◆京成杯追い切り(14日) アドマイヤテンクウは、Cウッドチップコースでスカイフォレスト(3歳新馬)を外から追走。しまい1ハロンだけをしっかりと追う“松田博流”の追い切りが施されたが、馬体を並べるまででかわし切れない。ムチが入っても、じりじりとしか伸びず。首差後れを取ってしまった。

 それでも、松田博調教師に悲観した様子はない。「相手なりにしか走らないからな。今日は、新馬に併せていたし…」。本気で自己表現するのは、レースだけでいい。

 前走のラジオNIKKEI杯2歳Sは、未勝利戦を勝った直後のレース。出遅れる不利もあったが、メンバー最速の上がりで5着に食い込んだ。今回も格上挑戦だが、能力の高さは証明済みだ。「使いつつ良くなっていきそうな馬。昨年の夏より、馬体がしっかりしてきたからね」と2戦ぶりに手綱を執る安藤勝。大きな不利を受けながらも3着まで押し上げた札幌でのデビュー戦の時から、能力に高い評価を与えている。

 530キロ前後の雄大な馬体には、威圧感が漂う。「レースに派手さはないけど、実力はあるからね」と安藤は意欲十分。スケールの大きさで、重賞の壁をぶち破る。
 ◆京成杯追い切り(14日) ダートで2勝をマークしているブルーソックスは、ニューポリトラックコースで併せ馬。5ハロンからグロリアスウィーク(7歳1600万)を2馬身リードする形で進んだ。「プレッシャーを与えながら我慢させる調教」と矢野英調教師。後ろからつつかれても、動じる様子はなかった。

 4コーナーで外めを回り、最後までしっかりした脚どりで伸びる。64秒2のタイムで併入。見守った指揮官は「あとはサラリと乗って、日曜日(17日)に元気な状態で出られれば」とうなずいた。

 芝を走ったのは、札幌2歳Sだけ。14着に敗れているが、気にかける様子はない。「柔らかくて、深みのある、いい背中。(芝は)問題ない。最近は鞍上の指示を待てるようになってきた。乗りやすくなっている」。

 初めてコンビを組むクラストゥスにも期待がかかる。昨年10月の来日以来、先週までに10勝。日本でも着々と実績を残している。「スタートで出したら行ってしまう。気をつけて出すように指示する」とトレーナー。フランスからやって来た24歳のホープの手綱さばきが見ものだ。
 昨年JRA36勝を挙げ、最多勝利新人騎手賞に輝いた松山弘平騎手(19)=栗・池添=が13日朝の調教終了直後に、スタンド前の馬場で騎乗馬の近くにいた馬に蹴られて負傷した。

 滋賀県草津市内の病院で検査を受けた結果、右足のスネにヒビが入っていることがわかったため、今週の騎乗は見合わせることになった。全治未定で、しばらく戦列から離れる模様。松山騎手は「できるだけ早い復帰を目指して、治療に専念します」と話した。
 「日経新春杯・G2」(17日、京都)
 昨年、春秋グランプリ制覇の快挙を達成した池添謙一騎手(30)=栗東・フリー=だが、年が明けても勢いが衰える気配はない。シンザン記念で今年の重賞初制覇を決めると、高松宮記念でG1獲りをもくろむエイシンタイガーで淀短距離Sを制した。今週は成長著しいメイショウベルーガとのコンビでスタンバイ。2週連続重賞Vへ突き進む。
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 勢いは簡単には止まりそうにない。池添は先週の日曜、シンザン記念をガルボで制して11年連続の重賞勝利を決めると、月曜の淀短距離SをエイシンタイガーでV。連日のメーンジャックで早くも今年6勝とし、全国リーディングでも4位につける。13年目のシーズンを好スタートで飾った。
 30歳を迎えた昨年は、ドリームジャーニーで春秋グランプリ制覇。最高の形で一年を締めくくった。騎乗にも脂が乗ってきている。「有馬記念は自分を追い込み、プレッシャーを与えて勝つことができた。すごく自信にはなりましたね。だからといって、騎乗技術は急には変わりませんよ。今はタイミングが良く、結果を出せている。ケガがなく、一歩ずつ進めればいい」。そう話す池添に笑顔はない。「勝ち鞍に関しては、現役を続ける以上は満足することはないと思う」と、さらなる高みを見据えている。
 2週連続の重賞奪取を狙う日経新春杯は、メイショウベルーガとのコンビで参戦する。重賞勝ちこそないが、メキメキと力をつけてきた。「前走(愛知杯3着)は中京の小回り。いつもより前でレースはできたが、展開的に厳しかった。それでも、いい脚で伸びているように悪い内容ではなかった。京都の外回りは合うし、ハンデ54キロといい条件がそろった。牡馬相手でも末脚は引けを取らない」。さえ渡る手綱が今週も淀で輝きを放つ。
 世界最高賞金レースのドバイワールドカップ(3月27日、メイダン、GI、AW2000メートル)で引退するウオッカ(栗・角居、牝6)は、来週19日に栗東に帰厩。「出発は2月中旬の予定で、ある程度はこちら(日本)でやってから行くことになると思います」と清山調教助手。マクトゥームチャレンジ・ラウンドIII(3月4日、メイダン、GII、AW2000メートル)を叩いて本番に臨む。

