ハニータッカー? | 目指せ 脱初心者、モバイルブロガーへの道

ハニータッカー?

パクリではなくパロディだそうです。


ハニー・タッカーと魔法の対決
著: H.P.SECRET FRIENDS
発行: コアラブックス


著者プロフィール

 H.P.SECRET FRIENDS
 日本におけるポッタリアンの集まり。また、他のエンターテインメント小説・映画にも造詣が深い。

抄録

「……というわけで、ぜひ日本に行きたいのよ」
 ウルクハート魔法・魔術中等学校の学期最後の日の昼休み、校庭の芝生で初夏の太陽を浴《あ》びながら、ハニー・タッカーは安倍晴彦にそれまでの長いいきさつを説明していた。どうしても日本に行かなければならない、と熱意をこめて話している。
「そうだったか、きみも大変な思いをしているんだ」
 晴彦も珍しく真顔《まがお》になって、ハニーの母の悲しい話を興味深げに聴《き》き、しきりとうなずいていた。
「あたりまえよ。そのあたりにいるのんきなお嬢ちゃんとはちがうわ」
 ハニーは話《はな》し終《お》わるとすっかり照《て》れて、しきりと芝をむしりながら、元のひょうきんにすぐ戻っていた。そして、その色白で面長《おもながな、おっとりとした品のある顔からは、とてもそんな暗い体験や、魔物《まもの》と戦おうという決意があるようには見えなかった。
「それで日本ではどこにステイするの?」
 晴彦はもっと現実的だった。この15歳の英語しかしゃべれないイギリス娘に、日本で生活が出来るのだろうか
「そうね。いま考えているのは、日本に移籍《いせき》したサッカー選手ディヴィッド・ ベッカムの奥様と息子さん、ヴィクトリアの住みこみボディガード。もしかしてヴィクトリアはマーサ・タブラムを知っているかもしれないし」
ヴィクトリアはベッカムより1歳年上で、5人編成の女性コーラスグループ、スパイス・ガールズの一員だったが、1999年にベッカムとダブリンで結婚してふたりの息子をもうけている。
「ベッキンガム」宮殿といわれる豪邸をもち、大金持ちであるベッカム一家はさまざまな 犯罪者に狙《ね》らわれていた。先年にはヴィクトリア君の誘拐未遂《ゆうかいみすい》事件も数件起《お》こっており、愛車も防弾ガラスに替え、国内では元M16のエイジェントがボディガードとして常つねに彼女の身辺《しんぺん》を警護《けいご》している。
「ヴィクトリアを知っているのかい?」
 晴彦もあっけに取《と》られた。
「いいえ。ベッカムのファンだけで、奥さんにもぜんぜん面識めんしきないわ
 あっけらかんとしてハニーは答えた。
「それじゃどうするの?」
「学校からの能力証明書とボディガードの推薦状をもらって、コネを探《さが》すか、日本に行ったら直接本人に売りこむわ。英語で話せるし、魔法の使える女の子なら、いざというとき役に立つし、男性のボディガードみたいに目立たなくていいでしょ?」
「まあね。ちゃっかりしているけど気持ちはわかるよ」
 晴彦はそれが実現するかは別として、考えたなと感心した。
「住みこみならお互いに都合《つごう》がいいし、どこでも密着《みっちゃく》して行けるから、彼女はいつでも安心して暮らせるわ。ベビーシッターを務《つと》めてもいいし、化粧室やトイレに同行しても気を使わなくていいでしょ。その点、男ではそうはいかないわ」
「たしかに年下の同性で同国人だし、妹みたいで気がおけなくっていいかもな。多分《たぶん》採用されるよ、きみは」
 晴彦も賛成した。
「でしょ。だから一緒に連れていってよ」
「はい、はい。わかりました」
 晴彦は東京まで連れていってやって、ハニーの身の振《ふ》り方かたさえ決まれば、自分は京都の実家に帰れると思っていた。優《やさ》しい晴彦は、しかし、それが甘かったのを思い知らされることになるのだが。


   *


 そのころ、邪悪《じゃあくな》血を分《わ》けたコンビ、芦屋道典とメアリ・アルカードの生活にも大きな変化が起きていた。
 カーディフ市内のフラットの一室で、仲間と一緒にマリファナパーティを開いているところを、かねてから内偵《ないてい》していた麻薬取締官に麻薬吸飲《きゅういん》の罪で逮捕されたのである。
 しかし、ふたりとも未成年なのをいいことに偽名《ぎめい》を使って地元警察をごまかした。そして夜になってから錠《じょう》を外し、収容された留置場《りゅうちじょう》を脱出した。そのくらいのことは魔法以前でお茶の子さいさいの二人なのだ。
 ダークサイト魔道・黒魔術学校自体ではイギリス社会の法律に反した生徒の行為など問題にもしなかった。社会のアウトサイダーばかりを育てているので、法律違反は当然のことだった。しかし罪は罪である。社会的には許されるはずもなかった。
「ちょっとばかり油《ゆ断だんをして、ドジってしまったな」
 メアリとふたりで学校の自室に逃《に》げ戻《もど》ると、道典はもうけろりとしていた。
「まあ、いい経験よ、たまには。ちょっと泣き真似したらすぐだまされたわ。田舎警察は甘いわね」
 メアリもすっかり悪ぶってまったく後悔《こうかい》もせず平然としていた。
 だが、この事件はそのままでは終わらなかった。スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)から派遣《はけん》された麻薬Gメンはさすがに場数《ばかず》を踏んでいた。あとで麻薬パーティの現場に残された品物から指紋《しもん》を採取《さいしゅ》した。このころ外国人は入国するときに、空港の入国管理所で必ず指紋を登録することを、新しい法律で義務づけられていた。
 芦屋道典はむろんイギリスでは外国人であり、偽名を使っても出身国はすぐに見抜かれた。ヤードでは彼を日本人と断定し、登録された外国人指紋カードを調べてみると、すぐに身元がわかった。彼は日本の高校生でイギリスに留学しにきており、寄宿先はカーディフのキャッスル・コッホにあるダークサイト魔道・魔術学校と判明した。
 ヤードでもすでに目をつけていたいかがわしい学校である。さっそく内偵《ないてい》がはじまった。麻薬パーティに参加していたのは同校の未成年の生徒たちだった。ほかにもかなり犯罪に関係ありそうな情報が報告された。これは教育に問題がある。