色やニュアンスなど様々なファクターが存在すると思うが、その「雰囲気」こそがリスナーとしての僕が聴きたくなる要素なのだ。今後も僕は自分の聴きたいものを演り続けるだろう。


でも、そういう文化を支えるのは結局はリスナーであり、ミュージシャンは所詮無力なのだ。僕に唯一出来る事は、リスニングの楽しさを伝える事くらいかな。マリリン・モンローみたいな人が普通にライブハウスに聴きに来てくれたら、そりゃミュージシャンみんな頑張るでしょうよ(笑)いつも言ってるけど、「演る文化」より「聴く文化」を広めなきゃ意味が無い。