 ジャパンC3着のレッドディザイア(栗・松永幹、牝4)もウオッカと同じ日時で出発を予定。松永幹調教師は2月25日のバランシーン(GIII、芝1800メートル)か、ウオッカと同じレースを前哨戦に予定。その後、目標のドバイシーマクラシック(同、芝2410メートル)に向かう。
 ◆京成杯追い切り(13日) 4コーナー11番手から、直線一気のごぼう抜き。フーガフューグは、デビュー2戦目となる昨年11月の未勝利戦(東京・芝2000メートル)で、目の覚めるような走りを見せた。ラスト3ハロン34秒7は、メンバー最速。レコード(2分1秒3)のおまけまでついた。

 「まだまだ子供みたいなところがあるけど、背中の感触は抜群。柔らかくて相当のものがある。それに、走ったら負けん気の強さが出て、前の馬に食らいつくんですよ」と谷中助手は賛辞の言葉を並べた。

 牡馬相手の重賞挑戦。もちろん、距離適性を重視した部分はあるが、どれだけ戦えるのか、力試しをしたくなる力量を持っている。「前走くらい走ることができれば」と阿部調教師。3着に入った02年のブリガドーンを超える可能性は、十分にある。

 前走後、ザ石のためひと息入ったが、仕上がりに不安はない。「体に痛みはなく、じっくり乗っている」と谷中助手。そして、「脚を温存すれば、爆発力を秘めていることが分かったので…」と前走の再現を頭に描く。有力馬が関西に偏ったレース。牝馬ながら、東のエースとしての期待もかかる。
 昨秋の東京スポーツ杯2歳Sで3着に入り、京成杯・G3(17日、中山)で有力視されているレッドスパークルが、全休日明けの13日、出走予定馬の中でただ一頭追い切られた。陣営が、寒波による翌朝の積雪を警戒。通常とは違ったパターンになったが、栗東のCWコースで見せた動きはエネルギッシュ。1秒追走の併せ馬で頭差まで詰め寄って、好仕上がりをアピールした。

 最悪の事態を考慮しての決断だった。日本列島を襲う寒波。栗東トレセンは、まだ影響を受けていなかったが、レッドスパークルは、Cウッドチップコースで“前倒し”の追い切りを行った。

 「雪が降って馬場が悪くなった場合を考えたものだが、いい追い切りができた。調教では目立つ方じゃないんだが、使いつつ力強くなっている。これで十分」と藤岡健調教師。その言葉通り、動きは活気に満ちていた。

 6ハロン地点で、エイシンサクセス(4歳500万)を1秒近く追走した。4コーナーで内に入ったが、直線を向いても、その差はまだ2馬身。調教駆けしないタイプだけに、併せ馬になるか心配されたが、いっぱいに追われてラスト1ハロン12秒0(6ハロン84秒3―67秒3―38秒4)と力強く伸び、頭差まで迫った。「追いつかないかと思ったが、よく詰めた。この馬の持ち味を、調教でも出してくれた」と指揮官は納得の笑みを見せた。

 初勝利までに5戦を要したが、直後の東京スポーツ杯2歳Sで、4角14番手から3着。能力を示した。「後方から外を回って、強い競馬をしたと思う。あれを見て大きいところに出したいと思ったし、その後は、ここ一本に目標を絞った」と藤岡師。短期放牧を挟んで、思惑通りにここまできた。

 脚質的に東京向きでありながら、3歳初戦に京成杯を選んだのには、理由がある。「前半、前に行けないが、中山コースでどうかを見てみたい。最近は競馬に集中できるようになっているしね。一度、経験させたい」。トレーナーの視線の先にあるのは、もちろん、クラシック第1弾の皐月賞(4月18日、中山)だ。
 京都の重賞、日経新春杯・G2(17日、芝2400メートル)で、明け4歳の強豪ベストメンバーがカムバックする。昨年5月に京都新聞杯を優勝したあと、骨折が判明。ダービー、菊花賞と棒に振っただけに、宮本調教師は「天皇賞・春を目指すうえで、恥ずかしくない競馬をしたい」と力が入っている。

 仕上がりに関しては、何の問題もない。昨年11月26日に帰厩し、12月23日に、栗東の坂路で51秒1と破格の時計をマーク。年が明けて、Cウッドチップコースで追った6日も、6ハロン79秒1と破格の動きを披露した。

 「体重は、現在524キロ。おそらく2けた増(前走時500キロ)だろうが、昨春までは、大型でもヒョロッとしていた馬。後肢に厚みが出てパワーアップしている」と宮本師は目を細める。

