私はコンピューターには疎いので、このブログは息子の協力のもとに作成しているのだが、
その息子がこんなことを言い出した。
「メガネドラッグのCMは『桃太郎 海の神兵』のオマージュじゃないか?」
今回の件に際して「桃太郎 海の神兵」を見た上での所見である。

「メガネドラッグ」というのはメガネ屋さんのチェーン店で、関東地方ではずっとテレビCMを流している。
シンボルキャラクターはメガネを掛けた桃太郎で、店頭には人形も立っている。
ここで言う「CM」というのはそのCMでずっと流れているアニメーションのことである。

みんなメガネを掛けた、桃太郎、犬、猿、雉の一行がしも手に向けて行進しているアニメーションである。

一見単純なリピートのアニメーションだが、よく見るとなかなか凝っている。
それぞれのキャラクターの歩きのパターンが全部変えてあり、かなりの技術のあるアニメーターの作品である。
実はずっと以前、親子でテレビを見ているときに私が気付いてそのようなことを言ったようなのだ。

ところが「桃太郎 海の神兵」にも似たようなシーンがあるという。
まあ、どちらも「桃太郎」なのだから犬、猿、雉と行進ぐらいはするだろう。
しかし決定的なのは雉の動きだという。

「海の神兵」冒頭、犬たちの帰郷シーンでは、雉、猿、犬、熊(桃太郎はいない)の並びでしも手方向に歩いているのだが、
軍人らしく手足を揃えて歩く猿、犬、熊に対し先頭の雉だけはストロークが全く異なり、時折逆進したり、
カメラ方向へふいに逸走して飛び戻ったりしている。雉の浮遊感には力が入っておりひらひらと動いて視線を引く。
他方「メガネドラッグ」の方は、それぞれ歩行モーションを変えている中で最後尾の雉だけストロークが極端に違い、
遅れたり早足で追いついたりを繰り返している。
雉のリーチの違いに着目して凝ったアクションをつけている点が共通しているというわけだ。

映像だけではなんとも判断が付かないので息子にネットで調べてもらうが、
残念ながらメガネドラッグの方のアニメーションの作者は分からなかった。
記憶するところではこのアニメーションは昭和50年代のはじめぐらいからずっと使われているように思う。
そのころまでの東映や虫プロの系統に連なるアニメーターならみんなほぼ知り合いのようなものだが、
時期からするともっとベテランのアニメーターの作である可能性もある。

「桃太郎 海の神兵」は昭和20年(1945)4月の公開で、同年の9月には、占領下となってGHQによってプリントは破棄されてしまい、
松竹によってネガが「再発見」されたのは昭和57年(1982)とのことだから、メガネドラッグのCMももう放映されていた時期と思う。
つまりメガネドラッグの方の作者が「海の神兵」の影響を受けているにしても、「海の神兵」を見ることができたのは、
昭和20年の僅か4ヶ月くらいの間しかないということになる。
もし両者になにか関係があるならばいずれにせよメガネドラッグの方の作者は私より歳上の世代の可能性が大きい。

なんとも茫洋とした話で申し訳ないが、さまざまな創作の下に地下茎のように走る繋がりを追ってみるのもまた面白いものかもしれない。