深夜のタクシー | 柳川淳二の怪談部屋

柳川淳二の怪談部屋

実話も織り交ぜたオリジナル創作怪談をメインとして、その他色々と記して行きます。
当ページの怪談は怪談朗読師のIsAM(136)殿にも朗読頂いておりますのでゼヒ、ソチラもお聞きになってみて下さい。
YouTubeの知的好奇心CLUBでは心霊部隊に所属。

こんばんは、柳川淳二です。


タクシーに関する怪談はたくさんあるんですがね・・・今夜のお噺もそんなタクシーにまつわるお噺・・・なんです。


神奈川県のね、とあるタクシー会社に勤める・・・仮に藤田さんというお名前にしておきますが、この方・・・運転手さんじゃあないんだな。


各タクシーの動きやなんかを監視して、無線でもってねぇ、指示なんかを出したりする、管制といいますかねぇ・・・オペレーターのお仕事をされていたんです。


最近のタクシーはねぇ、会社にもよるんですがGPSでもって動向を管理できるシステムを採用している所もあるんですよねぇ。


モニター上に、会社全ての車両の番号や位置・向きなんかまで表示されちゃいましてね、面白いのが空車は赤、賃走は緑、迎車は青・・・みたいな感じにね、状態までが色分けされて表示されるそうなんですよ。


すごいですよねぇ・・・これじゃ運転手さんサボれないですよねぇ。空車でもってずぅーと止まっていたらば、休んでいるのがバレちゃうわけですからねぇ。


で、藤田さんその日は夜勤で監視の作業やら迎車の指示やらをしていたんですがね、時刻は深夜十二時を回ったあたりからでしょうかねぇ・・・気になる車両が一両あったんだ。


その車両、番号は104となってましてね賃走状態なんですがね、大通りの交差点の真ん中でもってずぅーっと停車しているんですよねぇ。


最初は藤田さん、(ああ、今清算中なんだな)なんて思ってたそうなんですが10分立っても空車にならないもんで、客がコンビニにでも寄って待ち状態なのかなー。


とか色々考えていたんですが、他の車両に指示なんかを出さなきゃならないんで、104号車からはちょいと目を離していたんです。


で・・・次に見たときは深夜1時を回ってたんだ・・・。104号車、いる・・・まだいるんだ。


交差点の真ん中に、賃走状態でもって停車したまーんま。

藤田さん、(こいつはおかしいぞ)と思いましてねぇ・・・もしかすると強盗やなんかに逢って、大変な事になっているんじゃないかと。


でも、その車両からは緊急を示すシグナルは発信されてないんでおかしいなー、やだなー、なんて思っていたんですがね、急なことで緊急のボタンを押せなかったという可能性もあるんでね、藤田さん一応無線でもって連絡をしてみたわけだ。


「えーこちら本部の藤田ですがね、104号車応答願います」


・・・返事が無い。無線からは無機質なザーという雑音だけが流れている・・・藤田さん、続けて・・・


「104号車、どうしましたか?応答願います」


やはり返事がないんですがね・・・なんだか音が聞こえてるんだ・・・ブツブツブツブツ呟くような・・・何を言っているかは分からないんですがね、何か言ってる。


(こいつは普通じゃないな)、と藤田さん思いましてね、周辺の近い車両を探したんですよねぇ。


すると、すぐ近くに空車の107号車が居たわけだ。早速無線でもって連絡を取った。


「こちら本部藤田、107号車応答ねがいます」


・・・すこし間を置いて


「はい、こちら107号車太田ですが。」


返答があった。この太田さん年配のベテランの方でしてもう20年以上もこの会社で運転手さんやってるんだ。

藤田さんこれは良かったと思いましてね。


「太田さん、その先の交差点で104号車が停車したまま動かないんですがね、何かあったらあれなんでちょいと現場見てやってくれませんか。」


すると・・・太田さんから返答があったんですが・・・


「104号車・・・ですか?あー、うん・・・はい分かりました一応見に行ってみます。」


その時、太田さんの喋り方がなーんだか妙だったのに藤田さん違和感を覚えたんですがね、なにはともあれ104号車の状態がこれで分かるんで、ちょっと安心したわけだ。


しばらくたって、太田さんから連絡が入った。

でも、なんだ~か様子がおかしい、声がすごく緊張している。


「こ、こちら太田、藤田さん、104号車・・・どうなってますか?まだいるんですかこの交差点に!」


藤田さん変なこと聞くなーと思ったんですがね、一応確認すると104号車は賃走で交差点に停車したまんまなわけだ。


「藤田ですがね、太田さん、104同じ場所で停車中です」


すると・・・太田さんが応答のボタンを押したらしくゴクリという喉がなるような音が聞こえましてね・・・


「ふ、藤田さん・・・今、その交差点にいますがね・・・104号車は存在しません。」


なーにを言ってるんだこの人は・・・藤田さんが見ている画面には確かに104と107が重なるようにして表示されている。

藤田さんが喋ろうとすると、それを遮るように太田さんの声がする。


「あたしねぇ・・・思い出したんですがね、104号車・・・中田さんの車ですよ・・・。」


言われて、藤田さんハッっとなった。

そういえば・・・104号車は中田という運転手が乗っていて、深夜交差点に青信号で進入中、横から来た居眠り運転のトラックと衝突したのだ。


車は修理不可能なくらい潰れていて、中田さんは車内で車と同じようにぐちゃぐちゃに潰れていたそうだ。


そう、そうなんだよ!その事故があったのが、この104号車の表示されている交差点だったんですよ。


藤田さん思い出してゾーッとした。

当然104号車は廃車となり、現在は存在していないんですよねぇ・・・ナビに表示されることは・・・ありえないんです。


藤田さんが、あらためて画面を見ると・・・104号車は消えていた。


・・・亡くなった中田さんは、自分の存在を忘れて欲しくなかったんでしょうかねぇ・・・現場ではなく、GPS上という形で姿を表したんです・・・。


不思議な話ですよねぇ・・・でも、もしかしたら、そんな事もあるのかも・・・しれませんねぇ。


いかがだったでしょうか?

今夜の怪談はここまでです・・・また次回、お会いいたしましょう。