- かの太田総理が敬愛する、「世界でもっとも美しい物語」。
話は第三者の語り口で進み、終始説明口調で閉じる。
しかしどこか他人ごとのような印象は受けない。その内容があまりに過激で、エキセントリックで、そしてどこまでも美しいからである。
特に春琴が顔に熱湯をかけられて、皮膚が二目と見れない状態になってしまってからの、奉公人である佐助の目を突くシーンは、そのあまりの描写に、読んでいて吐き気と気持ち悪さがぞわぞわと上ってくる。
リアリティあるものは、必ずしも人に心地よさを与えるものではない。時にそれは人を傷つけ、心を暗黒に落としてしまうこともあるだろう。しかし、そこから目をそらさず、しっかりと真実を見届けた先にこそ、本当の美しさは宿る。
目の見えない闇の世界だけに宿る、二人のかすかな光は、誰の同情も受けず、媚びもせず、どこまでも明るく輝いている。
いろんなことを教えてくれる一冊。
- 春琴抄 (新潮文庫)/谷崎 潤一郎
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