 主戦の四位も、1週前追い切りで感触を確かめており、「1年前とは違う姿を、絶賛してくれている」とトレーナーは言う。「折り合いのつく馬で、距離は大丈夫。パワーアップした姿を皆さんにお見せするのを楽しみにしている」。8か月の休養を挟んでの重賞連勝に、自信をのぞかせた。
 関東から続々と新星が誕生している牝馬クラシック戦線。牡馬相手の京成杯で桜花賞切符を目指すのがフーガフューグだ。前走はレコードで牡馬を一蹴。ここも好走するようならクラシックへの道が一気に開けてくる。京都の日経新春杯では、骨折明けのベストメンバーが復帰初戦から力を出せる仕上がりだ。

 今週も強い東女が怪気炎だ!!紅一点フーガフューグが牙を研いでいる。前走の未勝利戦(東京芝2000メートル)は直線一気のレコードで牡馬を一蹴。この好内容に陣営は重賞挑戦を決断した。しかも先週のフェアリーSではなく、京成杯を選んだのは期待の表れだ。

 「牡馬相手?大それたことは考えてないけど、前走を見ても距離は(マイルより)長い方がいい。間隔は空いたが、力は出せる状態。人気的にも気楽に挑めるだろうし、ここでどれだけやれるか楽しみ」。無欲の阿部師の口ぶりが不気味だ。

 血統も魅力。父はレッドディザイア、ジョーカプチーノを輩出し、09年総合リーディングに輝いたマンハッタンカフェ。今年もガルボが10日のシンザン記念制覇と勢いは最高潮。母の父ナリタブライアンは3冠馬、祖母アラホウトクは88年桜花賞馬。クラシックにふさわしい血統だ。

 谷中助手も資質の高さにぞっこんの様子。「初めて乗った時、相当な素質馬だと感じた。背中の感触が抜群だし、柔らかい。新馬戦(6着)の時は繊細な面が出た感じだけど、競馬を1度使って、度胸というか気持ちの面でガラッと変わった。あれだけのゴボウ抜き、並の馬じゃできない」

 京成杯の牝馬Vは86年ダイナフェアリー(通算重賞5勝)が最後。歴史をさかのぼれば、75年テスコガビー(桜花賞、オークス)、81年テンモン(オークス)とクラシックに直結している。「レコードの反動はないし、気性で走るのがこの血統の良さ。未知な面もあるけど、どこまで奥があるのか計り知れない。ここで勝ち負けできれば夢も膨らんでくるね」と谷中助手。

 2歳女王アパパネに続き、フェアリーSはコスモネモシンが優勝と、現3歳牝馬の関東勢の層がいつになく厚い。フューグが“4半世紀”ぶりに牡馬の壁をぶち破るようなら、今週もG1候補の誕生だ。
 「京成杯・G3」(17日、中山)
 クラシックを目指して自信の東上だ。エリカ賞を制して勢いに乗るエイシンフラッシュが、重賞初Vを狙う。キャリアを重ねがら、陣営の思惑通りに力をつけてきた。イメージ以上に奥行きがあり、まだまだ上のステージに行ける素材。関東の名手・横山典とのコンビで存在感を示す。
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 エイシンフラッシュが、クラシックへ向けて一歩ずつ階段を上がっている。デビュー戦は6着に敗れたが、間隔をあけて立て直した未勝利戦では鮮やかな差し切り勝ち。続く萩Sはスローで折り合いを欠き3着に終わったものの、自己条件のエリカ賞では見事に巻き返した。平山助手は「前走は最後になって伸びてきていたし、着差以上に強かった」と振り返った。
 過去にタヤスツヨシ、アドマイヤベガ、キングカメハメハといったダービー馬が制した“出世レース”をステップにしての参戦。この中間も調整は順調で、6日に1週前追い切りを栗東CWで行い、6F83秒6-38秒7-12秒1をマーク。並入の形だったが、力強い伸びを見せていた。「前走よりも調子はいい」と好感触。さらに上昇カーブを描いているようだ。
 今回は横山典との初コンビ。当初は内田博の予定だったが、11日の中山4Rで落馬負傷したために乗り代わりとなった。「内田さんが乗れなくなって残念だが、ノリさんに乗ってもらえることになった。中山を知っているジョッキーは心強い」と平山助手。名手の手綱さばきに期待していた。
 関東遠征も重賞も初めてになるが、克服できるはず。宮城県の山元トレセンへ何回も移動した経験があり、「帰ってきたときの様子は問題なかったし、長距離輸送は大丈夫だと思う」と気にしていない。キャリアを重ねがら、どんな流れにも対応できるようになってきた。学習能力が高く、センスあふれる走りから、中山芝2000メートルも苦にすることはなさそうだ。
 「ここでいい勝負をして賞金を加算したい」。クラシックロードを突き進むためにも、ここで足踏みはできない。